ヨーロッパ中世・ルネサンス研究所【第Ⅰ期】
Institute for European Medieval and Renaissance Studies
【終了】2009~2014年度
研究テーマ
ヨーロッパの中世・ルネサンス期における文化の諸相を学際的に研究する
分野:文化
研究概要
欧米の社会や文化のあり方の基盤はいうまでもなく、ヨーロッパの中世とルネサンスの時期に形成されたといってよい。中世とルネサンスの時期には、古典古代の文化とキリスト教の伝統が融合しつつ、ヨーロッパ独自の社会構造や行動規範が生まれ、また、ヨーロッパ文化の基層をなす哲学、文学、芸術が開花した。
本プロジェクト研究所では、ヨーロッパの中世とルネサンスの時期に形成された、社会や文化の諸相を、ひとつの学問分野からだけではなく、歴史学、美術学、哲学、文学、西洋古典学、宗教学などの様々な分野から領域横断的に考察することで、その本質的な特徴を解明していくことを目的とする。
本プロジェクト研究所は、欧米の著名な大学に存在する「中世・ルネサンス研究所」をモデルとしつつ(たとえばアメリカのUCLAにある「中世・ルネサンス研究所」など)、西洋文化圏ではなく東洋文化圏に属する日本ならではの、独自のヨーロッパ中世・ルネサンス研究を行う研究所として、その結果を日本のみならず世界に発信していくことを目指したい。
本プロジェクト研究所では、そのような欧米にある「中世・ルネサンス研究所」の活動に着想をえながら、具体的な活動として、多様な専門分野の研究者による共同研究の遂行、定期的な研究会やシンポジウムの開催、また外国人研究者を交えた国際的なコロキウム、紀要などの定期刊行物の公刊、論文集の刊行などを考えている。
とくに、本プロジェクト研究所の重要な使命は、ヨーロッパ中世・ルネサンス関係の問題を専門とする、早稲田大学に在籍する大学院生などの若手研究者を育成し、その研究活動を支援していくことである。研究会やシンポジウムにおいて、若手研究者が自身の研究成果を発表できる場を数多く作り、また、その成果を公表できる紀要や論文集を積極的に刊行していきたい。
このような活動により本プロジェクト研究所は、早稲田大学でのヨーロッパ文化研究のひとつの拠点となることを目指すとともに、欧米の大学の「中世・ルネサンス研究所」とも密接に交流しながら、日本におけるヨーロッパ中世・ルネサンス研究の拠点となることも目指したい。
研究報告
【2013年度】
2013年度は、以下の研究会とシンポジウムを開催した。(1)2013年4月20日(テーマ:「リヴァイヴァル―ヨーロッパ文化における再生と革新」、報告:菅原裕文「後期ビザンティン聖堂(13〜15C)におけるプラティテラ型聖母子像」、西間木真「写本学 (codicologie)とリヴァイヴァル」)、(2) 2013年6月29日(報告:坂田奈々絵「12世紀のサンドニ修道院における擬ディオニシオス文書の伝統」、久米順子「キリスト教美術とイスラーム美術が交差するところ:中世スペインの場合」)、(3)9月21日(シンポジウム:全体のテーマ「中世地中海世界における翻訳と文化の伝承」、報告:高橋英海「ギリシア語からシリア語、アラビア語への翻訳―誰が何をなぜ翻訳したのか」、岩波敦子「地中海からピレネーを越えて 中世ヨーロッパの自然科学 知の受容と伝播」、山本芳久「トマス・アクィナス『対異教徒大全』の意図と構造」)(4) 2013年11月2日(報告:久木田直江「The Booke of Ghostly Grace―ハッケボーンのメヒティルドの霊性と中世医学―」、高津秀之「「宗教改革百周年」の挿絵入りビラ―「図像から読み取る歴史」から「図像がつむぐ歴史」へ―」)また2014年3月に紀要『エクフラシス-ヨーロッパ文化研究-』第四号を刊行した。
【2012年度】
今年度は「リヴァイヴァル―ヨーロッパ文化における再生と革新」のテーマのもとで以下のような三回の研究会と一回のシンポジウムを開催し、紀要も刊行した。
2012年4月21日の研究会では、唐沢晃一 (早稲田大学非常勤講師)「「ローマ人の皇帝」と「セルビア人の王国」―辺境からみた二つのローマ―」、長沢朝代 (早稲田大学大学院博士課程)「シバの女王の図像的系譜 ―アレッツォ《聖十字架伝》への手がかりとして―」の報告がなされた。2012年6月30日の研究会では、益田朋幸(早稲田大学文学学術院教授)「聖母マリアの予型―ビザンティン美術におけるリヴァイヴァルとサヴァイヴァル―」、瀬戸直彦(早稲田大学文学学術院教授)「中世における二つのトポス:『雅歌』と『秘中の秘』」の報告がなされた。