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部員 14 人の早実は、なぜ春高バレー東京代表になれたのか

【高大連携強化企画】早実高男子バレー部 春高予選特集 完結編

春高本戦出場を決めて「W」マークを作って記念撮影する早実バレーボール部

全日本バレーボール高校選手権(春高バレー)の東京代表となった早稲田実業学校(早実)男子バレー部。11 月 13 日に行われた東京都予選代表決定戦では、準決勝で絶対王者・駿台学園と戦い、セットカウント 0-2(20-25、13-25)で敗戦した。しかし、残り1枠をかけた 3 位決定戦で安田学園にセットカウント 2-0(25-23、25-16)で勝利。早実は 2023年1 月4 日から開幕する全日本バレーボール高校選手権(春高)への出場を決めた。例年、部員数は 10 人前後で、昨年は 3 位決定戦で敗れて春高出場が叶わなかったが、毎年のように本戦出場を目指す戦いを展開できている早実。少数精鋭で勝ち進める秘密は何なのか、探った。早実は1月4日、春高バレー1回戦で宮崎代表・都城工と対戦する。

記事・写真 五十嵐香音(学生スタッフ・政治経済学部2年)

王者・駿台学園戦「なんとしても春高」に向けた戦略的戦い

昨年はこの準決勝で勝ちきり、2 位通過を狙う戦略であった。しかし、今年は絶対王者・駿台学園が相手である。なんとしても春高出場を遂げたい早実は 3 位決定戦にて全力で勝負したい、難しい一戦。第1セットは思いがけず競る展開となった。相手のミスも多く、中盤で 14-12 と先行していたが、後半の逆転でセットを取られた。第2セットは早実の初得点が新井琉之介(3 年)のブロックポイントとなった。しかし、第1セットで競った分、想定よりも新井の打数が多かった。綿引監督は、トレーナーと相談の末、早い段階でベンチに下げることを決断。これにより、第2セットを大差で取られ敗戦したものの、3 位決定戦に備えて体力を温存できた。

第 3 代表決定戦で見せたエース・新井の覚悟

スパイクするエース・新井

3 枠目の開催地代表をかけた 3 位決定戦。早実は何度もこの舞台で辛酸をなめてきた。安田学園は終始徹底して新井をサーブで狙い封じようとする。一次予選ではこの戦略により、ことごとく得点のチャンスをつぶされていた新井。しかしこの日はエースとしての風格と覚悟が垣間見え、サーブレシーブで膝をつきながらも助走に入り、自ら決めきる姿が印象的であった。監督から頂戴したデータによると、相手サーブの 73%以上を新井が取っていた。「相手のサーブの威力まではデータに取っていないので、一概に良い悪いとは言えない(綿引監督)」とのことだが、その返球率(成功率)は 75%という驚きの数字であった。夏から一次予選までの期間、国体で技術を磨いてチームに還元し、守備面での成長も見せた新井。「大事な場面で返らないことがあったのでしっかり練習していきたい」と述べ、トップクラスのアウトサイドヒッターになるため、更なる飛躍を誓った。

生きたアナリストのデータ

得点が決まって喜ぶ会町主将(2番)

第 1 セットを 25-23 で取った早実。第2セットは、早実の守備が整った。一次予選で露呈したミドルからの攻撃に対する脆弱さ。これを克服するためにはミドルからの攻撃を使わせないことが重要であったが、セッター・佐藤悠聖(2年)のサーブが走っていたことで相手がサイドに頼りがちになった。ここで、アナリストのデータが生きた。「相手レフトからの攻撃がクロス方向に多いことがデータに出ていました。なので2セット目に序盤に指示を出していて、11-11 の場面からの8連続得点につながったんです(綿引監督)。」点差を広げた早実は、会町幸多朗主将(3 年)のサービスエースでマッチポイントを握ると、最後は新井がサーブレシーブをし、自らバックアタックを決めて 25-16、春高出場の切符をつかんだ。

本選は全国の強豪たちが相手になる。「3位で春高に出られるのは東京だけ。謙虚な気持ちを持ちながら、最初から攻め気をもって戦う。」監督や選手たちの共通認識だ。枠が3あるからと言って、彼らが一番下ということはないと思う。ただ、例年春高に出場して勝ちあがるのが難しいことも事実だ。しかし、まだまだ猶予はある。春高の大舞台で躍動する臙脂のユニフォームが見られることに、胸が高まるばかりだ。

