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「頂上」へ駆け上がれ!!! アシックス×早稲田 フェーズ 3 の疾走 ―共に挑み、共に強くなる 競走部と奪還する箱根駅伝の頂点―
Wed 06 Aug 25
Wed 06 Aug 25
2016 年から続く早稲田大学とアシックスの組織的連携は 2025 年度、フェーズ3(第三期)を迎えました。その連携の象徴的な存在として 2025 年 3 月、早稲田大学競走部がトレーニング強化を図る上で同社へ求めていた新作ランニングシューズ「EVORIDE SPEED 3(エボライドスピード 3)が発表されました。花田勝彦駅伝監督も待ち望んでいたという、画期的なランニングシューズ。練習で愛用している「山の名探偵」こと工藤慎作選手(スポーツ科学部3年)と、1年生ながら箱根駅伝 3 区・区間 3 位の好走を見せた山口竣平選手(スポーツ科学部2年)は、「エボライドスピード 3 と共に結果を残す」と意気込んでいます。
【アシックスと早稲田大学の組織的な連携協定】
フェーズ1 2016 年 2 月 1 日~2021 年 2 月 28 日
フェーズ2 2021 年3月 1 日~2025 年 3 月 31 日
フェーズ3 2025 年 4 月 1 日~2027 年 3 月 31 日

1.レースもこなせる練習用ノンカーボンシューズ

今年 3 月に東京・丸の内の「アシックスラン東京丸の内」で行われたエボライドスピード 3の発表イベント。工藤選手、山口選手ともに参加した花田監督は興奮気味に語りました。
「試合で履くカーボンシューズはあるのだけれども、練習で履くシューズがありませんでした。カーボンシューズに近い厚底で、カーボンが入っていなくてもスピードがでるという、本当にほしかったところにはまったシューズです」
カーボンシューズとは、陸上長距離トップアスリートでは履くことが常識となっている、厚底のランニングシューズ。ミッドソール(インソールとアウトソールの中間)にカーボンファイバープレート(炭素繊維板)が内蔵されたシューズのことです。このプレートが「バネのような働き」をすることで、走るときに前に進む推進力(反発力)が得られ、スピードと効率を大幅に向上させることができます。
花田監督は「競走部ではカーボンシューズと、プレートがないノンカーボンシューズを履き分けて練習しています。一番の理由は故障の予防ですね。カーボンシューズは非常に推進力がありますけれども、その分、足に負荷がかかります。試合ではリスクを背負いながら走りますけれど、負荷に耐えられる体を作ることが必要です。厚めでカーボンがないシューズをアシックスにお願いしていたところ、ずっと待ち望んでいた、すごくよいシューズができました。エボライドスピード 3 は、私も履かせていただいています」と、確かな手応えを感じている様子でした。

以前は全ての練習をカーボンシューズでこなしていた時期があったという競走部。しかし、推進力がある分、選手への負担が大きかったため、現在はノンカーボンシューズとカーボンシューズを、練習の途中で履き替えを行っています。
その効果について、花田監督は「例えば 1000m を 10 本走るときに、以前は 10 本全部をカーボンシューズで走ったり、ノンカーボンで走ったりしていたのですが、今は8本目まではノンカーボン、ラスト2本はカーボンに履き替えてレースと同じイメージで走ってみる、という方法ですね。これを 2023 年から始めて、結果が出るようになってきているという感じです」と語ります。
シューズを履き分けるトレーニングにこだわってきた花田監督。「特に私が最初に早稲田に来た時、選手の 3 分の2が怪我をしていたんです。そのうちの半分は骨折などの重い症状でした。2022 年に駅伝監督に就任した最初の年は、カーボンシューズを練習で使わない、ということから始めました。1 年ごとに変えていき、練習でも使うのだけれど、使うための筋力もつけましょうというトレーニングも始めました。そして、2024 年に入ってからですね。パワーを高めるためのウエイトトレーニング』を始めて、練習を進化させていく中で、ほぼ 1 年を通して怪我人がいないチーム状況を生むことができました。シューズの使い分けをして、体作りをしてきた中で、箱根を迎えた時に怪我人がゼロでしたので。地力を鍛えるという面では、ノンカーボンを履いたトレーニングを多く積むほうが良いと思っています」
2.「メタスピード」で、屈辱の0%からの復活

