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【開催報告】4/30公開講座「企業とダイバーシティ」

WSCメンバーズ基金講座「ダイバーシティを学ぶα」公開講座

企業とダイバーシティ

開催日:2021年4月30日(金)

講師:伊藤 綾 氏
(株)リクルートホールディングス サステナビリティトランスフォーメーション部パートナー
ソフィアメディ(株)組織開発本部 本部長
(株)伊藤ハム米久ホールディングス 社外取締役
(株)イー・ウーマン 社外取締役

司会:矢口 徹也 教授(早稲田大学教育・総合科学学術院)

開催報告

WSCメンバーズ基金講座「ダイバーシティを学ぶα」の第4回講義において、伊藤綾氏(リクルートホールディングス他)を講師にお招きし、公開講座「企業とダイバーシティ」をオンラインにて開催しました。講演は教室での対面(授業履修者のみ)とオンライン配信によるハイフレックスで行い、113名が参加しました。

 冒頭、ダイバーシティ推進室長の所千晴教授(理工学術院)より、「早稲田大学においても学生・教職員のダイバーシティ推進に取り組んでいるが、企業のダイバーシティ推進について学ばせていただきたい。また、参加者の皆さんからも積極的に大学への提案も含めてご意見をいただき、議論できる場となれば嬉しい」とご挨拶がありました。

講演の中から、エッセンスをダイジェストでご紹介します。

はじめに

「多くの企業は従業員のダイバーシティを推進しています。それはなぜでしょう?」
「皆さんにとってダイバーシティの推進は嬉しいことですか?」
「社会の中で「働く」ことについて、皆さんはどんなふうに考えていきますか?」
企業はダイバーシティ実現に向けさまざまな取組みを進めているが、今日の講演で最もお伝えしたいことは、それらを踏まえた上で「皆さん自身がダイバーシティをどう捉えて、どう生きていくのかということ」である。

女性活躍推進と多様な多様性の推進

SDGsの策定、コーポレートガバナンスコード(上場企業における指針)の制定、女性活躍推進法の成立など2015年のパラダイムシフトを背景にしながら、出産や育児を機に仕事を辞める人は近年一段と少なくなり、女性やシニアの労働力人口は増えている(非正規雇用が多いという現実はあるが)。世界に目を向けても、ジェンダー平等は重要テーマとして掲げられており、投資機関によるジェンダー平等の格付けなどもある。
日本国内では、先進的な企業が2005年あたりから2015年頃にかけて、女性の両立支援(第一次推進期)や女性の管理職登用(第二次推進期)に取り組み、次に、働き方改革、女性幹部任用、障がいやLGBTQなどの多様性推進(第三次推進期)を進めている。2015年頃からこれらに一挙に取り組みはじめた企業もあり、この約5年間はどの企業をみてもさまざまなダイバーシティのテーマに取り組んでいることがわかる。さらにこの後は、超高齢化社会の到来を受け(2025年問題)、介護との両立の問題にも一層取り組む時代となる(第四次推進期)。

ジェンダーにおいて直面している課題と人的資本

段階的に推進の取組みを進めてはいるが、日本の現状は、世界経済フォーラムのジェンダー・ギャップ指数が先進国の中で最低水準であり(2021年版において156か国中120位)、女性管理職比率も政府目標「2020年代早期に30%」には遥かに及ばない。
2021年4月に公表された企業調査(日経。141社回答)では、5年後の女性管理職比率の目標が平均「14%」であることが報告された。管理職を増やす上での課題として、①登用すべき年齢層に女性社員が少ない、②無意識の偏見がある、③家事・育児が集中していることなどが挙げられている。ダイバーシティは人権や機会平等の問題でもあるが、コーポレートガバナンスコード(2021年改定案)にも明示されているように、企業が戦略的に取り組まなければならないテーマでもある。これらの課題に対し、企業は女性の育成機会や管理職登用のためのプールを作ったり、アンコンシャスバイアスの低減に向けた管理職向けの教育を行ったり、両立支援制度を充実させることなどの取組みを続けているが、ここで重要なことは、各種施策に加えて、長い時間軸で「人的資本」を大事に育成・支援していくという視点であると考えている。一人ひとりを活かせる強く柔軟な組織を作るために、育児や介護との両立、本人や家族の治療などによる突然の両立など、人のキャリアのタイムライン全体を捉えて「人的資本の価値を最大化」することが取り組むべきポイントである。

