Office for Promotion of Equality and Diversity早稲田大学 ダイバーシティ推進室

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【開催報告】3/5「ワーク・ライフバランスデザインワークショップ in 文学学術院」

2021年3月5日に文学学術院共催、キャリアセンター後援のもと、「ワーク・ライフバランスデザインワークショップ in 文学学術院」をオンライン形式にて開催しました。

今年度は2005年に第一文学部をご卒業され、現在は文筆業を本職として活躍される、恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表の清田隆之(きよた たかゆき)氏を講師としてお招きし、前半は講師講演、後半は社会学、クィア・スタディーズを専門とされる森山至貴(もりやま のりたか)先生(文学学術院准教授)との対談・質疑応答、という2部構成で実施、学生・教職員合わせて90名が参加しました。

イベント後のアンケートでは「キャリア形成や多様性について付きまとう不安について有意義なお話を頂きました」「オルタナティブな生き方をしている先輩の姿を見て大変心が軽くなりました」「ジェンダーや恋愛、また人とのかかわり方の中で漠然と抱えていた違和感やもやもやとした感情にどのように対応していくかを知ることができ、すっきりとした気持ちになることができました」といった感想が寄せられ、大変満足度の高いイベントとなりました。

講師講演

講演中の様子

私は、2000年に第一文学部入学しました。明確に文学部で何かやりたかったことがあったかというと、正直はじめはあまりなかったのですが、友人と雑誌を作ってみたところ、次第に活動が楽しくなり、同級生5人と「BLOCKBUSTER」というサークルを立ち上げ、壁雑誌みたいなものを2年間、毎週発行しました。例えば、当時お笑い芸人たちがテレビで繰り広げるようなコミュニケーション方法を大学生もマネするようになっていて、ボケや突っ込みを強要されるようなことがありましたので、これを「お笑いハラスメント=ワラハラ」と名付けてポスターにする、ということもしました。

私が卒業した2005年は就職氷河期と呼ばれる時代で、就職活動は非常に厳しい時期でした。「BLOCKBUSTER」の活動を通して、在学中から仕事の依頼をもらえるようになっていましたので、「このまま会社をつくろう!」ということになり、法人を設立しました。初任給は8万円でした。私は書くのが担当でしたので、ライターや編集の仕事をするようになり、20代後半になる頃にはそこそこ稼げるぐらいになりましたが、30代に突入する頃になると、それそれのメンバーの置かれている環境も変わってきますので、会社として成長路線を目指すのか、クリエイティブユニットとしての活動を見直すのか、意見が分かれるようになり、2013年2月に独立してフリーランスになりました。

フリーにはなりましたが、自分にライターとして専門性があったわけではなく、どうあるべきか手探りのまま仕事を続けているなかで、結びついたのが学生時代から続けている「桃山商事」の活動でした。

私がまだ学生だった頃、女性の友人から恋愛の話を聞く機会が多くあり、恋愛相談として他の男友達も交えて活動を続けているうちに、友人以外からも依頼が受けるようになりました。じゃあ、会社っぽいユニット名をつけてやろう、ということで始まったのが恋バナ収集ユニット「桃山商事」です。この活動は大学卒業後も趣味として続けていましたが、ここで得たエピソードをアウトプットしていきたいという思いに至り、ポッドキャストで発信するようになりました。また、多くの事例に接する中で「これってジェンダーの問題なんじゃないか?」「これはホモソーシャルのせい?」と感じるようになり、ジェンダーを勉強するようになり、ライターとして聞いた話をわかりやすく整理して読み物にするというスキルも使って、本も出版するようになりました。

趣味で始めた「桃山商事」の活動とライターとして培ってきた経験が融合し、今はそういったことをメインに書き手として活動しています。

 

清田氏 × 森山氏対談・質疑応答

司会の森山至貴先生

森山:
ご講演ありがとうございました。ご講演を聞いた感想として、初任給8万円というところは、クリエイティブ系を目指す学生にとって驚きだったのではないかと思いました。現在はクリエイティブ系の成果の金銭的な価値は非常に低く見積もられているので、時代は違いますが「そんなにもらえるの!?」というのが正直な感想かと思います。また、清田さんの本を読んでいると、恋バナ収集をするなかで、自分の中の男性性に気付いたという書き方をしていると思いますが、お笑いハラスメントのことを聞いて、在学時から差別とかそういったものに対する嗅覚を持っていたんだなと思いました。

清田:
お笑いハラスメントは当時そういった流れがあったので表現をしましたが、ジェンダーの問題は、今振り返ると当時の自分はいかに無自覚であったか、と思います。知らないことがこんなに恐ろしいことなのかと。

