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【公開講演会】多様な生き方を受容すること-LGBTQをめぐる米国の現状から-(開催報告)

<開催報告>

2017年4月18日、公開講演会「多様な生き方を受容すること-LGBTQをめぐる米国の現状から-」を大隈記念タワー(地下多目的講義室)にて開催いたしました。LGBTQをめぐる米国の現状や当事者としての体験談、カミングアウトを受容した家族のストーリーと社会へのメッセージなどについて、88名の来場者が登壇者の講演に耳を傾けました。

多様な生き方を受容すること-LGBTQをめぐる米国の現状から -プログラム―

  1. 開会挨拶 ダイバーシティ推進室長 矢口徹也(教育・総合科学学術院教授)
  2. 講演
    「LGBTQを取り巻く米国の現状」【逐次通訳:日比野 由紀江】
    グレン・D.・マグパンタイ(Glenn D. Magpantay, Esquire)
    「親としての葛藤、将来への展望」【逐次通訳:日比野 由紀江】
    マーシャ・アイズミ(Marsha Aizumi)
    「誰もが過ごしやすい社会に向け、一人ひとりができること」
    矢部 文
  3. 質疑応答

冒頭、矢口徹也ダイバーシティ推進室長より、開会の挨拶がありました。「早稲田大学は多様な人々が集う場であり、これがひとつの個性でもあると考えてい る。この4月にはスチューデントダイバーシティセンターが発足した。ダイバーシティには、国籍、人種、障がい、文化等様々あるが、性の多様性についても、 早稲田大学としてできることは何か少し取り組みはじめているところである。本日の講演会をとおして、米国のLGBTQの現状やLGBT当事者と家族や周囲 の関係づくりについて、来場者の皆さんの考える機会となれば嬉しい」と、本学での開催のきっかけをくださったニューヨーク稲門会副会長の矢部文さんをはじめ、グレンさん、マーシャさんに御礼が伝えられました。
続いて、矢部文さんより、今回は全米アジア・太平洋諸島系クイア連盟(以下、NQAPIA)が主催する「家族がLGBTの子どもを受容すること」に関する キャンペーンの一環として来日したこと、まだまだLGBTQ当事者が生きづらい米国の現状から、国境を越えた連携の必要性を痛感するとの思いが告げられ、 講演に入りました。

講演1「LGBTQを取り巻く米国の現状」グレン・D.・マグパンタイ

はじめに、LGBTQ当事者をめぐる米国の現状をテーマに、NQAPIA事務局長のグレン・D.・マグパンタイ氏より、NQAPIAの紹介、交差する移民とクィア(セクシュアル・マイノリティの総称)の権利、LGBTQ当事者の可視化についてお話がありました。02_Glenn1
まず「NQAPIA」について、急速に増加するアジア系アメリカ人が未だ社会から軽視されている現状から、LGBTQ当事者がカミングアウトしても孤立するといった状況を改善するために設立されたこと、現在は47団体が加盟し各地域のアジア系LGBT団体が広く包括的に活動できるよう取り組んでいること、リーダーが集う年次集会があり、3年毎に全国大会(次回予定は2018年夏、サンフランシスコ)が開催され世界各地から多くの来場者があることの紹介がありました。
続いて、クィアと移民の権利について、米国の現状と思いが語られました。
今から50年ほど前にアジア人が米国で市民となることが可能となったが、アジア系アメリカ人に対する差別や不平等は、人種やクィアであることが原因なことが多い。たとえば、「日曜日に結婚(同性婚)する。すると月曜日には解雇される」といったように、アメリカのいくつかの州ではゲイであるだけで解雇され、また有色人種のトランス女性が殺害される現状がある。移民もLGBTQも差別や死を恐れずに過ごせる平等な権利のために、NQAPIAはコミュニティを組織化し団結する必要があると考えている。自身もゲイのアメリカ人として、クィア・移民の権利を支持するという共通の大義のためにまだまだ闘わなければならない。
1980年代、17歳でカミングアウトしたとき、当時は手本となる人がいなかったが、今では多くのことが変化し、アジア系LGBTQも職に就け、結婚でき、子どもが持て、最高に充実した人生を送ることもできるようになってきた。ただ、前に述べた現状をみるとまだ課題は多く、今もアジア系LGBTQがより広いLGBTQコミュニティに受け入れられるよう当事者の「可視化」を意識して引き続き活動にあたっていること、この仕事に誇りを持っていること、また皆の夢を実現するためにサポートが必要であれば力になりたいとの考えていることのお話があり、最後に、この先、皆さんの手でもこの仕事を進めていってほしいとの期待とメッセージが伝えられました。

