建築系環境・情報マネージメントシステム研究所【活動終了】
Institute of Architectural Environment Design & Information System
【終了】2003~2007年度
研究テーマ
建築分野の環境負荷軽減や省エネルギーに貢献するマネージメントシステムの研究、開発
研究概要
地球環境問題が深刻化する中で、建築分野においても、環境負荷軽減や省エネルギー対策を進めることが強く求められている。具体的には、建物施設管理を適切に行うことにより、設備機器の状態を良好に保ち、エネルギー消費を抑え、適切な環境を維持することができる。さらに廃棄物やエネルギーなどの情報を地域で共有することにより、建物を超えたエネルギー、物質のサイクルを効率化することができる。一方、近年の情報技術の発達により、建物施設管理情報や地域情報の共有を可能にする基盤が整いつつある。
本研究所では建物施設管理および情報ネットワークに関して、
1. 建物施設の環境・エネルギー効率の最適化により施設管理の高度化・省力化・低コストを図るライフサイクルマネージメント(LCM)サポートシステムの構築、
2. 施設管理者・施工者・メーカーという異なる立場の間で施設管理最適化の情報共有を可能としたコラボレート環境の実現、
3. ネットワーク拡張による地域内施設管理情報の共有による地域全体の環境負荷軽減と省エネルギー化、を目的とした研究を行う。
研究報告
2007年度
研究報告2004〜2006年度に引き続き、早稲田リサーチパーク・コミュニケーションセンターを題材に研究を行った。
昨年度から継続して行っているAHU異常運転の検知手法の開発について検証を行うため、他施設での実測をあわせて実施した。作業フローは昨年度と同様、以下の通りである。
1)異常運転を人為的に発生させて対象機器まわりのデータを収集
2)AHUの詳細な物理モデルを作成し、シミュレーションにより異常・正常データを作成
3)異常・正常データのパターンをサポートベクターマシン(以下、SVM)で学習
4)SVMにより実機の異常データを判定
また、本年度は最終年度となるため、これまでの研究成果およびその周辺分野の動向に関する調査結果をまとめて書籍として出版するための活動を行った。既にA5版100ページ程度の原稿を書き上げており、現在、出版社との交渉を行っている。以下に目次案を示す。
第1章 建築系環境・設備・情報システムがなぜ必要か
第2章 知的生産性とこれからの建築設備
第3章 建物の情報を知る
第4章 建物の情報を利用する
第5章 情報の可視化ツール
第6章 実例
第7章 次世代の環境・情報システム
2006年度
研究報告2004年度、2005年度に引き続き、早稲田リサーチパーク・コミュニケーションセンターを題材に研究を行った。
本年度は主に異常運転の検知手法の検討を目的とした各種実測を行った。具体的な作業フローは以下の通りである。
1)異常運転を人為的に発生
2)オープンネットワークを利用して対象機器まわりのデータを収集
3)AHUの詳細な物理モデルを作成し、シミュレーションにより異常・正常データを作成
5)異常・正常データのパターンをサポートベクターマシン(以下、SVM)で学習
6)SVMにより実機の異常データを判定
空気調和衛生設備の代表的な機器であるエアハンドリングユニットを対象機器として選択し、フィルタ閉塞、バルブ開度異常等の異常を発生させた。フィルタ閉塞はフィルタ前にスチレンボードによるじゃま板を設置することで再現した。
物理モデルとしてはHVACSIM+(J)に定義された冷却コイルモデルおよびファンモデルを採用した。コイル出口絶対湿度に関しては、0.003[kg/kg]程度の誤差があったが、コイル出口空気温度およびコイル出口水温度に関しては誤差0.5℃未満の予測が可能であった。
SVMによる正常・異常運転の判定の結果、シミュレーションデータに関しては100%の判定が可能であった。実機の出力についても、フィルタ2/3閉塞、冷水バルブ全閉、ファンベルトテンション異常に関しては、概ね正しい判定が可能であった。
過年度と同様、2007年度も日本建築学会および空気調和・衛生工学会において発表を予定している。
2005年度
研究報告2005年度は、2004年度に引き続き早稲田リサーチパーク・コミュニケーションセンターを題材に研究を行った。
施設に導入されたアンモニア冷媒ヒートポンプチラーについて、数回にわたりメーカーと打合せを行い、運転状況に関する意見交換を行った。また、BMSデータによる機器性能把握を効果的に行なうために、メーカーより冷凍機の機器性能モデルを入手した。
既設BASシステムにLONWORKSによる新設のネットワークを接続するために各種検討を行った。試験的にパケットを流して通信量を測定し、ネットワークトラフィックの増大が既設BASシステムに与える影響の程度を確認した。レクチャールーム・熱源廻りなどの既設BASシステムでセンシングが不足している箇所にセンサを設置し、追加的なセンシングを開始した。
ニューラルネットワーク・遺伝的アルゴリズムなど、ソフトコンピューティングと呼ばれる一連の手法を用いて設備機器の出力予測を行なった。特に熱源に関しては入手したメーカー提示のモデルや一般的な動的シミュレーションプログラムTRNSYSのモデル等と性能比較を行い、予測能力の高さを確認した。
2005年度に続き、2006年度も日本建築学会および空気調和・衛生工学会において発表を予定している。
2004年度
研究報告2004年度は、埼玉県本庄市の早稲田リサーチパーク・コミュニケーションセンターを対象に研究を行った。同施設はアンモニア冷媒のヒートポンプチラーやNaS電池など、新しい技術を取り入れた環境共生型の建築であるが、これらを含めた設備システムの運転データを遠隔管理・取得するシステムを構築した。
1)コラボレート環境の構築のための技術的課題の解決
COPなどの一般的な指標による性能評価を行うとともに、取得する情報内容を明確化し、より詳細な分析を可能するために機器メーカとの意見交換を行った。
2)建物施設管理の最適化
データの二次的な活用方法として、ニューラルネットワークによる設備機器の挙動把握を行い、動的シミュレーションプログラムHVACSIM+(J)から利用するための新たなTYPEを作成した。
3)施設管理情報の地域展開
自然換気システムの運転結果・温湿度などの施設運用状況に関するデータを、WEBを通してほぼリアルタイムで一般公開し、地域に対して環境・エネルギーに関する啓蒙を図った。
これらの研究成果は2005年度の日本建築学会および空気調和・衛生工学会において発表予定である。
所長
田邉 新一[たなべ しんいち](理工学術院教授)
メンバー
研究員
田邉 新一(理工学術院教授)
河合 素直(理工学術院教授)
寺島 信義(大学院国際情報通信研究科教授)
斎藤 潔(理工学術院准教授)
客員研究員
横山 計三(日比谷総合設備(株)技術本部技術研究所長)
高橋 慎一(日比谷総合設備(株)技術本部技術研究所主任)
久野 誠(日比谷総合設備(株)技術本部情報技術部主任)
渡邊 剛(学校法人 日本医科大学薬理学講座講師)
連絡先
早稲田大学 創造理工学部 建築学科
田辺新一研究室
東京都新宿区大久保3-4-1
早稲田大学理工学部55号館N棟701号室田辺研究室
Email: [email protected]