Office for Promotion of Equality and Diversity早稲田大学 ダイバーシティ推進室

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【開催報告】11/29公開講演会「大学におけるダイバーシティ推進」(Frances Rosenbluth氏)

大学におけるダイバーシティ推進 -イェール大学での実践、早稲田大学への期待-

日程:2019年11月29日(金)
会場:早稲田キャンパス3号館402教室

講師:Frances Rosenbluth氏(イェール大学教授/早稲田大学理事)
コメント:麻生享志 ダイバーシティ推進担当理事/国際学術院教授, 弓削尚子 法学学術院教授
ご挨拶:田中愛治 早稲田大学総長/政治経済学術院教授, 所千晴 ダイバーシティ推進室長/理工学術院教授
【司会】村田晶子 ジェンダー研究所所長/文学学術院教授

2019年度 男女共同参画・ダイバーシティの推進プロジェクト講演会において、イェール大学教授で、早稲田大学学外理事のフランシス・ローゼンブルース氏をお招きし、「大学におけるダイバーシティ推進」を開催いたしました。イェール大学および米国でのダイバーシティに関する取組み事例、そして大学におけるダイバーシティの重要性と本学への助言や期待について英語によるご講演をいただき、ダイバーシティ推進担当理事の麻生享志教授(国際学術院)および弓削尚子教授(法学学術院)が講師のお話を受け、コメントを交えて会場にお届けするという対話形式の講演会に100名を超える参加者が熱心に耳を傾けました。

冒頭、大学を代表して田中愛治総長より、「日本とアメリカを往復しながら、本学への適切なご助言をくださるローゼンブルース理事のお話を聞いて、ぜひとも熱気ある議論を交わしてほしい」とのご挨拶がありました。続いて、ダイバーシティ推進室室長の所千晴教授(理工学術院)からは、「イェール大学の先進事例をうかがい、さらに会場の皆様からの意見や感想を得て、早稲田大学におけるダイバーシティ推進を一層図っていきたい」として、この貴重な機会への謝意が述べられました。

講演の中から、エッセンスをダイジェストでご紹介します。

イェール大学におけるダイバーシティの受容

Frances Rosenbluth 氏(イェール大学教授/ 早稲田大学学外理事)

なぜAcademic diversityが必要なのでしょうか。それは、さまざまな属性を持つ人間一人ひとりがそれぞれの立場で「自由」であるために重要なことです。かつて奴隷制があったアメリカでは、今でも人種差別に関する問題は根強く残っており、これが教育にも影響しているという時代的背景もありましたが、現在、どの国にも共通する話題の一つとしてLGBTQの問題が挙げられます。カミングアウトしている人や、伝統的なジェンダーの役割や性別の違いを超えていろいろな人たちを受け入れる心の準備ができている人は若い世代ほど多いですが、どの世代であってもここ十数年の間に、セクシュアルマイノリティに対する理解の度合いが確実に深まってきていることが言えます。

イェール大学でも、トランスジェンダーを中心とする学生団体(trans@yale)の意見を大切にしており、当事者が利用しやすいトイレ環境も整備されています。また、ノンバイナリーのコミュニティがあり、学生団体が教員に対して、「男女二性と決めてかからない、より包括的な言葉を使用した授業運営を行ってほしい」などと注文を出すこともあります。また、学生が自分に対して使ってほしい代名詞(She, her/ He, him/ They, them ※They, themはクィアの事例)をメールの署名に入れることもよくあります。

教員組織におけるダイバーシティ達成を妨げる要因とは

次に、教員組織におけるダイバーシティがなぜ重要なのでしょうか、それは、多様な学生たちに帰属意識をもたらすだけでなく、さまざまな視点が取り入れられることから教員の論理的思考のレベルを上げ、質を向上させるために大事なことです。大学院生の段階でほぼ同数だった男女比が、専任講師、准教授となるにつれて男女比の差が拡がり、教授となると倍近い差で男性のほうが多くなるというアメリカの現状があります。このデータからわかることとして、一つはジェネレーションの問題であり、研究者を目指す女性の割合が昔に比べ高くなっており、将来的には女性の研究者のほうが多くなるかもしれないということがあります。もう一つは、構造的な問題として、教員として実績を上げなくてはならない時期に、女性は家事や子育て、場合によっては家族の介護というように家庭に時間を費やすことが多くなるため、昇進機会を逃す現状があることが指摘されます。

教員のダイバーシティの達成がなぜ難しいのかということについて、子どもの有無と学位取得の関係にジェンダーによるバイアスが存在するとの研究結果があります。また、女性は男性よりも多くの家事労働をするとの調査結果や、人間の脳は過去の事例に基づくステレオタイプを求める傾向があるとの見解などから、家事労働は女性がするものという思い込みが、女性は学問の追求への時間も願望も男性に比べて少ないという考えを生むという「統計的差別」が考えられます。(人種差別の問題はこのこと以上に深刻で、教育機会への格差が、能力が異なるという考えを生むといった問題もあります。)

また、人は自分と似た嗜好、見た目、言語、価値観を持つ人に魅かれる「潜在的バイアス」があり、この「潜在的バイアス」と「統計的差別」が突き合わされると、暗黙の了解のうちに同じような人を集めてしまい、よくいえば安定した社会を生みますが、一方で社会が均一化してしまい、多様な考え方を受けつけなくなるという問題もあります。

この他、研究者が研究を進めていくうえで非常に重要となるのが「ネットワーク」ですが、女性も含めてマイノリティは大きなプロジェクトや教員間の重要なネットワークから外されてしまうという問題点があり、あえてそこに積極的に入っていくことも必要です。学術誌や研究チームは、論文執筆者のジェンダーバイアスを指摘したり、女性をチームに招待して研究分野の最先端にいることを可能にしたりするなど、女性の不利な状況に対する改善の機会を提供すべきです。

ダイバーシティ達成に効果的なグッドプラクティス・アワード

このような性的不平等は程度の差こそあれ、日本に限らず、男女平等政策で有名な北欧でも起きており、アメリカでも解決できてはいません。とりわけ、教員のダイバーシティ達成のためには、多様性を確保するために多くのデータを活用し、受け身でない広範囲のリサーチを行うといった太いパイプラインをもつことが重要です。また、教員個人をトレーニングするよりも、タイバーシティ達成のための優秀な取り組みを実施し、成功した学部を表彰するなど、組織的に取り組むことが効果的です。

左より、弓削尚子法学学術院教授、麻生享志ダイバーシティ推進担当理事、Frances Roesnbluth氏

多くの示唆に富んだ助言を得て、会場からは多数の質問が寄せられました。講師からは、それぞれの質問に対して丁寧に対応していただき、講演会は盛会裏に終了しました。

学生ライターによる英語レポート (2020/1/24更新)
Professor Frances Rosenbluth on promoting gender equality and diversity

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