組織の生産性向上・女性活躍推進の突破口として注目が高まる、男性の働き方改革
日本は現在、男性の家事時間が世界的に見ても最も低く、6歳未満の子供を持つ夫の家事・育児関連時間(一日当たりの国際比較)は、1時間7分と、他の先進国と比較して3分の1程度です。その要因として30-40代男性の長時間労働が指摘されています(*1)。長時間労働を前提とした働き方の是正は、女性活躍推進の要因の一つとしても重視されており、男性が家庭参画できる環境整備の必要性が広く認識され始めています。
男性が家事・育児などに参画するメリットは、大きく分けて以下の5つに整理(*2)され、社会の多方面に好影響を及ぼすと考えられています。①家庭にとって:夫婦で過ごす時間の増加や子育てに対する好影響 ②男性自身にとって:仕事では得ることのできない経験が、段取り力・マネジメント力等、仕事をする上で求められる能力を向上させる ③女性にとって:育児家事負担軽減による女性活躍推進 ④企業にとって:多様な人材の増加による業務効率化生産性向上 ⑤社会にとって:少子化対策として有効。
(出典:*1 内閣府『平成28年度男女共同参画白書』 , 参考: * 2 内閣府「男性の暮らし方・意識の変革に関する専門調査会報告書概要」 平成29年)
家庭参画の妨げとなる、無意識の偏見。アンコンシャス・バイアスをご存じですか?
働く男性の63.6%が育休取得を希望しており(*3)、育児参画の意欲があることが分かっています。しかしながら、実際の取得率が3.16%(*4)にとどまっている要因として、「育児は女性が担う」という性役割意識、残業しないで定時に帰ることを「勤勉でない」「やる気がない」と見る職場文化があると言われています。それらが、父親の家事・育児の参画をためらわせる要因の一つとなっており、こうした文化の中で、男性の多くは「職場から戦力外と見なされる恐怖」を抱いていると言われています。
育休を取得した男性や取得したいと考える男性は若い世代ほど多く、一方、性別役割分業が一般的で女性が家事・育児を担うことが当たり前だった世代にとっては、男性が仕事を休んで育児をすることに違和感を感じやすい等、育ってきた時代や環境によって価値観は異なります。このように、過去の経験から性別や年齢などを根拠として決めつけを行う、無意識の偏見や固定観念のことを「アンコンシャス・バイアス」といいます。男性の家庭参画や女性の活躍推進等の妨げとなっている「アンコンシャス・バイアス」に気付き、個々の多様性を受け入れることが、両立可能な組織風土の醸成や組織の「生産性向上」に欠かせないため、管理職研修にこのテーマを導入する組織が増加しています。
(出典:*3 ライフネット生命「育児休業に関する意識調査」2013,*4 厚労省「雇用均等基本調査 平成28年度(速報版)」)
少子高齢化社会を支える、男性の両立 ~経営戦略としての男性の家庭参画~
男性の家庭参画は、仕事と「育児」の両立に限った問題ではありません。すでに3人に1人の割合で男性が介護を担っており(*5)、 2025年には高齢化率30%超となる日本では、今後、仕事と「介護」の両立が大きな問題となります。急速に少子高齢化する日本において、長時間労働を是正し、育児や介護をしながら男女が共に働き続けられる社会の実現なしに、企業組織は存続することはできないことが分かっています。男性の家庭参画は、人材確保・組織の生き残りをかけた経営戦略であるという認識を持って取り組むことが求められています。
(出典:*5 厚生労働省「国民生活基礎調査の概況」平成25年)
【ダイバーシティ推進だより 一覧】
vol.2 「男性育休取得職員 座談会」 2017年6月27日開催