ダイバーシティ推進社会における「私たちの働き方」

 「では、ダイバーシティにしっかり取り組んでいる優良企業に入社しよう!」ということが解なのか?!
この十数年で、人の人生、生き方、働き方の多様性は大きく変化したと言われる。これは裏を返せば、「自分はどう生きていくか?」ということがより問われているとも言えるかもしれない。皆さんは、おそらくこのダイバーシティ推進社会の真っ只中を「長く働く時代」の主役となる。ライフイベントは人により異なるし、ロールモデルがみつからないと感じる方もいるかもしれないが、常に「長い時間軸」で自分の仕事や働き方を捉える癖をつけることが大事だと思う。
企業で皆さんのような若手メンバーを育成してきた先輩の一人として、その時間軸の中で仕事を「失敗しながらも思いっきりやってみる」時期も大切、というメッセージを贈りたい。そして、「自分は何が得意か、いろいろなことにぶつかりながら発見し、育てる時期」も重要だ。仕事は年齢ではないが、ミドル世代になると「あなたは何屋さんですか?」と聞かれることが増えると感じている。「どんなことができますか? 何が得意ですか?」に自分らしい視点で答えられるように、「今の自分は働く期間の中で何キロ地点にいるのか」「自分の強みは何か」を考えてみてほしい。

機会を重ね、強みを積んでいく(ひとつの事例としてご紹介)

自身が学生時代に描いていたのは、「大手マスコミに入社し、30歳くらいで結婚して新婚時代を楽しみ、出産し、キラキラ輝く働く女性になること」だった。しかし実際は、就活にことごとく失敗し、なんとか内定を得たが1年で退職して専業主婦へ。その後、新たに仕事を探すもなかなか見つからずリクルートの契約社員となった。「人生のキャリアはピラミッドを立てるみたいに計画的でなくてよい。まずは流れてくる『桃(機会)』を拾ってみることから!」と、リクルートに入社後に教えてもらったが、振り返れば、ここで契約社員になったことは、自分にとっては一つ桃を拾った経験となったと感じている。当時はわからないことだらけでパソコンの電源を入れることから教わらなければならなかったが、専業主婦の経験から「生活者」の気持ちだけはよくわかった。しばらくしてこれは自分のハンデではなくむしろ強みであり、活かしていく多様性だと思うことができるようになった。次の桃、ゼクシィの編集長時代は、双子の出産・育児との両立が想像を超えて大変であるという現実と重なった。この時、ゼクシィを通してこれまで応援してきた花嫁さん・花婿さんにも同じ気持ちでいる人がいるのではないだろうかということを痛感し、結婚式をする頃からその先の生活や生き方についても話すことの必要性を取り上げることができればよかったのではないかと感じた。あまりにも時間がない現実は、会議時間の短縮などの提案を生み、短い時間でもよりよいサービスを提供できるということを実感させてくれた。その後も、ゼクシィを離れ全く異なる業務である本社勤務をするという機会、医療の企業など今いる業界ではない場所でも働くという機会など、さまざまな「経験」が自分の多様性を膨らませてきた。もちろん失敗や悩みもたくさんある。
これが自分の強みや多様性であると思えるようになるまでは大変かもしれないが、「誰かの辛さに共感できた」とか、「半分の時間の会議で成果を出せた」とか、自分の個性や強みを少しずつ感じながら、桃を拾う、機会にチャレンジすることを繰り返すことで、長い人生の中で成長を模索していく。これに企業のしっかりとした取組みが重なると、組織においても自分を活かすことができるようになるのではないかと思う。