森山:
全く気付かない人は本当に無神経で、清田さんはそうでないと思います。今回のイベントの趣旨としてワーク・ライフバランスやキャリアという面でのロールモデルとなる方のお話を聞く、となっていますが、それだけではなく、人としてちゃんと生きている、というロールモデルである、と一人のファンとして思いました。では、ここからは参加者からの質問を取り上げながらお話していきたいと思います。

質問:
『同級生が就活・就職していく中で、就活をせずに活動をしていくことに不安はありませんでしたか』

森山:
この質問にわたしからも問いを加えますと、会社を作ることが、ある種のリスクヘッジになっていたのではないしょうか。会社としてみんなでやっていけてよかったことなどあったのでしょうか。なかなか文学部・文化構想学部の学生が「会社を起こそう」という発想にはなりにくいので、そういうキャリアパスもありえるんだ、と思えるようなことがあるのなら教えてください。

清田:
もともと会社化することが目的であったわけではなかったのですが、いろいろ便利なところがあって会社にしました。実際作ってみると、相手が会社として見てくれるので、例えば「一度会社に持ち帰って検討します」と言うことができたり、個人を守る機能を果たしてくれたと思います。
就活をしないで活動を続けることについて当時は不安はなかったし、「船出だ!」という感じでわくわくしていました。個人的にそれまでのアルバイトの経験などから会社員としてやっていけるイメージはなかったし、仲間とやっていけることにむしろ満足していましたが、リーマン・ショックがあったり20代の時はお金がないところで、同級生が焼肉をおごってもくれたり、そこで若干マウントを取られたり、所得格差が身に染みる瞬間は多々ありました。

質問:
『ステイホームによって変化したと思われる恋愛関係にある人間同士の関係性について思うことがあれば教えてください』

質問に答える清田氏

清田:
恋人同士は価値観のすれ違いが生じやすい。会うのか、会わないのか、衛生観念、政治的なことなどいろいろなところですれ違いの種に直結して、価値観の違いが生じやすい状況がより顕著になっている。恋人がいない人は合コンのようなところで出会うことも怖いし、悩んでいる。そういう話をよく聞きます。

森山:
生死にかかわる部分があるので、意見が対立したときに引くに引けない状況になりぶつかってしまうのだろうなと思います。
コロナ禍で新たな出会いが難しいという点について、コロナ禍になる前に家族を形成している人は、それだけで勝者という雰囲気が一時期あったように思っています。公園で熟年のカップルが手をつないで歩いている様子を見て、この人たちは今家族であることの利益を享受できているんだと、単身者にとってすごく突き放された気分になったことを思い出しました。

質問:
『ホモソーシャルから脱出するために実践したことはありますか?』

清田:
「さよなら、俺たち」という本を、個人的にイヤだなと感じる男性性の問題からさよならしたいなという気持ちで書きましたし、そうなっていればいいと思いますけれど、そういう圧力に飲み込まれちゃったり、気圧されたりという瞬間は今でも正直あります。。全然脱出したとはなかなか思えないんですけれども、思考を経由せず、その場で一番楽な、無難な行動をしてしまうと、からめとられてしまうようにどんどん抜け出せなくなってしまうような気がするので、こちらをからめとってくるような言動や、油断すると自分も使ってしまうかもしれないずるい言動を学んでおくことが、他者の足を踏みつけないためにも、また自分自身を守るためにも有用だと思います。それをしたからと言って社会が大きく変わるわけではないが、地道に個人がやるしかない、と今は思っています。

森山:
「言葉の刀は研いでおくに越したことはない」というか、刀を研いでおいて、持っておくということがその人にとって自信につながるのかなと思います。
さて、お時間も残りわずかとなります。最後に一言ご感想をお願いします。

清田:
本日参加している学生の皆さんの中にいろいろと悩んでいる方は多いと思いますし、早稲田大学に通っているといいところに就職しなきゃ、というプレッシャーもあるかもしれませんが、オルタナティブというか、私のような生き方をしている人もいるんだということを伝えて、気持ちが楽になってもらえたらうれしいです。
恋バナ収集という活動は、特殊な能力を必要とするわけでもないので、恋バナに限らず人の話を聞いてそれをアウトプットしていくユニットが増えて、悩みや相談が言語化・問題の発見につながって、もしかしたら政治にも届くかもしれないと考えると、それぞれが関心を寄せるジャンルでやってもらえるといろいろ面白いと思います。

森山:
清田さんの言葉に勇気づけられた学生も多いのではないでしょうか。本日はありがとうございました。

対談中の様子

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