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バレーボール部・大塚達宣が見据える「究極の高み」
Thu 14 Sep 23
Thu 14 Sep 23
バレーボール部・大塚達宣が見据える「究極の高み」
『早稲田スポーツ125周年記念誌』 Special Interview #7
東京2020オリンピックに出場した大塚達宣。早稲田大学バレーボール部で学生が五輪代表に選出されたのは史上初の快挙だった。さらに、現役学生初のVリーグ入団や早稲田初のインカレ5連覇など、前人未到に挑み続けるアタッカーが見据える究極の高みを聞いた。
※2022年11月競技スポーツセンター発行『早稲田スポーツ125周年記念誌』より転載

ネーションズリーグのような国際大会でも日本代表の中心選手として活躍する(共同通信)
代表やVリーグでの経験をバレー部に還元していきたい
東京五輪、Vリーグ参戦
刺激的で成長できた1年
──改めて、東京五輪の大舞台で感じたこと、学べたことはなんでしょうか?
大塚
東京五輪の開催が決まったのは僕が中学1年生のとき。年齢的には20歳になるころで、自分が自国開催の五輪に出場できる可能性はゼロではないと思い、そこを一つの目標としてがんばってきた部分はありました。やはり「五輪」という存在は自分たちもそうですし、海外の選手も目の色が違います。特別な舞台に賭ける想いの強さを感じることができました。その舞台でバレーボールができたことは、自分にとって本当に得難い経験となりました。
──代表に選ばれた要因、早稲田大学での成長を感じた部分は?
大塚
僕は高校生のときはまだヒョロヒョロで、ただ背が高いだけ。プレーの一つ一つにキレやパワーが足りませんでした。でも、大学に入ってバレー部でしっかりトレーニングを重ねた結果、体重は入学時に比べて10kg近くアップ。身体をしっかり使って強いボールを受け止めることができるようになり、力強いスパイクも打てるようになってきました。早稲田での日々の練習やさまざまな試合を通して成長できたことが、五輪代表入りという結果につながったのかなと思います。
──東京五輪後も大塚選手の名がまたニュースとなります。早稲田大学に籍を置いたまま、出身地である大阪の強豪、Vリーグ1部のパナソニックパンサーズに入団。現役大学生Vリーガーの誕生は、男子では初めてのことでした。
大塚
卒業の決まった内定選手ではなく、大学在学中にV1に出場したのは本当に初めての試みだったようです。それを快く受け入れて下さったパナソニックさんには感謝していますし、「行ってきていいよ」と送り出してくれた早稲田大学とバレー部のみんなにも感謝しています。やはり日本最高峰のリーグだけあって、音響をはじめとした会場の雰囲気もすごいですし、常に大学バレーの決勝戦のような緊張感でした。その意味ではタフな試合が多かったです。五輪から続けて刺激的な日々でした。
──ただ出るだけでなく、リーグ戦6試合でVOM(Vリーグ試合ごとのMVP)に選出。規定出場試合数未満でしたがアタック決定率(55.6%)は外国人選手も含めてトップを記録し、途中参戦にもかかわらず新人王受賞と偉業続きでした。
大塚
お試し感覚、お客さん感覚ではなく、「自分はこういう選手だ」とどんどん出していきたい気持ちがありました。今まで大学でやってきたこと、日本代表での経験を活かし、自分がやれることを全部やろうと。たくさんの先輩方や指導者からも話を聞いて吸収し、自分のものにできたからこそ、今回の結果につながったと思います。
──また、五輪後の日本代表では宮浦健人選手と村山豪選手(ともに2021年スポーツ科学部卒)という大学の先輩たちと共にプレーすることになりましたね。
大塚
宮浦さん・村山さんとは大学で2年間一緒にプレーさせてもらいました。卒業後も一緒にできる機会があればいいな、それは代表でしか叶わないだろうなと思っていたのが、こうして実現できた。それだけここ最近の早稲田バレー部が世界に通用する選手を輩出できるチームになってきた証です。今後、もっと下の代からも早稲田のメンバーが代表に選ばれるためにも、自分が代表やVリーグで吸収したものをしっかり言葉で、そしてプレーを通してもバレー部のみんなに還元していきたいですね。

