Office for Promotion of Equality and Diversity早稲田大学 ダイバーシティ推進室

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【開催報告】11/22公開講座「より遠くへ」(芦田創氏)

WSCメンバーズ基金講座
「ダイバーシティを学ぶα(基礎講義編)」
公開講座「より遠くへ」

講師:芦田創(あしだ はじむ)氏
日程:2019年11月22日(金)
会場:早稲田キャンパス3号館401教室

 

 

WSCメンバーズ基金講座「ダイバーシティを学ぶα(基礎講義編)」(第8回講義)において、一昨年、昨年に引き続き、リオパラメダリストの芦田創(あしだ はじむ)選手をお招きし、陸上との出会いや自身の意識の変化、障害者としての葛藤、東京2020に向けた想いについてご講演をいただきました。

冒頭、本学 麻生享志ダイバーシティ推進担当理事より、本学のダイバーシティ推進とWSCメンバーズ基金講座のご紹介、ダイバーシティ推進においては立場の違いを乗り越え価値観を共有することが非常に重要と考えていること、また、芦田選手の「チャレンジを見える化」するという取組みに共感し、本日の講演を大変楽しみにしているとのご挨拶がありました。

当日の講演の中から、エッセンスをダイジェストでお伝えします。

パラリンピックにおけるクラス分け

障害の程度や能力に応じてクラス分けがされるパラリンピック競技において現在、走幅跳びの選手として「クラス:T47」というライセンスを持って競技をしている。「T」はトラック競技、「4」という数字は肢体障害、次の「7」は肘下の障害を指す。同じトラック競技でも「T1」は目の障害、「T2」は知的障害、「T3」は脳性麻痺の障害、「T5」は脊髄損傷、頸椎損傷がある人(車椅子)、「T6」は義足で競技する人などといったクラス分けがあるが、一定の競技人口を獲得しないと競技として成立しないため、同じ「T4~」クラスでも、異なる部分の肢体障害を持つ人々が同じトラックに立って競技する場合もあり、パラリンピックではこのようなルールが、競技やトレーニングに大きく影響する。

闘病生活の果ての奇跡

幼少期の右腕の手術が原因でデスモイド腫瘍が発症し、大好きな運動を制限されるという闘病生活を10年間余儀なくされた。ついに右腕切断の決断を迫られた15歳の頃、「どうせ失うことになる腕ならば、どうなってもいい」とこれまで我慢していた全身運動(走ること)に全力で取り組んだところ、不思議なことに腫瘍が消えるという奇跡が起こり、切断は免れた。

陸上競技との出会い、人生の転機

そして出会った陸上競技はわずか0.01秒、1cmにこだわることが肯定され、自分の努力がはっきりと数字で表される「ワクワクする世界」であった。しかし、次第に片腕が不自由なことが明らかなハンデであることに気付かされ、やればやるほど自分が障がい者であることの現実を突きつけられ、陸上を続けることが苦しい時期もあった。そのような時に出会った早稲田大学競走部監督の礒 繁雄教授から受けた言葉「おまえ、人生において障がいに甘えてないか」は自分の人生を大きく変えた。恩師からのメッセージは、「障がいがあるという事実を受け入れないと自分の人生を切り拓いていくことはできない。右腕以外の体、頭、心を信じて頑張ればよいのだ」と、自分の心に強く響き、ここからは自分ができる範囲で「より遠くへ」を目指すようになった。

アスリートの障がい特性を理解してわかるパラリンピック競技の醍醐味

パラリンピアンが障がい者のことを代弁してはならない、アスリートとしての自分を見てほしいと常々思っている。オリンピックの幅跳びは、人類で誰が1番遠くまで跳べるかというシンプルで大変わかりやすい競技だ。でも、パラリンピックの場合は違う。みなさんには想像してみてほしい。たとえば、常に片手に2リットル入りのペットボトルを持っているようなアンバランスな体で、障害がある片腕は常に痛い状態であるとしたら…。痛みのない方の手だけをトレーニングするとバランスがさらに偏るので、痛みのある方の手も痛みをこらえて、できる限りトレーニングしなければならない。パラリンピックでは、このように、「選手個々の障がい特性」を理解すればするほど、より競技のおもしろさや醍醐味を味わえる。そこが、オリンピックとは大きく違う、パラリンピックの魅力のひとつだと思う。

パラアスリートの誇り、そして「より遠くへ」

人には与えられた状況、変えることができない状況はあるが、チャンスだけは誰にも平等に与えられる社会であることを願っている。これからも自分がアスリートとして「より遠くへ」跳ぶことにチャレンジすることが、このような社会に少しでも貢献でき、だれかを勇気づけることにつながるのであれば幸せなことである。

芦田選手ご本人でなければ伝えられない重みのある言葉、パラリンピックの世界観、アスリートとしての熱い想いに、参加者145名が深く引き込まれる有意義な時間となりました。

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