2012年9月29日のシンポジウム「中世・ルネサンスにおける「ローマの再生」」では、三つの報告、大月康弘(一橋大学経済研究科教授)「中世キリスト教世界におけるローマ理念の再生─9〜10世紀の国際関係から─」、児嶋由枝(智大学文学部准教授)「イタリア中世後期美術における神聖ローマ皇帝図像─フィデンツァとバルレッタの例─」、加藤守道(上智大学総合人間科学部教授)「レオナルド・ブルーニによるキケロの再発見」がなされ、同時に活発な討論がなされた。2012年11月3日の研究会では、伊藤怜(早稲田大学大学院博士課程)「11・12世紀ラツィオ美術における「再生」」、藤井明彦(早稲田大学文学学術院教授)「ドイツ初期印刷本の世界 ─ メディア史・言語史・芸術史の接点を探る」の報告がなされた。年度末には研究所の紀要『エクフラシス−ヨーロッパ文化研究−』の第三号を刊行した。
【2011年度】
本研究所は2011年度に、研究会とシンポジウムを以下の4回開催した。(1)2011年4月9日の研究会(テーマ:「中世の写本をめぐって」、報告:西間木真「アキテーヌ写本の「トナリウス tonarius」を通してみたロマネスク音楽の諸問題」、辻絵理子「ストゥディオス修道院写本工房の磔刑図像―礼拝する人物と犠牲の仔羊」)。(2)2011年7月16日の研究会(テーマ「中世の時間意識」:黒田祐我「複合的な暦と時間意識−『辺境』としての中世イベリア半島」、櫻井夕里子「アナスタシス(キリストの冥府降下)図像に内在する時間」)、(3)2011年9月24日のシンポジウム(テーマ「リヴァイヴァル−ヨーロッパ文化における再生と革新」、報告:伊藤亜紀「日常の美−「新版」アラビア医学書『タクイヌム・サニターティス』」、根占献一「ローマ再生とエジディオ・ダ・ヴィテルボ」、佐藤真一「「近代歴史学の父」ランケと中世研究」)、 (4)2011年11月5日の研究会(テーマ「越境するルネサンス」、報告:清水憲男「ルネサンス−揺さぶりをかけるスペイン」、喜多崎親「中世とルネサンスのあわい−規範としてのフラ・アンジェリコ」)。また、年度末には紀要『エクフラシス−ヨーロッパ文化研究』の第二号を刊行した。さらにこれまでの「時間意識」をめぐる共同研究の成果として、甚野尚志・益田朋幸編『ヨーロッパ中世の時間意識』(知泉書館、2012年)を総合研究機構の出版補助を得て刊行した。
所長
甚野 尚志[じんの たかし](文学学術院教授)
メンバー
【研究所員】
甚野 尚志(文学学術院教授)
大高 保二郎(文学学術院教授)
瀬戸 直彦(文学学術院教授)
田島 照久(文学学術院教授)
益田 朋幸(文学学術院教授)
森原 隆(文学学術院教授)
青野 公彦(高等学院教諭)
坂上 桂子(文学学術院教授)
松園 伸(文学学術院教授)
冬木 ひろみ(文学学術院教授)
デュスッド オディール(文学学術院教授)
藤井 明彦(文学学術院教授)
堀越 宏一(教育・総合科学学術院教授)
伊藤 怜(文学学術院助手)
矢内 義顯(商学学術院教授)
【招聘研究員】
小林 雅夫(早稲田大学名誉教授)
根占 献一(学習院女子大学国際文化交流学部教授)
宮内 ふじ乃(早稲田大学非常勤講師)
櫻井 夕里子(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
高津 秀之(東京経済大学経済学部専任講師)
高津 美和(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
SABATTOLI Laura(G.CARLIインターナショナルスクール付属International Education Research Institute)
高橋 朋子(早稲田大学非常勤講師)
毛塚 実江子(共立女子大学非常勤講師)
青柳 かおり(大分大学教育福祉科学部専任講師)
皆川 卓(山梨大学教育人間科学部准教授)
西間木 真
黒岩 卓(東北大学大学院文学研究科准教授)
佐藤 真一(国立音楽大学音楽学部教授)
大月 康弘(一橋大学大学院経済学研究科教授)
三浦 清美(電気通信大学准教授)
和田 光司(聖学院大学人文学部欧米文化学科教授)
唐沢 晃一(早稲田大学文学学術院非常勤講師)
児嶋 由枝(上智大学文学部准教授)
山中 良子(東北芸術工科大学名誉教授)
踊 共二(武蔵大学人文学部教授)
丹下 栄(熊本大学文学部教授)
黒田 祐我(早稲田大学非常勤講師)
菅原 裕文(早稲田大学非常勤講師)
鈴木 善晴(早稲田大学本庄高等学院非常勤講師)
浅野 啓子(早稲田大学非常勤講師)
山中(近藤) 良子(東北芸術工科大学名誉教授)
小田内 隆(立命館大学文学部教授)
菊池 雄太(京都産業大学経済学部特定研究員)
久保田(小林) 静香(駒沢女子大学人文学部非常勤講師)
連絡先
文学学術院 甚野尚志研究室
E-mail:[email protected]