Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

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ベトナム総合研究所【第Ⅲ期】
Vietnam Research Institute

【終了】2014~2019年度
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研究テーマ

ベトナムを中心としたメコン河流域の開発と人口・労働移動に関する研究

分野:社会システム

研究概要

ベトナム及び周辺国(カンボジア、ラオス、ミャンマー、タイ及び中国南部各省)はメコン河流域経済圏(The Greater Mekong Sub-region(GMS))と呼ばれ、エマージンング・マーケットとして注目を集めている。GMSでは、ASEAN城内の連結性(コネクティビティ)強化、ASEAN経済共同体の実現などにより、物流に加え人口・労働の各国間の移動も活発化している。中国からの労働流入も政治・社会問題を引き起こしている。しかし、このような人的資源の動態、特に域内の人口・労働移動による経済・政治的効果に着目した研究は見当たらない。本研究は、人口・労働移動がこの地域の発展と安定に与えるインパクトを分析することを目的とする。人口・労働移動の実態の把握、移動方向・要因の分析を通じて、政策提言を行い、日本の役割も検討する。具体的には以下のことを検討し、明らかにする。

(1)経済・社会発展政策と労働市場の各国間比較
一国において、労働力を吸収するためには、経済成長率の向上、雇用創出型成長が必要となる。また、経済発展と産業構造の変化は関連しており、労働の産業間・地域間移動を促進するために労働市場の整備を進めなければならない。ただし、農村部から安価な労働供給によって経済が発展するという構図は、多くの途上国で見直しが迫られている。第一に、産業の成熟により管理職が求められてくる場合に、その基礎となる教育・技能水準が追い付いていない。第二に、低賃金での過酷な労働環境や都市部でのインフラ未整備ゆえの劣悪な住環境などが、最適な労働移動を阻害している要因として考えられる。これら問題に、GMS諸国はどのように対応しているのかを、各国の労働市場の実態に即しながら検討する。

(2)外国人労働移動、移住政策の各国間制度比較
近年、国際間の労働移動が問題になってきている。従来から許容されていた専門職的労働者の移動に加え、必ずしも専門職とは言えない非熟練労働者の移動が活発に行われているためである。また、未熟練労働の移動は文化的な摩擦など、経済学的な問題を超えた問題を生む恐れを持っている。特に東アジア地域においては歴史的問題や文化的差異のために、ヒトの自由な移動には限界があり、また労働者の自由な移動が本当に各国の厚生水準を高めることになるかは議論の余地がある。本研究では、GMS諸国における外国人労働移動・移住政策の調査を踏まえ、上述の論点を検討する。

(3)メコン地域諸国における中国系等移住者の実態調査
メコン地域諸国においては国境が陸続きであることもあり、国境を跨いだ労働移動、移住が以前から活発になされてきたとみられるが、その実態は必ずしも十分に把握されてきたとは言えない。中国側からみたGMS諸国への労働移動・移住者の実態、ASEAN側からみた中国系等の労働移動、移住者の実態を、現地ネットワークをフルに活用した現地調査を通じて把握する。

研究報告

【2018年度】
2018年度は、2015年に開始した3カ年プロジェクト「メコン地域開発とアジア・ダイナミズム:ASEAN後発国発展の政治経済学的研究」(文部科学省科学研究費(基盤研究B))の最終成果を書籍出版するための作業を行った。本プロジェクトの成果である計11本の論文を三部構成でまとめ直し、2019年1月、『メコン地域開発とアジア・ダイナミズム』(文眞堂)として出版した。
また、書籍出版化作業と並行して、新規プロジェクトの立ち上げに向けた勉強会を不定期で行った。そこでは以下のような議論が行われた。2000年代に入り、所得が十分に高まらない段階で製造業が成長ドライバーの役割を終えてしまう事象が観察されるようになった。デジタル化の進展、ロボット活用、3D印刷等の技術の進歩変化は大きく、製造業が従来果たしてきた雇用創出などの役割を今後も維持できるかは必ずしも明確でなくなっている。こうした議論を通じて、新規プロジェクトでは、アジアのダイナミズムを念頭に置きながら、経済発展における工業化の役割を再検討していく意向である。
なお、2018年11月、ハノイ大学BNUと日本交流基金共催の国際シンポジウム「The 150th Anniversary of Meiji Restoration: Implications for Vietnam」(ベトナム・ハノイ)に研究所員2名が招待され、「明治維新後の日本の近代化過程:ベトナムの視点を踏まえた再評価」に関して研究発表した。

【2017年度】
2015年に開始した3カ年プロジェクト「メコン地域開発とアジア・ダイナミズム:ASEAN後発国発展の政治経済学的研究」(文部科学省科学研究費(基盤研究B))の最終年度であり、これまでの成果は計11本の論文として纏められた。本プロジェクトを通じて得られた知見は以下のとおりである。
現在、メコン地域におけるインフラは道路網を中心に着実にネットワークが拡大、域内緊密化を促している。これらをさらに進展させる上で制度面での改善が必要である。また、メコン諸国は各国が策定した戦略に基づき発展を模索しているが、域内の緊密化を前 提とした発展戦略の構築が望まれる。 さらに、メコン域内では日本企業のみならず、韓国企業、タイ企業が積極的な事業展開を行っている。特に、製造業分野のみならずサービス業の分野での進出 も活発になっている。現状では、製造業、サービス業ともにベトナムへの進出が目立っているが、域内の開発が進み緊密化が進展することで、CLM3カ国への波 及、拡大が期待される。こうした活動を活発化させるためには、制度の統一など域内の一体化を進める方策が求められる。
 なお、本プロジェクトの成果を広く公表する場として、2018年2月、社会科学総合学術院先端社会研究所との共催で国際シンポジウム「アジア・ダイナミズムとメコン地域開発」を早稲田大学・国際会議場で開催した。

