生きた国際経済法に触れてもらい、一人でも多くこの分野のプロを増やしたい
エクスターンシップ受け入れ先経済産業省通商機構部 国際経済紛争対策室
冷戦構造終結以来、グローバル化が急速に進展する中、貿易立国である日本のビジネス界が円滑に国際的な経済活動を行える環境を確保することは極めて重要です。経済産業省通商機構部の国際経済紛争対策室では、他国の不公正な貿易措置によりわが国の産業界が不利益を被っている案件について、政府間交渉やWTOの紛争解決機関での司法的なプロセスを通じた解決を図っています。こうした通商紛争に対応するような業務には、国際感覚とリーガルマインドが必要であり、当室には裁判官や弁護士をはじめとする専門家が複数在籍しています。
当室でエクスターンシップを行う学生の皆さんには、現時点で日本の産業界が不利益を被っている海外政府の貿易上の措置について、WTO・FTAといった国際的な通商協定に整合的であるかを考え議論を交わし、過去にWTO紛争解決機関において採択されたパネル・上級委員会報告書(英語の判例)をまとめる、などの業務を担当していただいています。早稲田大学大学院法務研究科からは、これまでに3名の方々がエクスターンシップを経験されましたが、皆さんは明確な目的意識と旺盛な知識欲を持って業務に従事され、2週間という短い研修期間ながら、それぞれ今後のキャリア形成の糧となる貴重な経験をすることができた、という感想を伺っています。また皆さんは、いずれも法律や経済の分野でユニークなバックグラウンドをお持ちの方々であったことから、受け入れ元である私たちも、皆さんとの交流を通じて大いに刺激を受けることができました。
政府による通商政策の遂行、あるいは産業界による国際的な事業展開においては、それらをリーガルな面から支援する専門家の存在が欠かせませんが、残念ながらわが国においてはそのような法律の専門家が不足しており、また、その育成も十分に行われていないのが現状です。そこで、私たちは本エクスターンシップを通じて学生の皆さんに「生きた」国際経済法に触れる機会を提供することで、一人でも多くの皆さんにこの分野に対する法律家としての関心をもっていただきたいと考えています。将来、当部で研修を経験された方々の中から、国際的な視野をもって活躍される通商法のプロフェッショナルが輩出されることを願ってやみません。