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2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて 奥野 景介(おくの けいすけ)/早稲田大学スポーツ科学学術院教授

2020年東京オリンピック・パラリンピックに向けて

2020年に東京オリンピック・パラリンピックの開催が決まり、わが国でもそれに向けた様々な取り組みが行われようとしています。競技力を向上させるコーチングの現場では、この生涯最大のイベントで成果を挙げるべく多方面からアプローチを試みています。
「オリンピックで成果を挙げることとは客観的な評価としてメダルを獲得することであるが、そのためには経験が必要である」といわれています。2020年東京大会での成果を確実にするには2016年のリオデジャネイロ大会に出場し、オリンピックでの戦いを経験することが重要なのです。それは日本で過去にメダルを獲得した選手のキャリアを見ればわかると思います。
そのため2016年は2020年を考える上でも重要な年になるといえるでしょう。2015年の今、どのように進めていけばよいのかを考えると、自分の現状を知り、目標を設定し、種々のプロセスを経て、それを定められた期日までに達成することにあります。

自分を知ることとは

自分を知ることとは、競技の場面において自分のパフォーマンスを客観的に分析することです。私は競泳のコーチングに携わっていますが、競泳のレースはいくつかの局面に分類されます。それらはスタートから15m地点までのスタート局面、ターン前後のターン局面、ゴール5m前のフィニッシュ局面、そしてそれ以外の実際に泳いでいるストローク局面に分けられます。競泳は競技記録の短縮が課題となりますので、上述した各局面の所要時間をいかに短縮するかを課題において取り組みます。例えばスタート局面を短縮するにはスタート台上での動作、発揮する力、抵抗を少なく入水するための姿勢などが着眼点となります。それぞれに課題を設定し、どのように改善・向上すれば所要時間を短縮できるかを考えることになります。また、ストローク局面では技術的な要素と体力的な要素を課題におき、トレーニング内容に反映させます。技術的な課題は2つあります。1つは推進力をより大きくすること、もう1つは抵抗をできるだけ少なくすることです。これらを選手の身体的な特徴とこれまでの過程を踏まえて、よりよい泳ぎに洗練させていくのです。一方、体力的な課題は競技の所要時間によります。最も短い50m種目では約20秒、最も長い1500m種目では15分となっており、目標とするレースの距離および所要時間によって必要とされる体力が定まります。しかしながら、陸上競技の100m走のように10秒以内でレースが行われるわけではないため、より速く泳ぐというスピードの向上は重要な課題になりますが、それを持続させることも課題になりうるということです。したがいまして、体力的な課題に取り組むトレーニングは有酸素性能力と無酸素性能力の双方を向上させることが不可欠となり、いわゆる「全面性(バランスよく、偏りのない)」を考慮した内容で実施しています。

しかし、筋力を向上させ、技術を高め、体力を増強させることでトップレベルに到達できるかというと一概にはいえません。それは、レース時には緊張しますし、日々のトレーニングでも毎日毎回を常に意欲的にできるかというと気の乗らない日もあると思いますので、これをいかに取り組んでいくのかが重要ではないかと思っています。そのためには目標設定が重要だと思っています。これはなんとなく達成したい目標ではなく、自分が絶対に達成したい目標であることが重要です。目標は簡単に達成できるものよりも自分が必死で努力して取り組み、かつ試合の時に最高のパフォーマンスを発揮できたとしても達成できる確率は50/50ぐらいがよいようです。このように自分にとってギリギリのレベルの目標はいわゆるやる気を生むといわれていますので、明確で的確な目標の設定がいかに重要かを日々感じています。

どのように目標設定するのか

明確で具体的な目標を設定する上でスポーツ科学は重要な役割を果たすと思っています。体力、技術、筋力など選手のパフォーマンスをデータで示すことで、評価することや目標とする数値を具体的に定めることが可能となるからです。そして、定めた目標を必ず達成するという意識で取り組むことがスポーツの場面だけでなく、人生を送る上でも貴重な経験となり、また後世に伝えられる価値ある行動と思うのです。

スポーツにおける目標は単に競技成績や成果の目標ではありますが、その目標に到達することで、どのような目的を達成するのかがもっと大切だと思いますし、スポーツを通じたいろんな経験が人生を豊かにしてくれるのだと思っています。そのような過程を学生の皆さんにも経験してほしいし、みなさんが、将来、指導者となり、子どもたちにスポーツの素晴らしさを伝えられるようになってほしいと願っています。

写真:世界水泳会場で現地の方を囲む、WASEDAのトビウオたち

写真:世界水泳会場で現地の方を囲む、WASEDAのトビウオたち

執筆者プロフィール

15d65067302ece26d87a92457d03fea996110奥野景介(スポーツ科学学術院教授/早稲田大学水泳部総監督)。1965年生まれ 岡山県倉敷市出身。

学歴
早稲田大学教育学部教育学科体育学専修卒業、順天堂大学大学院体育学研究科コーチ学専攻修了(体育学修士)。
職歴
順天堂大学体育学部助手、早稲田中学高等学校教諭、防衛大学校助・講師・助教授を経て、2002年早稲田大学人間科学部助教授として着任。現在、早稲田大学スポーツ科学学術院教授。
指導歴
早稲田大学水泳部競泳部門監督、総監督(現在に至る)。
連盟・協会等:日本オリンピック委員会強化スタッフ スポーツコーチ(現在に至る)、公益財団法人日本水泳連盟 競泳委員会委員(現在に至る)。

主な競技実績

  • 1984年(大1)ロスアンゼルス五輪(400m自由形、800mリレー)
  • 1985年(大2)ユニバーシアード大会(神戸)、パンパシフィック大会(東京)
  • 1986年(大3)アジア大会(ソウル)
  • 1987年(大4)ユニバーシアード大会(ユーゴスラビア)、パンパシフィック大会(ブリスベン)

主な指導実績

  • 2008年 北京オリンピック競泳日本代表コーチ
  • 2009年 ユニバーシアード大会競泳ヘッドコーチ、世界水泳日本代表コーチ
  • 2013年 東アジア大会競泳日本代表コーチ
  • 2014年 世界選手権(25m)日本代表コーチ
  • 2015年 世界選手権日本代表コーチ
  • 2015年 男子100m自由形日本新記録樹立(中村克選手・48秒41)
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