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一人ひとりが輝くキャンパスへ WASEDA LGBT ALLY WEEK開催にあたって

2016年5月、早稲田大学公認イベント企画サークルqoonと学生部国際コミュニティーセンター(ICC)などが共催し、LGBT当事者の支援者、理解者を意味するアライ(Ally)に注目したイベント、WASEDA LGBT ALLY WEEKを開催しました。本イベントは「LGBT当事者を含め、誰もが誰かのALLYになれる」をコンセプトに、セクシュアリティを問わず皆でつくり上げるイベントで、LGBT当事者やアライのポスターやストーリーをウェブやキャンパス内で掲載したほか、交流カフェでは、カジュアルな雰囲気の中、共催団体や支援者と参加者は親睦を深めました。

今回、尾内一美ICC課長(以下O)と本企画の発案者で学生責任者Tomoさん(以下T)にイベント開催にあたっての経緯を伺いました。


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LGBTに対して関心を持ったきっかけを教えてください

T: 自身がトランスジェンダーであることがきっかけです。高校まではそのことをほとんど誰にも打ち明けていませんでした。大学に入るとき早稲田を選ぶ決め手になったのはGLOWという日本で一番大きいセクシュアルマイノリティのサークルがあることや、公認サークルReBitがLGBT問題を切り口とした発信活動をしていると知ったことです。その上、早稲田大学は多様性が謳われているので、自分らしくいられるのではと思い、入学しました。しかし、実際は入学後も思ったように過ごせず、LGBTに関する活動を大学でやりたいと思うようになりました。例えば、授業では「さん」、「君」と呼称が分けられ、学生間では「一女」というくくりが使用されていることに息苦しさをすごく感じていました。

O: 高校生までは制服で男女がきっちり分けられていることもあり、当事者学生は大学に入ればもっと自分らしく生きやすくなると信じ一縷の望みをかけて入学してきます。しかし入学後も何かにつけて男女に分けられる。通称名使用という制度はありますが、データベースで戸籍上の性別表記が確認できるため、当事者学生は安心して授業を受けることもできません。細かいようですが、その一つひとつを解決していかないと真の意味で多様性を尊重できているとは言えません。今回のようなイベントを通してまずは本学構成員一人ひとりの意識を高めることが大切と思います。

T: ある授業では、先生がコミュニケーションの一環として名簿でF(女性)と書いてある人に「彼氏はいるの?」というような質問で場を和ませることがありました。そのクラスで僕は男子生徒として過ごしていたのですが、名簿にはF(女性)と書いてあるので、先生からは「彼氏いるの?」と聞かれました。やめてほしい旨を伝えたのですが、連絡の行き違いもあり理解してもらえず結局その授業に出席できなくなり単位を落としてしまいました。似たような経験をしている友人も何人かいるのでもっと過ごしやすくなったらいいなとは思っていました。

ICCがこのイベントを共催することになったきっかけを教えてください

O: 異文化理解の促進を使命とするICCでは、国籍や民族のみならず、性自認や性的指向を含む様々な多様性に対するリテラシーを教養として身に付けておくことがグローバルに活躍するためには重要と考えています。LGBTに関するイベントは2年以上前から温めており、Student Competitionで総長賞を受賞した学生団体Diversity WasedaやReBitとともに去年の12月に初めて開催しました。参加学生の満足度がとても高く、LGBTについてもっと知りたい、という声が圧倒的多数であったため、今回の企画を知った時に直ちに協力を申し出た訳です。

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イベントを開催するにあたり、どんな困難や変化がありましたか?

T: 本イベントにおけるアライの定義はセクシュアリティ問わずということなので、LGBT当事者を巻き込みたいという気持ちはありましたが、誘う段階で葛藤がありました。LGBT当事者のなかには自分のセクシュアリティをオープンにせず生きたいという方もいます。なので、僕も誘うのに葛藤があったし、当事者として参加する方にも葛藤があって、お互いを理解し合いながらイベントを進行するのが難しいと感じる時もありました。でも、イベント開催後の変化はすごく感じています。他人事と思っていたけどこの企画のおかげで意識が変わったというメッセージを多く頂きました。また、知らない当事者の子から「このイベントを開催してくれてありがとう」と言われたことも、とても心に残っています。やってよかったなと思えました。僕が大学に入って初めてカミングアウトし、作り上げた居場所が今のqoonというサークルなのですが、そのサークルの仲間や僕を変えてくれたみんなと一つのLGBTに関するイベントをやり遂げられたことに、反省はたくさんあれど、達成感を感じています。

ALLYになるためにはどのようなことを心掛ければいいですか?