往路3位でゴールする早大の工藤慎作(共同通信)
2025 年 1 月 2 日の箱根駅伝で“山登り”5 区を走った工藤選手。アシックスのカーボンシューズ「メタスピード」を履いて山を駆け上がり区間 2 位を記録、早稲田大学往路3位の原動力となりました。1年生で初の箱根駅伝出走となった前年も 5 区区間6位を記録し、眼鏡をかけた風貌と名前が、人気アニメ『名探偵コナン』の主人公を彷彿させることから、「山の名探偵」の愛称で知られるようになりました。山口選手もメタスピードを履いて、1年生ながら3区区間3位の好走を見せました。この年、早稲田大学競走部は箱根駅伝出走 10 人中7名がメタスピードを履いて、総合3位まであと 10 秒に迫る 4 位という好成績を記録しました。
2021 年、早稲田大学とアシックスの連携協定「フェーズ2」が始まった年の箱根駅伝で、アシックスは全出場選手のシューズブランド別着用率が「0%」になるという屈辱を味わいました。その年、メタスピードを発売したアシックスは、2022 年の箱根駅伝から徐々に着用率を上げ、2024 年は「24.8%」で 2 位、2025 年も「25.7%」で 2 位となり、コロナ禍からの企業としての業績V字回復と共に、シューズブランドとしての復活を鮮明に印象づけました。
工藤選手と山口選手は、2024 年の夏合宿の頃からアシックスから提供された試作段階の「エボライドスピード 3」を履いて、練習に取り組んでいました。

工藤選手は語ります。「エボライドスピード 3 は、軽くてスピードも出やすいですし、ミッドソールが「FF BLAST PLUS(エフエフブラストプラス)」に変わったことで、疲れにくさも同時に生まれている。スピードを出しても疲労が少なく、そのために練習も継続ができるという、好循環に繋がっています」
軽くてクッション性が高く、反発性にも優れたアウトソールとインソールの中間クッションフォーム材「FF BLAST PLUS」。工藤選手は「カーボンプレートと違って、良い意味で出力し過ぎることがなく、そのため怪我の予防につながると思います。FF BLAST PLUS のクッションで疲労がたまりにくいので、質の高い練習を継続して 1 週間続けられるようなサイクルが生まれています。1000m を繰り返し走る、インターバルのスピードトレーニングで使っています。このまま使い続けたいですね」
箱根駅伝から 1 カ月後の 2 月2日に行われた日本学生ハーフマラソン選手権(学生ハーフ)を、工藤選手は自己記録を 40 秒更新する1時間0分 06 秒、日本学生歴代最高、日本歴代4位タイの記録で制しました。

一方、山口選手はシューズの履きわけについてこう語ります。「僕は感覚で走るタイプなので、(工藤)慎作さんみたいに詳細な説明はできませんが、レース用のメタスピードを含めて四足を履き回しています。ジョグ用として『ノヴァブラスト 5』、スピード練習や1キロ 3 分を切るくらいのぺースランニングであれば『エボライドスピード3』、本当に早いペース、2 分 50 秒を切るような練習では『ソーティーマジック RP 6』、レースでは『メタスピード』を使っています。エボライドスピード3は、幅広く使いたくて、もちろん 1000mのインターバルでも使っています」
山口選手はメンタル面での効果も力説します。「レースでは当然カーボンプレート入りのシューズなので、練習でノンカーボンシューズを履くことによって余裕が生まれてきますね。例えば多少きつくても『カーボンプレート入りのシューズを履いたら余裕だ』と思えるように、気持ちの面で楽になれます。それでレースを走りぬくことが出来るのではないか、と思っています。ただし、ノンカーボンシューズに慣れ過ぎないように注意はしています」

平塚中継所でたすきをつなぐ3区・山口竣平(左)と4区・長屋匡起。共にアシックスメタスピードで箱根路を駆け抜けた(共同通信)
5 足を履き分けているという工藤選手は「かなりスローなジョグの日には『ゲルニンバス』、少し速めの日には『ノヴァブラスト』、ペースランニングであったり長い距離を走る時は『スーパーブラスト』、ポイント練習やインターバル練習などスピードを出す練習では『エボライドスピード 3』、レースは『メタスピード』という感じですね」と、トレーニング内容に応じた選び方を丁寧に説明しました。
日々の練習で求める理想のシューズ。花田監督は「私もアシックスさんには、これまで結構厳しく言ってきました。試合で履くシューズはあるのだけれども、練習で履くシューズがないと。カーボンシューズに近いような厚さで、ノンカーボンでもスピードがでるシューズがほしいと。私も履いてみて驚いたのですが、エボライドスピード3は、幅広が多いカーボンシューズと異なってスマートになっています。靴の接地面積が狭くなるため、しっかりと地面を感覚的にとらえることができます。工藤や山口であれば、このシューズでレースペースに近い 1 キロ 2 分 50 秒まで上げられます」と語り、その口調からは“ようやく出会えた”という安堵と確信が感じられました。

