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アメリカで、日本で、ワークライフバランス挑戦中 政治経済学術院准教授 ケラム マリサ アンドレア

連載 ワークライフバランス挑戦中! 第20回

アメリカで、日本で、ワークライフバランス挑戦中

政治経済学術院准教授 ケラム マリサ アンドレア

 数年前、アメリカの政治学者が立ち上げたWebサイトWomen Also Know Stuff に自分の経歴を掲載したとき、私はこんな一行を加えました。「アカデミックキャリアと家庭のために、彼女はワークライフバランス(WLB)を日々追求しています」まさにそのとおり!私のホームページでは「研究」、「担当科目」などの他に(最も誇りにしている業績として)「子ども」というタブがあります。私は自分の職業人としてのプロフィールの中にこれらの個人的な情報を共有しています。それは、WLBの追求は私のこれまでのアカデミックキャリアの核心だったからです

テニュアトラックの間に赤ん坊を授かる

私のWLB 挑戦は夫と出会ったUCLA での大学院時代に遡ります。互いに政治学博士課程に在籍していた当時の私たちにとって、政治学研究は生活そのものでした。それ以来、夫と私は二人分のキャリアと格闘してきました。つまり、夫婦二人とも政治学者としての業績を築き、同じ給与を得て、学会論文や成績の提出締切も
同時にやってきました。
大学院の最終学年のとき、見知らぬ街にある大学から二人とも内定を得て、結婚し、家を購入し、妊娠し、キャリアを開始し、博士論文を提出しました。まさにこの順番で、事は進みました。アメリカで助教授として働いている間に、二人の子宝に恵まれました。年齢の差は二歳半。二人の誕生は私たちに大きな喜びをもたらしました。同時に、私たちは研究と教育にも全身全霊をかけていましたので、それは家庭と仕事の関係にゼロサム状態をもたらしました。私たちは二つの次元でのバランスに直面していました。それは「家庭vs仕事」、そして「私のキャリアvs夫のキャリア」です。私が働いているときは夫が子育てをし、夫が働いているときは私が子育てをするということです。

日本で子育てをして

息子が3歳で、娘が6歳になろうとしていたとき、私たちは日本に移り住みました。当時、夫は早稲田大学で専任教員として着任し、私は早稲田の高等研究所で3年の任期付研究員のポジションを得ました。高等研で過ごした時間はとても貴重でした。私の研究も軌道に乗り、子どもたちも幼児期のように手が掛からなくなったので、私は年に1、2コマの授業を担当しながらも、それ以外の時間はこれまでの研究を論文としてまとめ、学術雑誌に投稿し、出版業績を積み上げることに専念できました。
私のこの経験に基づいた政策提言をするならば、出産・育児休業は二段階構成にすることを提案します。通常の産休・育休に加え、その5、6年後に子どもが成長し「失われた研究期間」を穴埋めすることができるようになったとき、一年間の授業負担の免除もしくは授業負担の大幅な軽減を推奨します。
私が早稲田大学政治経済学部の専任教員として着任してから、とうてい不可能なバランス取りが再び求められるようになりました。私の教育活動vs研究活動、夫の教育活動vs研究活動、わが家の小学3年生と1年生、畳んでも終わることのない洗濯物の山などなど。さらに最近は学部運営の役職も加わりました。バランスは取りづらいものの、根底にある内なる葛藤は低減してきました。それは私が実績を上げ、自信を持って職に当たることができるようになったこと、そして子どもたちが成長したことに起因すると思います。

ケラムゼミvs栗崎ゼミのボウリング対決(2019)にて(子どもたちも一緒に)

しかし、日本という新しい住環境のおかげでWLBもまた、異なる様相を呈してきました。そもそも私は日本語を話さないため、家事のうち対外関係は主に夫が担当しています。それはアメリカにいたときは私が担当していたことです。彼は病院の予約、学校関係の書類作成、PTA 活動、家計などを担当し、さらにほぼ毎晩、夕食の支度もします。
一般的に日本社会は子どもが小学校に入ったら彼らがより独立することを許容しているので、アメリカにいるよりも日本の方がワークライフバランスはとりやすいと思います。アメリカに住む友人たちは、子どもたちを学校に迎えに行ったり、放課後の習い事のための送迎で、午後の大半を車の運転に費やしているといいます。アメリカでは小学生の子どもは、保護者の監督が必要です。しかし日本で、うちの子どもたちは自転車や電車に乗ってバイオリン教室やサッカーの練習に行ったり、友だちと公園で遊んだり、コンビニにも一人で行ったりしています。定時に子どもを迎えに行くために慌てて職場を飛び出す必要もありません。とは言え、私は今でも子どもたちと一緒に遊び、食事をすることにできるだけ多くの時間を費やすことができるよう努めています。

WLB は「完璧主義」の様相を帯びていると思います。つまり、完璧主義者ほどWLB を追求しようとする一方で、それは到底完璧には達成できないものなのです。実際に求めていた生活のバランスを保てているように思うときがありますが、そんなときでさえ、内面にはストレスを感じています。母親であることは私にとってはとても自然なことですが、WLBは自然にはできません。私はいまだにそれを希求し続けているのです。

KELLAM, Marisa Andrea(ケラム マリサ アンドレア)

早稲田大学政治経済学術院准教授。専門は政治学。研究分野は「中南米における民主主義の特性」。英語学位プログラム(EDP)のディレクターも務める。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で博士学位取得。テキサスA&M大学助教授、早稲田大学高等研究所准教授を経て、2016年より現職。
夫(政治経済学術院栗崎周平准教授)、長女(小6)、長男(小4)の4人家族。

※日本語版文責:ダイバーシティ推進室。英語による原文はWeb サイトでご覧ください。

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