
2008年1月、大学4年のときに3度目の大学日本一を決め、トロフィーを手に喜ぶ五郎丸選手(左から2人目)=共同通信
今季限りでの現役引退を表明したラグビー元日本代表の五郎丸歩選手(ヤマハ発動機=2008年スポーツ科学部卒)。12月16日に浜松市内で行われた記者会見では、早稲田大学時代を振り返り、プレースキックを蹴る際に両手を組み精神を統一させる「五郎丸ポーズ」の原点についても語りました。
2004年度~2007年度にかけて早稲田大学に在学した五郎丸選手は、1年生のときからラグビー蹴球部のレギュラーFBとして活躍し、4年間で3度大学日本一を経験するなど、早稲田ラグビーの黄金期を支えました。
2015年にイングランドで開催されたワールドカップでは、エディ・ジョーンズヘッドコーチ率いる日本代表の中心選手として、1大会で58得点を挙げる活躍をしました。日本の総得点98のうち約6割を叩き出した五郎丸選手は、大会ベストフィフティーンにも選出され、一躍時の人となって日本ラグビーを象徴するような存在となりました。
22歳でプロ契約を結んだときに決めていたという35歳での引退。稀代のキッカーとして得点を積み重ね、日本代表テストマッチ通算は歴代1位の711得点で、2位の422得点を大きく引き離し、またトップリーグ通算得点も1254点で歴代1位。記憶にも記録にも残る日本ラグビー界の至宝は、2021年1月16日に開幕するトップリーグで、最後の勇姿を見せます。

元イングランド代表のジョニー・ウィルキンソン氏(ASCAL GUYOT/AFP)と五郎丸歩選手(共同通信)
引退会見 一問一答 「五郎丸ポーズ」の原点は上井草でのウィルキンソン教室にあり
―早稲田大学時代、一番思い出に残っていること

2006年2月、日本選手権で社会人の強豪トヨタ自動車を破り、喜びを爆発させるラグビー蹴球部(共同通信)
「難しいんですよね、一番を選ぶというのは。早稲田大学に入学するまでは日本一というタイトルを経験したことがなく、まずは大学1年で初めて日本一を取ったあの瞬間というのは、非常に特別な瞬間でした。またその翌年の日本選手権で、社会人リーグのトヨタ自動車に勝ったことというのは、あのワールドカップ2015年に大きくつながっていると思います」
―イングランド代表だったジョニー・ウィルキンソンさん(※)が来日したときに直接指導を受けて

2004年7月、ラグビー蹴球部員にキックを指導する、当時イングランド代表のウィルキンソン氏を見つめる五郎丸選手(右から2番目)
「大学1年の時でしたけれども、ワールドカップで大活躍した直後にウィルキンソンさんから指導していただいたということは、私のラグビー人生で本当に大きな、素晴らしい機会を持たせていただいたなと思います。ウィルキンソンさんのポーズに非常に似ているという風に言われますけども、そんなことよりも『世界のトップの選手たちがここまでキックにこだわってプレーをするんだ』ということを、自分の眼で見られたことで、キックに対しての姿勢も大きく変わりました。本当に素晴らしい刺激をいただいたと感じます」
※2003年のワールドカップで最多得点選手に輝き、イングランドを優勝に導いた。
◆当時のラグビー蹴球部ブログ記事「我等がジョニー・ウィルキンソン『名誉コーチ』はスゴすぎです!」
―2022年のワールドカップに向けて

浜松市内で引退について会見する五郎丸選手
「2022年のワールドカップに期待することですけれども、もう対戦相手(※)も決まりましたし、何かの縁でエディ・ジョーンズヘッドコーチ率いるイングランドと対戦が決まったということは、宿命というものを感じます。ラグビーが生まれたイングランドという素晴らしい国に勝利することで、また日本のラグビーの価値、スポーツの価値というものが高まっていくと思いますので、そこを最大のターゲットとして後輩たちには頑張ってほしいなと思います」
※)1次リーグのグループDで、日本はイングランドやアルゼンチンなどと対戦する。
―ラグビーを頑張っている子どもたちへのメッセージを
「日本のラグビーというのは、本当にここ数年で大きく変わってきました。私が小さいときに見ていた日本代表よりもはるかに、強くなってきましたし、選手個人としましても松島幸太郎選手や姫野和樹選手、そういった選手たちが海外に出て活躍しています。これは私が小さい頃には考えられなかったことです。またチームとしては、2019年のワールドカップで初のベスト8に辿り着いたり、本当に日本のラグビー界というのは、年々世界レベルに上がっていると思っております。そういった高い目標を現役のトップの選手たちが今、示してくれています。そういった選手たちに負けないように、そしてそういった選手たちを追い抜くように、日々努力していってほしいなと思います」