講演2「親としての葛藤、将来への展望」マーシャ・アイズミ

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続いて、マーシャ・アイズミ氏(米国LGBT当事者の親とアライの団体「PFLAG」ナショナル理事)より、自身の体験談に基づいた親としての葛藤、家族から学んだ教訓についてお話をいただきました。冒頭には、早稲田大学に「だれでもトイレ」があることに驚き、LGBTが歓迎され、安全だと感じることができるとのコメントをいただきました。
1988年、日本から迎えた娘は、2、3歳の頃からドレスやお人形などが嫌いだった。学校では、とても外交的で、お転婆で、人気者だったが、中学生頃から状況が変わり始め、次第に孤立していった。高校生になるとその状況はさらに悪化し、いじめを受けたり、孤独に襲われたり、自殺念慮を抱くようになった。ついに学校にも行けなくなったが、かろうじて高校は卒業し、その5年後にトランスジェンダーとしてカミングアウト、トランジションして息子となった。21歳の誕生日、「この日まで生きていると思わなかった。誰かに傷つけられているか、自分で傷つけているか」と語った息子。この日は、彼の「生き続ける」という決意も共に祝った。
現在は、彼は職に就き、結婚し、希望に満ちあふれた人生を過ごしているが、我が子がトランスジェンダーであることは自分のせいで自分は悪い母親だという罪悪感や羞恥心、これからあらゆる差別を乗り越えていかなければならないという恐怖心など、当時の自分には多くの葛藤があったこと、またここから乗り越え学んだ「教訓」(以下)について共有いただきました。
○「息子は選択できないが、自分には選択肢がある」 自分の中にある「なぜ?」に素直になると勇気がもてた
○知識を身につけることで、恐怖を乗り越えることができた
○サポートを得ることで孤独感から解放された
○コミュニケーションを大切に、過ちがあれば謝ることで、互いに心を通わせることができた

また、会場全体の心に残るあたたかいエピソードをご紹介いただきました。
「私が息子に『I love you.』を伝えると、彼は必ず『I love you more.』と応えます。ある時、私が先に『I love you more, honey.』と言うと、彼はすぐさま、愛にあふれた目で『That’s impossible, Mama(それは不可能だよ、ママ)』と応えたのです」
トランスジェンダーの子どもを持つ親の方がいたら、ぜひ時間をかけてください。これから親にカミングアウトしようと考えている当事者の方がいたら、役立つ資料・情報などを提供してあげてください。家族とよい関係を築けるかどうかは自分次第ですと、来場者への熱い思いを伝えていただきました。

講演3「誰もが過ごしやすい社会に向け、ひとりひとりができること」矢部 文

最後に、ニューヨーク稲門会副会長、PFLAG(ニューヨーク支部)で活動をされている矢部文さんより、誰もが過ごしやすい社会に向けた強い思いと願いについて、家族の体験談を踏まえたお話をいただきました。07_矢部さん
娘が21歳の頃、レズビアンであることのカミングアウトを受けた。もともと我が子がストレートでもゲイでも応援する姿勢でいたので、その後の娘の婚約という全方位的なカミングアウトに対する周囲の反応に大変憤りを覚えた。娘が、まず自身のセクシュアリティを受け入れるのに相当な時間を要したと語ってくれたこと、LGBTQフレンドリーと言われるニューヨークでも婚約者と外で手ひとつつなげなかったこと、ヘテロノーマティヴィティといった社会の考え方、そんな社会をつくった大人のひとりとして彼女に謝りたい気持ちになったと言います。
「家族や友人がLGBTQ当事者であることがわかったら、皆さんはどのように反応しますか?」
と会場に投げかけたうえで、このことを個々に考えるヒントとなるメッセージが伝えられました。
・その時持っている知識によってその反応はだいぶ変わってくる
・日本人、異性愛者、大学生であるなど個々が持つ特権の使い方によって、その特権を持たない人を傷つけることもできるし、安全な場所を提供することもできる
・理解したいという気持ちは相手へのリスペクトの表明である
生命の安全が守られ幸せに生きる権利は誰もが有する人権で、多様な個性が受け入れられれば、誰もが生きやすい社会となるとのメッセージを、個々に捉える機会を得ることができた貴重なお話でした。

会場からは、「セクシュアルマイノリティ当事者の話は自分のことでもあり、周囲の友人たちからも聞くことが多いが、親側の心情などはなかなか聞ける機会もないため聞けて良かった」「困難を乗り越えた本人たちの経験が活動の推進力となっていると感じた」「カミングアウトする時には『自分で自分のセクシュアリティを受け入れる』ということが大きな壁の1つとなるということを知った」「差別によって苦しむ人がいるということを知ること。そして自分の立場として置き換えてみること。またこのような機会をつくってほしい」など、満足したとの多く感想が寄せられ、講演会は盛大に終了しました。

動画

当日の講演内容について、こちらより動画でご覧いただけます。

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