シルクロード調査研究所【第Ⅲ期】【活動終了】
Silk Road Research Institute
【終了】2012~2014年度
研究テーマ
モノからみたシルクロードの文化交流 -東アジアから中央アジアを中心に-
分野:文化
研究概要
これまで、東西交流の歴史を、考古学を中心とした学際的な研究手法から明らかにしようと試みてきた。その成果は別紙に示した通り、当初の研究計画に沿って一定の成果を挙げてきたといえよう。今後も基本的には上述の目的に向かい、研究活動を行っていく。特に考古学的な遺構・遺物を含む「モノ」に注目し、その交流について考えていく。
これまでの研究では、主に中国を中心とした内容であったため、西アジアやヨーロッパに至るシルクロードの相互交流まで研究範囲を広げることができなかった。したがって、今後は、まずユーラシア大陸の東西を繋ぐ重要な地域である中央アジアを研究対象に含める。これまで調査・研究の蓄積が希薄であった中央アジアへ積極的に赴き、その成果を発表していきたい。
また、来年度以降は、本年度より本学文学学術院の専任講師となった城倉正祥を本研究所の研究所員として迎える。城倉講師は前所属の国立奈良文化財研究所でシルクロードの終点ともいうべき奈良の平城京の調査をした経験をもち、さらに中国の洛陽でもシルクロードに関係が深い北魏洛陽城の発掘に参加していた。したがって、シルクロードの東半分を占める日・中・韓における文物の交流に関して研究経験も豊富である。この城倉講師のシルクロードに関する深い造詣を生かし、今後はさらに日本と中国におけるシルクロードを通したモノの従来について研究を深化することができよう。
さらに、他地域を専門とする研究所員をむかえているため。シルクロードそのものが世界史の中でいかにして位置づけられるかを明らかにするため、比較考古学的な視点からも研究を進めていく。
以上のように、シルクロード調査研究所は研究対象地域も広いが、その分研究の進展が期待できる余地も極めて多い。したがって、改めて研究所の設置を認めて頂き、継続的な研究ができるよう希望する。
研究報告
【2014年度】
2014年度は、シルクロード調査研究所の最終年度にあたる。シルクロード調査研究所が過去に行った発掘調査の報告書作成作業を中心に進めた。客員研究員である久保田慎二・後藤健が中心となって、新疆ウイグル自治区のトルファンに位置するヤールホト古墳群の発掘成果の整理を行った。中国側から刊行されている報告書の翻訳作業がほぼ終了し、2015年度の報告書刊行に向けて準備を進めている。また、海外事業としては、所長を務める城倉が採択されている科研費(若手研究B)『隋唐都城における都市空間(里坊)の構造と東アジアへの展開過程に関する考古学的研究』の調査の一環として、2014年度夏に中国内蒙古の遼上京城・中京城、河北省の北斉?城、河南省の漢魏洛陽城・隋唐洛陽城、陝西省の隋唐長安城、および甘粛省のシルクロードの都市を一カ月にわたって踏査した。
国内の調査としては、日本における初期仏教の展開過程を明らかにするため、7世紀に造営された東国最古級の寺院として著名な龍角寺の発掘調査を2〜3月に実施した。また、龍角寺造営氏族の遡源を明らかにすべく、龍角寺古墳群の50号墳を測量・GPR調査した。その成果については、すでに学会発表および論文として公表済みである。
以上、シルクロード調査研究所の5年間の研究成果を踏まえた上で、2015年度4月からは新たなプロジェクト研究所『東アジア都城・シルクロード考古学研究所』(所長:城倉正祥)を設立した。引き続き、考古学の視点からシルクロードの歴史的意義を位置づける研究を進めていく予定である。
【2013年度】
2013年度は、シルクロード調査研究所が過去に行った発掘調査の報告書作成作業を中心として研究を進めた。客員研究員である久保田慎二・後藤健が中心となって、新疆ウイグル自治区のトルファンに位置するヤールホト古墳群の発掘成果の整理を進めた。既に中国側から刊行されている報告書の翻訳作業も順調に進み、新しい視点での考察の執筆者(日本側3名、中国側3名)も決定した。報告書の刊行は、2015年度を予定している。
一方、国内における考古学的調査も進展した。2013年度3月にはシルクロードによって東に伝わった仏教の伝播過程を明らかにするため、千葉県印旛郡栄町に所在する国指定史跡:龍角寺の測量・GPR調査を行った。城倉が研究分担者を務める科研費を用いた調査であるが、7世紀における仏教伝播の在り方を考究する上での重要な成果を上げた。また、2013年度中には、城倉を代表とする科研費の申請を行い、2014年4月に若手研究Bが採択された(若手研究B『隋唐都城における都市空間(里坊)の構造と東アジアへの展開過程に関する考古学的研究』代表:城倉正祥、2014年度〜2017年度)ため、2014年度以降のシルクロード調査研究所の主要な研究テーマを「日中都城の比較研究」とする方向性を定めることができた。
所長
城倉 正祥[じょうくら まさよし](文学学術院准教授)
メンバー
【研究所員】
城倉 正祥(文学学術院准教授)
寺崎 秀一郎(文学学術院教授)
谷川 章雄(人間科学学術院教授)
近藤 二郎(文学学術院教授)
高橋 龍三郎(文学学術院教授)
【招聘研究員】
後藤 健(鎌倉市教育委員会文化財課臨時的雇用職員)
中條 英樹(テイケイトレード株式会社埋蔵文化財事業部調査課課長)
菊地 有希子((株)パレオ・ラボ)
菅谷 文則(奈良県立橿原考古学研究所所長)
山田 俊輔(独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館研究員)