Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

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学生と教員がともに授業をつくる—SCOT学生トレーニングがスタート

2026年度より開始した、教員と大学院生が協働して授業開発を行うSCOT (Student Consulting on Teaching)プログラムの活動を行うSCOT学生のトレーニングを実施しました。

ご参考:教員と学生の協働による授業開発プログラム(SCOT)を開始しました

SCOT学生のトレーニングは、SCOT学生養成コースの受講生として選抜された、さまざまな研究科に所属する大学院生を対象として、SCOT活動の考え方、教員とのコミュニケーションの取り方(アサーティブコミュニケーション)、授業記録の取り方などを学びます。またそれらに加えて、実際の授業に参加してSCOTの体験を行うインターンシップも予定しています(10月頃実施予定)。

養成コースの受講者は、トレーニングや実際のSCOT活動の様子の広報についても自身たちで取り組んでいくことを求められており、第1回の研修に関する実施報告について、以下に掲載します。今後も継続して、SCOTのトレーニングや活動の様子について大総研ウェブサイトにてご紹介してまいります。


多様な参加動機を持つ大学院生が参加

第1回では、参加者が所属や参加動機を紹介しました。自己紹介からは、SCOTへの関心の持ち方が一つではなく、それぞれの経験や将来像に応じた異なる入口があることが分かりました。

参加者の中には、民間企業への就職を予定する一方、将来的に大学で講義を担当することにも関心を持つ学生がいました。この学生は、第三者の立場から授業を客観的に分析することや、インタビューを通じて得た示唆を授業改善に活用することに関心を持ち、SCOTに応募しました。民間でのキャリアを予定していても、将来の大学教育への関心や、分析・対話を通じて改善を支援するという問題意識が、参加の契機となっています。

また、長い教員経験を持ち、現在は教育関係の博士課程に在籍している参加者もいます。すでに教育に携わってきた経験と、現在取り組んでいる教育分野での学修を背景として、SCOT学生養成コースに参加しています。一方で、教員からSCOTを紹介されたことをきっかけに応募した参加者もいました。SCOTを知った経緯や、それまでの教育との関わり方は参加者によって異なります。

このように、参加者は、将来大学で教えることに関心を持つ学生に限られません。民間企業でのキャリアを予定する学生、教員経験を持つ学生、教員からの紹介をきっかけに応募した学生など、多様な背景を持つ大学院生が集まりました。それぞれの参加動機は異なりますが、学生や第三者の視点から授業を捉え、その情報を授業改善に役立てることへの関心が、SCOTという場を通じて交わっています。

「評価」ではなく、事実を観察する

オリエンテーションでは、SCOT学生の活動内容に加えて、その前提となる責任と基本姿勢を確認しました。とりわけ重視されたのは、SCOTの役割は授業を「評価」することではなく、教室内で起きた事実関係を正確に記録することだという点です。

授業を観察する際には、学生として抱いた印象や個人的な好みと、実際に確認できた出来事を区別する必要があります。たとえば、「説明が分かりにくかった」と判断するだけではなく、どの場面で、どのような説明が行われ、その際に学生がどのような行動を示していたのかを記録します。こうして得られた情報は、教員を一方的に批評するためではなく、教員自身が授業を振り返り、改善の可能性を検討するための材料となります。

また、SCOT学生は活動の中で知り得た個人情報や授業情報について守秘義務を負い、教室外で担当教員の授業方法などを評価することは認められていません。早稲田大学の学生として、建学の精神と教学理念を理解し、確かなスキルと誠実な態度のもとで教員と協働することが求められます。第1回は、観察技術を学ぶ前に、SCOTがどのような立場から授業に関わるのか、その境界と責任を共有する機会となりました。

あわせて、早稲田大学が重視する対話型、問題発見・解決型教育や、多様な授業形態についての説明も行われました。教員と学生、学生同士の対話や参加を重視する授業をどのように設計し、改善していくかを考えるうえでも、教室で実際に起きていることを丁寧に捉えるSCOTの役割は重要です。

(文責:青木 悠真)


小さな「とりまとめたい」から始まった ―第1回SCOTトレーニング―

「取りまとめ役を担当したい人はいますか」。役割分担の時間、問いかけのあとに沈黙が続き、しばらく誰からも返事がなかった。すると突然、控えめな声で「とりまとめたい」と申し出る参加者が現れた。その一言が、参加者によるSCOT活動の最初の一歩となった。

学生の視点から授業づくりを支援するSCOTプログラムの第1回トレーニングが行われた。初回となる今回は、SCOTの成り立ちと目的、具体的な活動内容、活動に伴う責任、今後のスケジュールについて説明があり、参加者同士の自己紹介と役割分担も行われた。SCOTの活動を知るだけでなく、参加者が今後の運営に向けて動き始める回となった。

SCOTは、学生と教員が連携して授業改善に取り組むプログラムであり、早稲田大学が推進する「学生参加」とも結びついている。主な活動は、授業の観察と記録、授業映像の確認、履修学生へのインタビュー、観察前後の教員との面談、観察結果のフィードバックなどである。必要に応じて教育実践研究(SoTL)への支援や参加も行い、学生の視点を授業づくりへつなげていく。

