Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

教員とクラスメートからの徹底した個別フィードバックで、
発見型の学びを体験させる

2020年度春学期ティーチングアワード受賞
対象科目:学術的文章の作成とその指導 2 02クラス
受賞者:坂本 麻裕子

グローバルエデュケーションセンターには、全学部を対象にした

基盤教育を担うアカデミック・ライティング教育部門が設けられている。

そこで指導に当たる文章指導者(ティーチング・アシスタント)を育成するのが、

大学院生を対象にしたこの授業だ。4人の教員が同様のシラバスで授業を行う。

2020年度は教員同士で情報交換しながら、最終的には各教員が工夫してそれぞれの授業でオンライン化を実施した。

2020年度の本クラスのオンライン化でもっとも苦労したのは、通常の対面授業時の

ディスカッションで行っていた「発見型の学び」を再現することだったという。 

学ぶ順序を詳細に組み立て、手順書として提示する

授業をどのようにオンライン化するかについては、接続環境などの問題からリアルタイムでの参加が難しい学生がいたことから、全員が参加できる形式を重視。リアルタイム配信は顔合わせに一度利用しただけで、基本的にはオンデマンドで行った。講義資料や課題提示の文書をダウンロードして各自で学習し、指示された動画を視聴し、課題となる文章を書いて提出するという流れだ。

「ただ資料を読んだり動画を見たりして終わりにすることは避けたかったので、資料を読んで問題を解くなど自分で考えてから動画を見て答え合わせをし、さらにそれを自分の分野に応用することを考えて課題を書くというように、学ぶ順序を工夫しました」。その学びの進め方を学生自身が理解できるよう、各タスクの締め切りや所要時間も記した詳しい手順書を作成して毎週配布した。

学生同士で文章にコメントをつけ合い、広い視野を育んでいく

通常の対面授業時は、提出された課題の文章に教員がコメントをつけ返却し、それを見ながら教場でディスカッションを行うという進め方だった。今回そのディスカッションができない部分をどう再現するかを検討した結果、まず下書きをアップロードして学生同士でコメントをつけ合うというタスクを加え、それを踏まえて最終稿を仕上げるというプロセスにした。

以前から「他者との交流で発見しながら学んでいく」ということを大事にしてきた坂本准教授。「ライティングには正解がないので、文章指導者はさまざまなパターンの修正案を考えたうえで、文章の分野や書き手の意図によって、相手には今どんなアドバイスが必要なのかを考える必要があります。自分の得意な観点ばかりを指摘するのではなく、視野を広げることも重要です。他の学生の文章を読みコメントをつけ合う経験を経て、自分が見えていなかった部分に気づき、新たな視点を学べます」。

誰が誰の文章にコメントをつけるかは、あらかじめ教員側が提示しておく。「毎回組み合わせを変えて、12回の授業でなるべく異なる人からコメントがもらえるよう配慮しました」。

指導力の育成が目的のため、コメントのつけ方にも助言をする。「文章指導者を育成する時に見るべきポイントは、その文章の本質にかかわる問題に気づけているか。また、学んだ文章技術を効果的に使ってコメントできているかどうか」。

教場ではディスカッションの内容を直接聞き、その場で助言をしていた。オンラインでも全員のコメントに目を通していたが、介入のバランスが難しかったという。「すべての授業がオンラインになって課題も多く、学生はとても大変そうでした。コメントのつけ方から垣間見える学生の状況にも配慮しながら、余裕のありそうな人には個別にメールで細かいアドバイスをしたり、そうでない人には一般的傾向としてエッセンスを全員にむけて提示したりと、さじ加減には気を遣いました」。

個々の学習状況に気を配りながら、脱落しないようサポート

質問用掲示板も用意したが、公開を前提としていたためか個別にメールで聞いてくる学生が多かった。「個人的な相談はこちらへと連絡先も公開しておき、授業時間中はリアルタイムに返信できるよう、90分PCの前で待機していました。教場での質問と違って個別対応となった分、いつもより相談しやすかったようですが、有益な内容は他の学生にも共有したいので、その点はあらかじめ伝えておきました」。

掲示板に質問があった際には、教員が一般的な回答をしたうえで、他の学生の意見を募るよう呼びかけてみた。「多様な研究科の大学院生が集まっているこの場は、いろいろな分野でのライティングの特徴を話し合える絶好の機会です。呼びかけに応じていろいろ書いてくれた学生もいたので、オンラインでも工夫次第で対面でのディスカッションを再現することはできるという可能性を感じました」。

課題の最終稿には、3人のGEC助手(後藤大輔・嶼田大海・田部井滉平)の協力も仰ぎながらコメントを添えて、毎週個別にフィードバックした。コメントの文面は、今回は特に学生一人ひとりとコミュニケーションを取ることも意識したという。「励ます言葉を中心に書くようにしたところ、学生からは『おかげでモチベーションが上がった』という声も聞かれました。課題の提出時に、忙しかったり疲れていたりという本音が書き添えられていると、それを参考に随時対応を調整していけたのも良かったと思います」。

大学院生たちは専門の授業や研究もあり多忙である。毎週文章を書くという課題が出るこの授業の負担は大きい。しかし、途中で脱落する学生はこれまでもほとんどいないという。履修前には選考があるため、モチベーションの高い学生が集まっていることも想定されるが、その意欲に応える、教員側のきめ細かなサポートの効果も大きいに違いない。

文章指導者としての実績が就職活動でのアピール材料になりうるという事情から履修する学生もいるが、ほとんどの学生が誰かの役に立ちたいと考えて履修している。授業アンケートでは人に教えることで自分の学びを実感できたという満足度も高いという。

「コロナ禍で教員も学生も初めての完全オンライン化で大変でしたが、授業後、文章指導者として活躍している姿を見て、みんなの希望を達成できて良かったと安堵しています。指導者になるかどうかに関わらず、この授業で学んだことが、その先の人生で役に立つことを願っています」。

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