高い打点から放つスパイクを武器に、初の現役大学生Vリーガーとしてもバレーボール界を席巻(パナソニックパンサーズ)

大塚は2021-22シーズンの最優秀新人賞を受賞した(パナソニックパンサーズ)
「結果よりも過程」からの学び
目指すは「五輪金」と「さらに上」
──2021年までにバレー部は全日本大学選手権(全日本インカレ)で5連覇を達成。近年の隆盛の要因は何でしょうか?
大塚
振り返ると、松井泰二監督(1991年人間科学部卒・スポーツ科学学術院教授)が監督に就任された2014年以降で一気に成績が伸び、優勝・準優勝・ベスト4に食い込むことが増えました。松井監督のバレーに対する考え方が部員一人一人にしっかり浸透しているからこそ、強くなっているのではないでしょうか。
──その「考え方」とは?
大塚
松井監督は「結果」にこだわらないんです。いつも「結果よりも過程を大事に」と仰っていて、逆に言えば過程さえしっかりしていれば自ずと勝利という結果につながるのが今の早稲田というチームです。
──そういった早稲田での学びは、それこそこの1年、日本代表やVリーグとさまざまなチームや環境に身を置いたことで気づいたこともあるのでは?
大塚
そうかもしれません。代表やVリーグはやはり「結果」が重要です。勝つことでメディアでの扱われ方も変わりますし、逆に負け続ければメディア露出も減り、バレーボールの魅力や人気、極端に言えば資金も減ってしまう。でも、大学では松井監督の考え方にもあるように「結果よりも過程」を大事にするし、それ以前にまず、「人としての在り方、生き方」を大事にします。そういったことは早稲田大学のこの環境だからこそ学べたことだと思います。
──ほかに、早稲田の日々で学んだこと、気づけたことはなんでしょうか?
大塚
もともと、セカンドキャリアでも長くスポーツと関わるために教員資格を取りたい、という希望もあって早稲田大学を志望しました。結果として、バレー部での人間関係だけでなく、教員免許取得のためにこの4年間で得た知識・経験も非常に大きなものがあります。人との接し方というか、例えば「この人にはもっとこういうアプローチをしたら伝わりやすいだろうな」と、相手を慮る考え方ができるようになりました。そういった学びも含め、すごく充実した学生生活を過ごせています。
──そんな早稲田での経験も生かし、大塚選手が見据えるこれからの目標は?
大塚
もちろん、2024年パリ五輪への意識は強くあります。東京五輪、ネーションズリーグとベスト8には入ることができましたが、ベスト4の壁の高さも実感しているので、まずはその壁を突破したい。そのためにも、もう一段階チーム全体でギアを上げられるような力をつけていきたいです。ただ、僕自身は五輪で金メダルを獲ったとしても、そこで選手として終わっていいとは思いません。まだ自分にはできることがある、もっと上に行けると思い続けるはず。そういう選手でありたいですね。
Profile
大塚達宣(おおつか・たつのり)2000年11月5日生まれ、大阪府出身。京都・洛南高校では高校選手権優勝を経験。2019年、早稲田大学スポーツ科学部に入学し、大学1年時の2020年に日本代表に初選出。翌年の東京五輪出場を果たし、その後も世界選手権などの国際大会で活躍中。2022年には大学に籍を置いたままV1パナソニックパンサーズに入団し、新人王を受賞。全日本インカレでは6連覇を目指している。スポーツ科学部4年。
取材・文:オグマナオト(2002年第二文学部卒)

早稲田アリーナに立つ大塚(撮影:石垣星児)