ダイバーシティの本質(まとめ)

「さて、あらためて、皆さん自身は自分が「働く」ことについてどんなふうに考えていきますか?」
ダイバーシティは人事制度を活用する話だけに留まらず、自分の強みをどう活かし切るかということ。企業は企業で、制度整備や意識改革だけで終わらせず、人材を長い時間軸でしっかりと花咲かせる努力を、フォーメーションを組んで行わなければならない。一方で私たちも、たくさんの経験の中からいつの間にかできている自分の強みを少しずつ「意識して掘り出し」、自分らしい働き方を探しながら、自分なりの方法で「自分の個性を活かし」ていくことが大切だ。計画的でなくてもいい。たくさん失敗してもいい。私自身はそれがダイバーシティの本質だと思っている。もちろん、その機会を作り、支援する企業の責任も大きい。

ダイバーシティ推進の主役は私たち一人ひとりであるということを念頭に置いて、「今何キロ地点にいるかな」ということを時折振り返り考えてみてください。このことが、大学時代に自分が知りたかったことだと感じており、今日皆さんに一番お伝えしたいことです。ありがとうございました。

-質疑応答-

Q: 私たちは常に活躍し続けなければならないのでしょうか?
一人ひとりが活かされる機会を企業が創造することは重要だが、働く私たちは活躍の意味を自分自身でとらえ、機会を自分で選択できることが大事だと思う。また、他人の機会や個性を受容し、自分と違う環境にある人がどうやったら活かされるかを考えることも大事だと考える。多様な答えがあってよいと思う。

Q: 伊藤さんには、桃が自然と寄ってくるのか、あるいは桃を引き寄せられるのか?
『桃』は「ラッキーなチャンス」ではなく、自分にとっての成長機会ととらえている。それは小さな経験やピンチなどの場合もあると思う。大事なことは、この機会は自分にとってどんな意味があるんだろうと考えることではないか。

Q: 多様性に富んだメンバーで構成されるチームをいかにマネージできるか。多様なメンバーとどういうことを意識しながら向き合っているか。
①ひとりひとりの強みにフォーカスする。②メンバーの人生がどうありたいのかを考えてもらう。そしてそれをマネジメント側が支援する。今ここにいるのはどんな意味があるのか対話をすることが大切だと感じている。

Q:人の強みの見つけ方は?(たとえば、障がいがある方など)
「あなたはこう」と決めつけるのではなく、本人が自分の多様性や強みを発見し、自然体で活かされることがダイバーシティ。管理職が捉える多様性の幅が非常に大事で、企業としては人材の価値を最大化できるかどうかがここにかかっている。ダイバーシティに関する新しい知識や理解の情報収集、アップデートは国内外の報道の閲覧をお勧めしている。日々たくさんの情報がある。

Q: 女性管理職を増やす目標は、ダイバーシティの本質を見失わないのか?
属性ではなく、その人に何を期待するかということが大事であるが、そもそも女性などマイノリティがこれまで機会を十分に得られてこなかった、という事実を知る必要がある(管理職任用への属性のアンコンシャスバイアスが働いていないか、など)。したがって、目標を設定し組織としてその機会を作ることは重要なことである。一方、女性も男性も実力をつけるということもまた大事で、両立支援などの環境を整備するとともに、成果を最大化するスキルを学ぶなど、ぜひその筋肉も鍛えてほしいと思う。

 最後に、司会の矢口徹也教授(教育・総合科学学術院)より、「ダイバーシティは単なるあるべき論ではなくて現実に動いていることで、社会の中で問われ続け、個々が考えていかなければならないことである。今日の講演をひとつのヒントにし、各々が考えていくことができればよいと思う」とまとめの挨拶があり、講演会は盛会裏に終了しました。

 

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