【2016年度】
ベトナム経済研究所は、2015年度から3か年の計画で「メコン地域開発とアジア・ダイナミズム:ASEAN後発国発展の政治経済学的研究」(文部科学省科学研究費(基盤研究B))を中心に活動している。本研究では、後発国と先発国の格差是正の課題と方策をGMS 及び東アジアの経済ダイナミズムを踏まえて、学際的・包括的に分析することを目的とする。
2年度目にあたる2016年度は、東アジア・ダイナミズムの視点から、1.メコン地域開発課題の探索、2.経済区・工業団地、3.交通インフラ整備、4.企業戦略・発展、5.人的資本形成・労働移動の各テーマについて、各担当者が2015年度での基礎調査を踏まえて現地調査を実施し、テーマの深耕に努めた。また、メコン経済圏に関わる専門家、研究者を招聘、意見を聴取する勉強会を4回実施し、実態把握並びに今後の展望等につき議論した。
これら研究成果の中間報告の場として、2017年2月、ハノイ国家大学、ベトナム社会科学院、アジア太平洋経済センターとの共催で国際シンポジウム「Development of Mekong Region in the Asian Dynamic Context」をベトナム・ハノイにて開催した。

【2015年度】
 ベトナム総合研究所は、2015年度から3か年の計画で研究テーマ「メコン地域開発とアジア・ダイナミズム:ASEAN後発国発展の政治経済学的研究」(文部科学省科学研究費(基盤研究B))を中心に活動する。
 新たな成長フロンティアとして注目を集めるメコン河流域経済圏(GMS)に関する既存研究では、道路・港湾などの物流や各国の開発状況の分析はなされているが、経済特区などの生産拠点の分析、地域の生産の担い手となる外国企業・地場企業の戦略と発展の分析、人的資本の形成と労働移動の分析を踏まえた複合的研究はなされていない。こうした点を鑑み、本研究では、後発国と先発国の格差是正の課題と方策をGMS 及び東アジアの経済ダイナミズムを踏まえて、学際的・包括的に分析することを目的とする。より具体的には、1.東アジア・ダイナミズムの視点からのメコン地域開発課題の探索、およびキャッチアップ条件の分析枠組の構築、に加えて2.経済区・工業団地、3.交通インフラ整備、4.企業戦略・発展、5.人的資本形成・労働移動の各ファクターに焦点を当てて、経済的・政治的側面から上記課題を分析する。
 2015年度は、上記の5つの中心テーマについて、基礎的な文献整理・データ収集を中心に行った。また、メコン経済圏に関わる専門家を招聘し、勉強会を5回開催し、実態把握に努めた。

【2014年度】
早稲田大学ベトナム総合研究所は2004年10月に設立されたプロジェクト研究所である。2014年9月末日に第2期ベトナム総合研究所の5年間の活動期間を終え、10月からは構成員メンバーを一部変更して、新たに同名の第3期ベトナム総合研究所として出発した。
第3期は「ベトナムを中心としたメコン河流域の開発と人口・労働移動に関する研究」をテーマにプロジェクト研究に取り組んでいる。2014年度の定例研究会では、科学研究費の申請を含めた今後の研究計画を策定した。
2月にはベトナム、タイ、カンボジア、ラオスへの調査出張を実施し、現地の研究者とメコン地域開発に関する意見交換を行うとともに今後の研究協力を取り付けた。各国のJETROやJICAの現地事務所からの情報収集や、カンボジアとラオスの経済特区(SEZ)の工業団地の視察も行った。
2014年度は今期の研究プロジェクトを推進するために文部科学省科学研究費補助金(基盤研究B)に応募し、2015年度から3か年の計画で採択された。研究テーマは「メコン地域開発とアジア・ダイナミズム:ASEAN後発国発展の政治経済学的研究」(研究代表者:トラン・ヴァン・トゥ)である。

所長

トラン・ヴァン・トゥ[とらん・ゔぁん・とぅ](社会科学総合学術院教授)

メンバー

【研究所員】
トラン ヴァン トゥ(社会科学部教授)
奥迫 元(社会科学部准教授)
山田 満(社会科学部教授)
劉 傑(社会科学部教授)
鍋嶋 郁(国際学術院准教授)
大門 毅(国際学術院教授)

【招聘研究員】
荒川 研(独立行政法人北方領土問題対策協会理事長)
池部 亮(日本貿易振興機構海外調査部アジア大洋州課長)
Yoshiyuki Oba(株式会社日本経済研究所国際本部研究主幹)
鹿間 雄一(三井物産株式会社次世代・機能推進本部担当マネージャー)
武田 悠貴彦(株式会社アストミルコープ代表取締役)
DO MANH HONG(桜美林大学ビジネスマネジメント学群准教授)
西 晃(日本ビジネスオペレーションズ株式会社木場運用部副部長)
保倉 裕(学校法人東京音楽大学理事・特任教授)
松本 清(株式会社ソリトン代表取締役)
松本 邦愛(東邦大学医学部社会医学講座医療政策・経営科学分野講師)
苅込 俊二(帝京大学経済学部准教授)
白石 昌也((早稲田大学名誉教授)
森 睦也(国際協力機構上級審議役)

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