Comprehensive Research Organization早稲田大学 総合研究機構

その他

保険規制問題研究所【活動終了】
Research institute on insurance supervisions and regulations

【終了】2012~2016年度
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研究テーマ

経済・社会的環境変化の下での保険監督・規制のあり方

分野:社会システム

研究概要

 昨今の経済情勢の変化は、保険業界にも多大な影響を及ぼしつつある。損保業界は2000年代に入り、国内経営環境の悪化を強く意識するようになった。すなわち、「大きな成長が望めない国内マーケット、少子高齢化の進展による人口減少傾向、景気悪化の影響、若者を中心とした自動車離れ」等の懸念材料が噴出したのである。この危機に対しとりわけ損保業界は、「業界内の再編とグループ経営の効率化」を有効な改善策と捉え、本格的な業界再編を実施する方向に動いている。こうした動きに対応して、本年3月に金融庁は、「わが国金融業の中長期的な在り方についての検討」、「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方についての検討」を諮問事項とし、6月には「保険会社のグループ経営に関する規制の在り方についてのワーキンググループ」を金融審議会に設け、これら諮問事項の検討を依頼した。
そうした動きの中、保険業法中の各種監督規制が、場合によっては業界の大胆な再編にとって障碍となる可能性があることも指摘されるようになってきた。例えば保険業法135条2項によれば、「保険契約の移転は、責任準備金の算出の基礎が同一である保険契約・・・の全部を包括してしなければならない」。そして同条3項で「〔移転する〕契約には、保険契約の移転とともにする保険会社の財産の移転に関する事項を定めなければならない。この場合においては、保険契約の移転をしようとする保険会社・・・は、同項の契約により移転するものとされる保険契約に係る保険契約者・・・以外の当該移転会社の債権者の利益を保護するために必要と認められる財産を留保しなければならない」とされている。保険契約の移転については、保険の団体性に基づき保険集団を維持することこそ、最大の契約者保護策となる。その意味で、包括移転の単位を責任準備金の算出基礎が同一の契約群とする政策は、本来は極めて妥当なもののはずである。しかし、責任準備金計算基礎において同一の契約者群にも、販売チャネルによる見方、あるいは地域・年齢等の危険率的な見方をとると、再編を前提とする場合に必ずしも同一集団として維持する必然性や合理性のないことがある。そのため損保業界は、業法135条2項の緩和措置を求めている。
 この例に見られるように、保険業法を中心とする保険監督の伝統的規制理念が、現代社会、とりわけ不況の長期化・構成人口の超高齢化等が急速に進行している我が国の現代社会において、果たして依然として合理性・妥当性を保ち得るのかには、再検証が必要となろう。こうした問題を総合的に検討する試みは、これまで十分に行われてきたとは言い難い。そこで本研究所では、?現在のわが国の社会構造がどのように変化したのか、?保険契約法および保険業法の伝統的規制・監督理念がどのような意図をもっていたのか、そして?変化した社会環境の下でも、依然として伝統的な契約法理、監督規制・監督理念をもって臨むことができるのかについて、保険論および保険法の双方の角度から総合的な研究を行いたい。

研究報告

【2015年度】
 2015年度は、これまで2回にわたり「保険募集の課題と展望」を主テーマとして開催してきたシンポジウムにおける本格的な議論を受けて、その研究成果をまとめ、世に広く発信するべく、冊子『保険販売の新たな地平−保険業法改正と募集人規制−』を刊行した。出版社は、保険業界と保険学界を中心に幅広い購読者層を有する保険毎日新聞社である。
 本書は2部構成である。第1部は、2013年6月28日と2014年9月26日に、早稲田大学大隈記念講堂で開催したシンポジムにおいて、基調講演を頂いた実務家の方々の講演内容である。また、第2部は、本研究所の研究員が、保険募集の課題と展望について、各自の問題意識に基づき執筆した論考である。折しも本書が刊行されたタイミングは、2016年5月施行の改正保険業法の下で、わが国の保険募集制度が新たなフェーズを迎えた時期と重なるものであり、まさに本書は「保険販売の新たな地平」を照らすものといえよう。
 なお、本書の刊行にあたっては、早稲田大学総合研究機構「プロジェクト研究所研究成果を対象とする出版補助」による出版助成を受けた。

所長

大塚 英明[おおつか ひであき](法学学術院教授)

メンバー

【研究所員】
大塚 英明(法学学術院教授)
江澤 雅彦(商学学術院教授)
江頭 憲治郎(法学学術院教授)
福島 洋尚(法学学術院教授)
大塚 忠義(商学学術院助教)

【招聘研究員】
内藤 和美(関東学院大学経済学部非常勤講師)
髙崎 亨(京都産業大学法学部特約講師)
劉 宏(日立保険サービス株式会社)
崔 桓碩(八戸学院大学ビジネス学部助教)

連絡先

大塚英明研究室
E-mail:[email protected]

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