COVID-19を受けた飲食産業の危機対応マネジメント
2020年6月22日(月)
早稲田インバウンド・ビジネス戦略研究会 ゲスト:人形町今半社長 高岡氏
COVID-19後の初回研究会は人形町今半の高岡社長をお招きしZOOMにて開催。即資金繰りに対応する、従業員のモチベーションを維持しながら事業ポートフォリオ内の資源シフトをする、現場の声を重視しながらも顧客とのコミュニケーションの中で最適解を探してゆく等高岡社長の経営の基本をおさえた危機対応における示唆深いお話が伺えた。議論ができる人数ということで参加者を20名未満に絞ったが、興味深い質問・コメントが頻出し充実した研究会となった。
1.イントロダクションとあいさつ(池上重輔)
基本的な内容は以下のWEB内容とほぼ同様参照:
- 研究会は今後
①コロナ後のツーリズム&インバウンド
②ガストロノミーツーリズム/ジオ(ヘルス)ツーリズム
③IR
④ツーリズムの異業種参入
⑤IOL(インバウンド・アウトバウンド・ループ)
⑥不動産投資
⑦人材育成 等 - 7月以降の研究会は後日連絡予定
2.ゲスト基調講話:人形町今半社長 高岡氏
サマリー
- 今半の沿革・歴史:社員数約1500人。飲食、精肉・惣菜、通販、宅配弁当(ケータリング)、グローサリー事業等の事業ポートフォリオを持つすき焼きをメインにした老舗。
- COVID-19の業績への影響 レストラン部門・ケータリング部門の大きな落ち込みと通販部門の急成長(数倍)。精肉・惣菜部門は横ばい。ポートフォリオにより業績差大
- 会社継続のための施策
①2月のタイミングで資金繰り対策開始:銀行に声がけ
②雇用調整助成金などの申請(3月分を5月2日提出・5月22日入金)
③社内リソースのシフト(閉店中の飲食店の人員を通販の配送作業に)
④飲食店におけるテイクアウト、酒類販売等
⑤家賃交渉 - 従業員への施策
①リソースシフト(飲食部を精肉・惣菜へ)
②雇用・給与の維持:店舗休止時も100%給与支給(6月からパートのみ80%)
③出社する社員・しない社員間のアンバランス感の調整:出社社員に500円/日支給
④オンラインでの各種教育実施
⑤マスク義務化・配布等様々な施策を実施 - 店舗再開時には顧客へのルール説明動画を作成、対応への理解を促進
- 今後の予測:COVID-19 後もテレワーク・時差出勤は定着と予想。同僚との飲み会・ランチなどが減少。時差出勤で仕事帰りの一杯も減少 → レストランは2極化①個人が気軽に行けるレストラン②特別な時に大切な人と一緒に会食を楽しむファインダイニング (日常を超える) → 人形町今半は地域一番店としてのポジションを目指す
- そのために人材育成が重要でワークライフ・バランスからライフの中にワークが含まれるという意識へ
- カリスマリーダーよりも、イワシの大群のようなリーダーがいなくても社員一人一人が自由に意見が言い合え、それぞれ承認しあえる環境へ
3.質疑
- 地域コミュニティとのかかわり:人形町今半は地域コミュニティを重要視。
- COVID-19の対応でやりすぎと感じることはないか:一番不安に感じるのは従業員。現場のやり方尊重で従業員からの提案は基本的には採用。一定の範囲で顧客に対応を選択してもらう。再開における今半の対応を4つのレベルに分けた(席稼働率50%以下~95%)が、これは現場提案をベース。こうしたレベル分けで状況対応がしやすくなった
- GOTOキャンペーン:基本的に期待している①人は3割引を超えると行動を大きく変えるので2割引では不足かも②時期・地域に集中すること(密になること)を避ける必要があると思うので、使用する時期・エリアを何らかの形で限定・コントロールするとよいのでは? ポイント制とのバランスも考える必要あり。
- 料理人の海外志向はどうなる:海外で腕をふるいたい料理人はいる。国内で需要をコントロールしなくてはいけない店にとって料理人が海外に行くことは調整にもなるかもしれない。
- 再開後の顧客層:常連客。フリー客はまだ。
- 今後の戦略:自社のポジション的には“特別な日・大事な日”に注力してゆきたい。 少子化故の子供の記念日等も。COVID-19 をきっかけに。
- COVID-19 への公衆安全面での対応は楽観的に見ている:医学的対応も進む。
- コンベンション・ケータリングの今後の対応:無理をせず嵐が過ぎるのを待つ要素も必要+可能な範囲でビジネスを提供する。ケータリング等では顧客の目に見える形で防疫体制を提示することも必要。