カーボンシューズの登場で、近年一気に区間記録が更新された箱根駅伝。花田監督は「毎年どんどん記録が上がっています。私が現役だった時代の 2 区の記録だと、今年は区間最下位になりますから。選手たちがカーボンシューズを使いこなすことで、どんどん進化している、というのがあるのではないかと思います」と、記録の急速な進化に驚きます。そして「ノンカーボンシューズを履いてレースペースで走れるということは、カーボンシューズを履いたら、もう一段階上にいけるということになります。さらに一歩先へ進むための、レースシューズへのつなぎのシューズがエボライドスピード3。本当にほしかったところにはまったシューズです。ノンカーボンと、カーボンと、シューズを使いこなして、どこまで走ることができるか。今年のシーズンが本当に楽しみですね」と、期待と手応えを込めました。
3.箱根駅伝総合優勝、そして世界へ

2023 年春、アシックスはフランス・ピレネー山脈のフォン=ロムー(Font-Romeu)に、プロアスリート向け高地トレーニング施設「Chojo Camp Europe(頂上・キャンプ・ヨーロッパ)」を開設しました。「Chojo(頂上)」という名称は、頂点を目指すという意味で創業者・鬼塚喜八郎氏が新たなプロジェクトを語るときに好んで使った言葉です。
標高約 1,800 メートルの高地に位置し、新設の陸上トラック、低酸素トレーニング室、ウエイトトレーニングルーム、リカバリープールなどの最新鋭の設備のほか、理学療法士、心理学者、医師からなる専門スタッフによるサポート体制を備えています。まさに世界の頂点を目指すアシックスの契約選手をサポートする施設です。早稲田大学とアシックスの連携協定フェーズ3では、「Chojo Camp Europe」における競走部員のトレーニングも計画されています。
8月初め、花田監督は工藤・山口両選手を連れて、現地を視察しました。
今夜出発でフランスにあるアシックス頂上キャンプ地を視察に行ってきます!#ChojoCampEurope #SoundMindSoundBody#asics #早稲田大学競走部 pic.twitter.com/TMOWz5mbsH
— 花田勝彦 (@hanawin71) August 3, 2025

新しいシューズなどで練習が充実し、入部した有望な新人がすでに結果を出し始めている競走部は、「個」と「チーム」の強化を掲げたクラウドファンディングでも目標とする支援金額を達成しました。
「あと10秒早ければ、早稲田は総合3位になれた。何とか3位に食い込みたかったのですが、それは他大学もみんな目指してやっているところですから。チームとしては、工藤も山口も二人ともよくやってくれましたし、次の箱根駅伝につながる良い結果だったと思っています」。悔しさとともに幕を閉じた2025年の箱根駅伝を振り返る花田監督。「個人とチームの強化、私はうまく両立させて強くしていきたいと思っています。箱根駅伝に関しては、ようやく優勝という言葉を掲げてチームでチャレンジできる体制が整ってきました。出雲、全日本、箱根という三大駅伝は、今年に関しては優勝を目標に掲げながら、チャレンジしたいと思います」と、力強く語りました。
山口選手も意欲を見せます。「僕は今年箱根駅伝でチームが4位で、とても悔しい思いをしましたので、まずはチームとして箱根駅伝で優勝したいです。箱根駅伝にフォーカスした上で、自分も頑張りたいと思っているので、区間賞を目指して、このエボライド3と共に自分を鍛え上げていくことが大事だと思っています」

「真実はいつも一つ」。お馴染みのポーズでゴールテープを切る工藤(写真:競走部提供)
一方、工藤選手は「私個人としては、フルマラソンで結果を残すというところを一番の目標として1年間取り組んでいけたらと思っています」とマラソンにこだわったシーズンになりそうです。花田監督は「工藤に関しては、本当はこの冬にもマラソンを考えていました。しかし、もう一段階レベルを上げて、やるからに結果を残してほしいと思います。彼は『山の名探偵』ですから、来年の箱根駅伝でしっかり問題を解決してもらって、その後にマラソン問題も是非解決してほしいと思います」と期待をかけています。工藤選手は7月にドイツで行われるワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンに日本代表として出場し、金メダルを獲得しました。

アシックスはエボライドスピード 3 に続き、新作の「メタスピード トウキョウ」シリーズを発表。ライバルメーカーの新作フラッグシップモデルを凌駕する、約129g(27cm)という超軽量型厚底カーボンシューズ「METASPEED RAY(メタスピードレイ)」なども開発し、アスリートに寄り添ったシューズの改良を着実に推進しています。アシックスは2026年箱根駅伝で、シューズブランド別着用率ではシェア1位を目指しています。
早稲田大学とアシックスのフェーズ3。2016年から続く過去9年間の実績を土台に、共に「頂上」を目指す新たなプロジェクトが始まりました。