主将の成長と二人のベンチスタッフ

松平アナリスト(写真左)、内田コーチ(中央)、綿引監督

今年主将としてチームを率いるミドルブロッカー・会町。昨年まではセッターを務めたが、今年の夏から突然のコンバートとなった。「最初は切り替えが難しかったですが、練習や練習試合を重ねていくうちに慣れていくことが出来ました。」と語る。試合に出るメンバーの適材適所を考えた結果、昨年の主将であったミドルブロッカーが抜けた穴をどう埋めるかが問題であったためだ。会町は、佐藤がファーストタッチをした場面ではトスアップができるアドバンテージがある。また、主将である彼がコートにいることによって、チームが精神的に安定するという。

「例年より人数が多い」というのは、チームの利点ではあるが、主将の彼にとっては苦労もあった。今年のチーム構成は3人の 3 年生に対し、下級生が 11 人と圧倒的多数。「最初は 1 年生に目を配れなかったり、練習が間延びしてしまったりと考えることが多く、色々な場面で悩むことが多かったです。」
様々な苦悩を乗り越えた会町。これからどうするのかは彼次第だが、まずは3年間の集大成、春高の大舞台に向け、もう一度チームをリスタートさせる。

今回ベンチに登録されていた2人のスタッフを紹介したい。内田大希コーチは、神奈川県の弥栄高校出身。現役のころから何度も早実と練習試合をしており、綿引監督の目に留まった。そして今年の4月から、非常勤講師として早実で教鞭をとりながら、バレー部でも指導している。試合前練習では自らスパイクに跳び、球出しを行うなどパワフル。選手たちとは年が近く、「うっちー」と親しみを込めて呼ばれており、厳しい綿引監督と選手の橋渡し役として、良い雰囲気を作り出している。ただ、指示出し・声掛けや、試合後のコメントは的確で冷静。「駒大高戦では、タイムアウト中の彼の指示がなければ勝てていなかった。彼が来てくれたことはとても大きいです(綿引監督)」

試合を決めた第 2 セットで分析が冴えた早実バレー部 OG の松平若葉アナリストは、現役引退後も部を支えている。彼女も昨年の悔しい敗戦を経験した一人。「昨年は、試合後に琉之介君が泣きながら『来年は絶対に連れていきます』って言ってくれたのが印象的でした。その通りになったなと思って。本当にうれしいです」

早大バレー部員との練習で得たもの

ゲーム形式の合同練習を行った早実(手前)、早大

第 2 セットの終盤、勝利を決定づけた連続得点の背景にあったのは、アナリストのデータが一つ。もう一つ、夏に早稲田大学バレーボール部と練習をしたことが成果に出ているたという。外のボールに対し、しっかりと「基準点」をつくり、相手のコースをふさぐ。リードブロックを徹底し、慌てずゆっくり跳ぶ。この教えが活きた。

さらに、「実は…」と綿引監督が語るには、代表決定戦の直前に心強い味方が練習に参加していた。早実出身の選手に加え、早稲田大学バレーボール部の水町泰杜(スポーツ科学部3 年)、荒尾怜音(同 3 年)、伊藤吏玖(同3年)といった世代を代表する選手たちだ。「左利きの対策がしたかったので、赤坂侑哉(教育学部1年)を呼んで欲しいと声を掛けたのがきっかけです。あとは布台(駿、社会科学部3年)がいろんな人たちを連れてきてくれた感じですね。(綿引監督)」

ゲーム形式の練習の相手になってくれたそうだが、選手たちは具体的なアドバイスももらっていた。新井は水町にハイボールのコース選択やレセプションアタックの仕方を、リベロ・本多心(1年)は荒尾にサーブキャッチの際の脱力をそれぞれ教わった。

早実バレー部員に指導する早大・松井監督

夏と同様、12月中旬に行われた合同練習では、松井泰二監督(早大バレー部)が早実の選手を直接指導。再度、ブロックの跳び方の確認を行った。大学生と練習することで、基礎のレベルの高さや、ひとつひとつの動作の速さも目の当たりにした早実。系属校だからこそできる早大との練習で、より多くを吸収し春高に臨む。

【高大連携強化企画】早実高男子バレー部 春高予選特集

 

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