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健康管理(コンディショニング)の3本柱/坂本 静男(スポーツ科学学術院教授)

健康管理(コンディショニング)の3本柱

一般人の健康管理やスポーツ選手でのコンディショニングでの重要な3本柱(3要素)は、「運動」、「栄養」および「休養」です。この3本柱が高く、バランスが取れていて、はじめて良い健康状態やコンディションが得られることになります。

一般人に必要なもの

一般人では睡眠、リラクゼーション、旅行などの“休養”、適切な栄養バランスかどうかは疑問だが摂取カロリー量は十分な“栄養”はほぼ満足といえますが、多くの一般人では“運動”が非常に不足していると考えられています。10年程前に厚生労働省で推奨された歩行量1万歩/日を確保している者はごくわずかであり、男性の平均1日歩数は8千歩未満の状況です。そして定期的に運動実践(3日/週以上)している一般人は10数%程度、1日/週以上としても40%未満と報告されています。これらのことが影響し、一般人では生活習慣病、なかんずくメタボリックシンドロームが多いと考えられています。メタボリックシンドロームの診断基準は、内臓脂肪型肥満が存在し(正確には内臓脂肪面積をCTスキャンやMRIで証明する必要がありますが、簡易的には腹部周囲径(腹囲)が大きいことで判定されます)、その上で血圧高値(収縮期血圧 and/or 拡張期血圧)、脂質異常(中性脂肪高値and/or HDL-コレステロール低値)、空腹時血糖高値のうち2項目以上当てはまる場合とされています。そしてメタボリックシンドロームの予防・改善のためには、軽度食事制限(たとえば腹八分目)および定期的な運動実践(たとえば1日おきに30~60分間の中等度強度の有酸素運動)が有用だと考えられ、推奨されています。

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競技スポーツ選手に必要なもの

逆にスポーツ選手、特に競技スポーツ選手では、運動量は過剰なことが多く、その運動量に見合っただけの適切な栄養摂取が取れていることが少なく、また睡眠を代表とする休養(その他入浴、マッサージ、練習休養日など)も不足していることが多いと考えられています。このようなスポーツ選手の生活習慣のバランスの悪さが影響しているためか、スポーツ選手を主に診療対象としている病院やクリニックには、貧血やオーバートレーニング症候群(いわゆる慢性疲労症候群)に陥っているスポーツ選手が多く受診していることが判明しています。特に競技スポーツ選手の健康診断では、鉄欠乏性貧血や慢性疲労状態(オーバートレーニング症候群までには至っていないが)に陥っている選手が多く発見されます。特にアマチュア選手では、学業や就業のために睡眠を含めた休養時間を十分にとることが難しく、経済的な面や練習時間などの影響などから十分な栄養摂取が難しくなっています。それゆえ練習日程作成の際に、週に1日は完全休養日を設定し、週に1日は専門外の運動種目でコンディショニング程度の運動内容に留めることが、最低限の工夫として推奨されています。また毎日7~8時間の睡眠時間を確保することも、推奨されています。疲労蓄積を早期に発見する上では、起床時安静時心拍数、体重、体温などを毎朝測定し、心理テストの一種であるPOMS( Profile of Mood State )testを適宜実施し、結果を評価判定していくことが有益です。栄養摂取の面から競技スポーツ選手をみると、多くの研究者から1日3食の食事ではエネルギー摂取量自体不足しているとの報告が多いです。3食では不足してしまうエネルギー量を、いわゆる間食で補充していると推測されています。間食では脂質や糖質に偏った栄養摂取内容になってしまい、バランスの良い食事摂取内容にはなりがたいと考えられています。貧血予防・改善のためには必ずタンパク質や鉄分の十分な摂取が必要であり、動物性食品(牛肉、豚肉、鶏肉、魚)や緑黄色野菜(ホウレンソウ、ピーマンなど)を十分に摂取することが必要欠くべからざることになります。また水分摂取(電解質も含めて)も熱中症予防に関してばかりでなく、スポーツ選手のパフォーマンスを確保するために必要なことです。練習中や試合中でも、こまめに休養を取りながら水分摂取(電解質も含めて)を行うことが重要です。

最後にもう一度再確認の意味合いから記述します。一般人はもっともっと、運動しましょう。1日あたり10分間でもよいので、多く歩くようにしましょう。スポーツ選手は、もう少し完全練習休養日を設けましょう。週に1日でもよいので、少しでも多く休養をとりましょう。そして1日3食十分に摂り、動物性食品や緑黄色野菜をもっともっと多く摂るようにしましょう。このように実践することで、確実に健康管理(コンディショニング)はうまくいくことになります。

執筆者プロフィール

sakamoto坂本静男/早稲田大学スポーツ科学学術院教授
学歴;1976年3月弘前大学医学部卒業
職歴:関東逓信病院循環器内科兼健康管理科医師、国際武道大学体育学部教授、順天堂大学浦安病院内科(健康・スポーツ診療)講師を歴任、早稲田大学スポーツ科学学術院教授 現在に至る。
所属学会:日本体力医学会(理事)、日本運動療法学会(理事)、日本介護福祉・健康づくり学会(理事)、日本臨床スポーツ医学会(理事)、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本内科学会、日本心電学会ほか
資格:1976年6月医師免許証取得、1984年日本体育協会公認スポーツドクター取得、1991年3月医学博士号取得(聖マリアンナ医科大学第2内科学講座)
役職(スポーツ関連):アジアスポーツ医学連盟理事、日本ハンドボール協会アンチ・ドーピング特別委員会委員長、アジアハンドボール連盟医事委員長、国際ハンドボール連盟医事委員、日本ノルディック・ウォーキング協会理事長

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