文化遺産・芸術工学研究所【第Ⅱ期】【活動終了】
Institute of Technical Research for Cultural Heritages and Fine Arts
【終了】2002~2007年度
研究テーマ
絵画、彫刻、工芸品、歴史的建造物の修復、創作、文化財保存
研究概要
絵画、彫刻、工芸品および歴史的建造物の修復・保存作業において材料調査は必要不可欠である。美術工芸品の修復は人材育成も含めて民間零細企業で行われていることが多く、残念ながら修復時に技法等の解明を目的に材料調査まで行なうには装置や費用等の問題があり、実際にはあまり行なわれていないのが実態である。他方、国立の文化財研究所や博物館は、最近の独立行政法人化に伴い以前と比べて活動は比較的自由になったと推定されるが、対象は文化財で対外協力等の行政面に多くの時間が割かれるため、民間の上記のような要請に対応している余裕は無い。修復時の技法・材料調査に興味を持つ修復家は多いが、納期と資金面から諦めている個人は多い。事は修復だけではなく美術工芸家、現代の作家活動でも同様である。技法材料に興味を持つ作家が個人的に課題を依頼できる機関は殆ど無い状態であり、そこで、このような要請にこたえ修復や創作活動、さらに文化財の保存活動に貢献することを目的として本プロジェクト研究所を設置する。
研究報告
※文化遺産・芸術工学研究所
2007年10月01日〜2012年09月30日までの活動に関してはこちら
http://www.kikou.waseda.ac.jp/WSD322_open.php?KenkyujoId=65&kbn=0&KikoId=01
2006年度
研究報告 2006年度の材料調査では以下の報告をまとめた。
〇藤田嗣治展「展覧会図録」藤田嗣治の地塗り−遺された画布とボード−
p.153-157 NHK, NHKプロモーション, 日本経済新
聞社 2006年発行
展覧会は東京国立近代美術館で開催、その後京都国
立近代美術館及び広島県立美術館へ巡回した。
〇東アジアにおける古建造物彩色・壁画の保存と修復−韓国通度寺霊山殿壁画編−
「講演要旨集」 京都嵯峨芸術大学主催 2006年
12月発行
この調査は主に(財)元興寺文化財研究所が行なってい
るが、試料片調査を補佐して要旨集p.40掲載の表1
作成を担当した。
この他に以下の書籍を出版した。
『プラド美術館』名画に隠された謎を解く 藪野健 著 中央公論新社 2006年3月発行
2005年度
研究報告文化遺産・芸術工学研究所活動報告2005年度
2005年度は主に油彩画の材料調査を行なって以下の報告をまとめた。
○矢田一嘯「蒙古襲来絵図」試料片調査結果 p.12-13
○寺崎武男 「扶搖萬里之風」試料片調査結果 p.24-25
○川村清雄作品 試料片調査結果 p.38-43
○百武兼行「婦人像」 試料片調査結果 p.44-46
修復研究所報告Vol.17(2003・2004) 2005年10月 (有) 修復研究所21発行
○和田英作「マダム・シッテル 像」試料片調査結果 p.6-11
絵画修復報告 No.7 2006年1月 山領絵画修復工房発行
この他に以下の調査依頼があり、いずれも試験依頼として報告書を作成提出した。
●主にブロンズ像の制作会社より20世紀初頭のブロンズ試料片に関して材料検査
●薫蒸処理会社より主に磨崖物壁面の生成物材料検査
2004年度
研究報告2004年度は、昨年度に続いて、主に絵画試料片の分析調査を行い、雑誌に報告をまとめた。
〇ミレー作品試料片調査報告 山梨県立美術館研究紀要 19号 p.41-p.50 2004年
〇高橋由一作品の試料片調査報告 ことひら 60号 p.297 2005年(金刀比羅宮発行)
〇江戸時代の藍摺り銅版画について 浮世絵芸術(国際浮世絵学会誌)149 p.50 2005年
以上は理工総研への委託研究の、一環としてなされたものであるが、当研究所の活動の一端でもある。この他には、民間会社(美術展示企画及び修復等が主な業務)より、絵画及び彫刻の試料調査依頼(数件)があり、報告書を提出した。過去にも指摘したが、美術品は個人所有の性格が強いため、調査を行っても、主たる雑誌に公表できない例は多い。それでも調査内容は、材料に興味を持つ美術家や修復家にとっては良い資料となる。中小民間業が美術関係の仕事の殆どを担当しているが、今年度も引き続き、民間からの調査依頼に応える一方、現在所有している機器の、美術品試料調査における応用面を探る。
所長
藪野 健[やぶの けん](芸術学校教授)
メンバー
研究員
内田 悦生(理工学術院教授)
逢坂 哲彌(理工学術院教授)
中川 武(理工学術院教授)
藪野 健(芸術学校教授)
客員教員(非常勤)
関 知良(客員教授/?中央公論社雑誌局編集企画部長)
客員研究員
宮田 順一((有)修復研究所21所員、早稲田大学理工学術院客員研究員)
牧村 健一郎(東京本社ラジオテレビ文化部記者)
連絡先
早稲田大学芸術学校
藪野健研究室
(藪野 健)03-5286-3918
(内田悦生)03-5286-3318
Email: [email protected]