SCOTの原型となる取り組みは、ブリガム・ヤング大学など海外の大学で長く実践されてきた。トレーニングでは、その背景と発展についても説明があった。海外で蓄積された方法を参考にしながら、教育制度や授業文化の違いを踏まえ、早稲田大学の教育に適した形で実践していく。早稲田大学が掲げる「たくましい知性」と「しなやかな感性」、対話型授業やブレンド型授業などの特徴も、授業を観察する際の重要な背景となる。

今回のトレーニングで重点的に説明されたのが、授業観察における記録の方法である。SCOTの観察は、教員や授業を「評価」することを目的としない。教員がどのように働きかけたか、それに対して学生がどう反応したか、教室内でどのようなやり取りが起きたかを、できる限り具体的かつ正確に記録する。複雑な動きや関係を示す際には、文章だけでなく図表も活用できる。観察者の印象を並べるのではなく、教室で実際に起きたことを記録し、授業の姿を教員と共有できる形にすることが求められる。

トレーニングは全4回で構成され、第3回では授業観察のレポート作成、第4回ではインタビューのロールプレイを行う予定である。その後、参加者は10月のインターンシップに向けて準備を進める。また、授業支援に加え、SCOT活動の運営や広報も参加者が担っていく。第1回の最後に聞こえた小さな「とりまとめたい」という声は、学生自身がSCOTを動かしていく活動の始まりを象徴する一言となった。

(文責:李 想)


学生の目で授業を見つめ、より良い学びへ 早稲田大学初のSCOT学生育成へ 養成コース開始

自分の授業が、学生の目にはどう映っているのか。教員がその答えを探すのを、教室での観察と記録を通じて支える。そんな「SCOT学生」の活動が、早稲田大学で始まろうとしています。大学教育への学生参画を進める取り組みの一つとして、大学総合研究センターが2026年度に初めて導入し、その担い手となる大学院生を対象に養成コースを始めました。

「授業を『評価』するのではなく、教室で何が起きているかを正確に記録する」。7月13日、早稲田キャンパス7号館で開かれたSCOT学生養成コースの第1回で参加者にまず伝えられたのが、この役割です。経済学、商学、文学、人間科学、基幹理工学、社会科学などの研究科から応募・選考を経て参加した7人が、早稲田大学初のSCOT学生を目指してトレーニングに臨みました。

SCOTはStudents Consulting on Teachingの略で、「学生による授業コンサルテーション」を意味します。第1回では、大学総合研究センター副所長の井上史子教授が、SCOTは1980年代に米国ユタ州のブリガム・ヤング大学で開発され、北米を中心に広がってきたことを紹介しました。発祥校では、SCOT学生が授業の記録・観察、ビデオ撮影、受講生へのインタビュー、教育実践研究(SoTL)への支援・参加などを進めているとのことです。日本では、帝京大学や芝浦工業大学などでも実践されています。また、学生を教育のパートナーと捉える「Students as Partners(SAP)」の取り組みが世界的に広がっていることも紹介されました。

オリエンテーションでは参加学生7人が自己紹介。「教育工学の学びを実践で生かしたい」「大学で教える選択肢も考えたい」「客観的な情報を扱う経験を就職先でも生かしたい」など、多様な参加動機が語られました。関連して、早稲田大学が「Waseda Vision 150」で掲げる「対話型、問題発見・解決型教育の充実」「大学の教育・研究への積極的な学生参画の推進」等も確認し合いました。

養成コースを修了し、SCOT学生として任命されれば、学生ならではの目線を生かし、教員と協働してより良い授業の実現を目指します。協働を希望する教員の依頼を受け、まず事前面談で「授業のどこを見てほしいか」を確認します。そのうえで授業に入り、教員の行動範囲、発問や板書、グループ討論に使われた時間、学生の参加状況などを観察・記録します。必要に応じて教室内の動きなどを図示し、教員の希望に応じてビデオ撮影や受講生へのインタビューも行います。観察後はレポートを作成し、事後面談で教員に伝え、意見交換をします。

ティーチング・アシスタント(TA)のように授業運営を補助するのではなく、授業を「外側」から見る第三者の目と、現役学生としての感覚の双方を持つことがSCOTの特徴です。SCOT学生は、授業の評価はしません。教員が自ら授業を振り返るための材料を、教室内の観察・記録に基づき、できるだけ具体的に提供するのが役割です。

初回を終えて感じたのは、「学生の視点」は一つではないのだろう、ということです。同じ教室を見ても、専門や経験が異なれば、目に留まる場面や受け止め方も違ってくるでしょう。今後のトレーニングでは、そうした視点の違いを互いに照らし合わせながら、観察した事実と解釈を丁寧に分け、教員の授業改善に役立つ形で伝える力を身につけたいと思います。

今後は、自他を尊重した表現手法「アサーション」を軸としたコミュニケーションのトレーニング、授業観察レポートの作成、事前・事後面談のロールプレイを経て、秋学期にはインターンシップとして実際の授業観察と面談を体験します。学生の目から授業を見つめ、教員とともにより良い学びの場を考える。第1期生を目指す7人の学びが始まりました。

(文責:藤 えりか)

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