T: セクシュアリティは一人ひとり違うという前提で考えてほしいと思います。例えば、戸籍上は男だとしても、自分のことをどれくらい男性と認識しているかは人それぞれだと思います。僕は目の前にいる人を見るとき、セクシュアリティのことに限らずカテゴリー分けをして見ないようにしたいなと思っています。LGBTのことが少しずつ認知され始めましたが、トランスジェンダーとして見られてうれしいかと聞かれたら、そうではありません。僕という人間を構成する要素はたくさんあって、その中の一つがたまたまトランスジェンダーであるというだけです。トランスジェンダーの人間として押し出されるものではないです。セクシュアリティの前にひとりの人間として見てほしいと思います。

O: 男女二元論を当たり前として教育を受けてきた私たちにとって馴染のないコンセプトですが、性別にもグラデーション(性の状態は一人ひとりによって様々に異なっている)があるという考え方があり、個人的にとても素敵だと思います。偏見やステレオタイプで人を型にはめてしまう自分を見つめ直すきっかけにもなり、そのグラデーションのなかで自分はどこにいるのかを考えてみるのも自分の内面と向き合う良い機会になると思います。

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LGBT当事者はどのような支援を求めていますか?

O: 誰でも使えるトイレの増設や性別表記の見直しは当事者学生の修学上、大学生活上の環境を整備する上で強い要望があります。また、当事者学生へのキャリア支援や交換留学時のサポートも必要です。将来的には、全教職員がLGBT研修を受講する仕組みが望ましいと考えます。学生サービスに係る全箇所に最低一人はLGBT研修を受けたアライ職員を配置できれば、当事者学生の窓口での心理的負担は少しは軽減されるのではないでしょうか。

T)もしそういった方がいることが分かっていれば、相談に行く前に悩むというステップはなくなり、大分楽になるなと個人的には感じます。通称名を使用するのにもかなりハードルが高く、「性同一性障害」の診断書がないと現在は名前を変えられません。クリニックに通うとなるとお金もかかります。ならば、事情があって診断書をもらえない子はどうすればいいのか。そういったことも含めて相談できる人がいれば、とても心強いと思います。

最後にメッセージをお願いします。

T: 一人ひとりが自分の「当り前」や「ふつう」を疑う必要があると思います。僕はLGBTに対して正しい理解知識がある社会ではなく、皆が過ごしやすい社会を求めています。皆が生きやすい社会は、LGBTの人も生きやすい社会だと思います。セクシュアリティの多様性には理解があるけれど、その他の多様性に対しては不寛容で鈍感な社会があったとして、僕は全然嬉しくありません。皆がハッピーでいられる、そういう社会を皆で一緒に作っていけたらいいなと思います。

O: 多様な生き方が受容され幸せの形が一つではないということに気が付くと、誰もが生きやすくなるのだと思います。今、LGBT支援に力を入れているのは、(特に欧米からの)留学生と比べて日本の学生の理解不足が顕著だから。教育機関ではこれまであまり語られて来なかったセクシュアルマイノリティですが、実業界では、消費者としてのLGBT市場への期待や優秀なLGBT学生の採用などの動きが出てきています。本学の学生には、セクシュアルマイノリティが身近な存在なのだということを認識し、自分が社会を良くする主体であるということを胸に巣立っていってほしいと思います。

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Tomoさんは現在、ReBitというNPO法人化された公認サークルを通してLGBT問題を切り口として小学校~大学、教育委員会などでの講演を行っています。また、社会問題を取り上げるイベントを開催するqoonという別の公認サークルに幹事として所属しています。

早稲田大学は多様性を尊重し、全学生が安心して有意義な学生生活が過ごせるよう、これからもよりよい大学づくりを目指します。

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