当研究科修了の先輩だからこそできる、既修・未修の後輩に対する親身な学修サポート
法律の学修や司法試験への準備において、学生の迷いやプレッシャーは尽きることがありません。
早稲田ロースクールでは、「アカデミック・アドバイザリー制度」を通して、学修のフォローアップをはじめ、現役で活躍されている実務家の経験を元にした日々の勉強法など、細部に渡るアドバイスをおこなっています。 そこでこの制度の持つ意義や可能性を、学生とAAの双方の立場から語っていただきました。
学生にとってAA制度とは
光石:本日はよろしくお願いします。アカデミック・アドバイザー(以下AA)の光石と申します。現在、AAは、修習を終えたこのロースクールの先輩弁護士たち約50名を中心として、構成されています。具体的には、個別相談ブースでの学修相談や、1年次には法律初学者向けのゼミ、2年次には民法や法学既修者向けのゼミを行い、3年次には事例問題検討ゼミなどを開催してきました。学修のサポートをするだけでなく、普段の勉強方法や勉強に対する悩みなどの相談もフォローしています。ちなみに私は未修で早稲田のこちらのロースクールに入学しました。去年からAAを始めて、現在は1年次のゼミと3年生・特別研修生向けの講義、ブース対応等を行っています。では、まずはみなさんの自己紹介からお願いします。
渥美:私も未修で入りまして、AAは今年で3年目になります。もともと法学部を出ていますが、大学時代はまったくといっていいほど法律の勉強をしていませんでした。社会人の経験もしているので、私のようなタイプの方がロースクールでどのように勉強すればいいのかを、アドバイスできればいいなと思い、AAを始めました。
長谷:私は大学を卒業後、4年ほど働いて、ロースクールに入学しました。いわゆる純粋未修者という観点からのお話しができればと思っています。
小野山:私は大学で歴史学を学び、一度社会人を経験してから大学院で歴史学を学んで、こちらに純粋未修で入りました。現在、2年次です。
水島:私は昨年、既修者としてこちらに入りました。
内田:私は現在3年次で、早稲田大学法学部から未修で入りました。法学部にいながら法律の勉強をしてこなかったのですが、法学部出身者は「なんとなく法律を知っている」というのが、逆に弱点になることをロースクールで学びましたね。
光石:純粋未修の長谷さんにとってAAはどのように役立ちましたか?
長谷:右も左もわからない状態で入ったので、AA制度には、非常に助けられました。たとえば、日常の授業でその科目のことは学べるのですが、法律文書の書き方や勉強方法などを教えていただく機会があまり多くありません。AAゼミでは、法律文書の書き方を教えていただく機会が多く、非常に有意義でした。さらに、「長谷さんならこういう勉強方法がいいですよ」など個別に相談に乗っていただきました。あと、定期試験の1週間前にAAの方から連絡があり、残りの時間の過ごし方、励ましや応援の言葉をいただき、これには感激しましたし、勇気づけられました。
小野山:私は勉強法もそうなのですが、ロースクールではどうやって過ごしていくのがいいのかわからずにいたとき、「アグレッシブに何でもやってみるといいよ」というアドバイスをいただいたことが印象的ですね。
渥美:未修の方に初めて法律文書を出していただくと、箇条書きみたいな文書が出てくる場合があります。でも、指導すればみなさんすぐに上達しますし、そうしたことはこちらのモチベーションにつながります。人数も少なめなので、勉強の話から、「朝、起きられない」などの生活面、「どんな法曹になりたいのか」といった将来のビジョンまで1対1で話せる。こうした経験は、私にとって宝物です。
水島:既修で入った私の場合は、修了生チューターのゼミに参加しました。論点を表面的に覚えるのではなく、何が対立していて、裏にどういう問題があるのかをしっかり考えることを初めて経験しました。ロースクールでの物の考え方や新司法試験に向けた学修方法など、発想の転換ができたように思います。
内田:実際に新司法試験を経験し、受かっている方たちのアドバイスなので説得力がありますし、合格して間もない方々なので、アドバイスの仕方1つ1つが非常に身近に感じます。私は毎週、個人相談のブースを利用させていただいていますが、行くととてもメンタル的に楽になるんです。法律の勉強は終わりがないため、どこまでやればいいのかわからなくなります。でも、ブースに行くと、「あなたは今どれくらいのレベルにいる」とか、「目標に近づくためには、こういうことをすればいい」と、具体的に教えていただけます。ただ闇雲に頑張るのではなく、ちゃんと自分が進んでいることを実感しながら学習ができます。あのブースなしでは、ロースクール生活は考えられません。
長谷:私も利用させていただきました。法律知識に関する質問だけでなく、普段の授業の受け方やそれに向けていかに準備をするかということまで相談に乗っていただいたので、より充実して日々の授業を受けられるようになりましたね。
小野山:わからないところは、学生だけでいくら話していてもらちがあかない。でも、AAの方に持っていくとあっさり答えを出していただいて、「ああ、そうか」とみんなで納得する。学生だけで考えるのも必要ですが、煮詰まったとき、気軽に見ていただけるのはありがたいです。
AAと学生がバランスの良い関係を保つために
光石:私は、AAを行う上で2つの主従関係を意識しています。1つは、ロースクールの授業が「主」で、AAゼミは「従」ということ。あくまでもAAというのはロースクールの勉強をサポートするためにいるのであって、AAを「主」に頼るようになってはまずいな、と。もうひとつは、学生が「主」でAAが「従」いう関係です。AAがいて助かるとか、参考になるというのはありがたいですし、こちらも期待に応えたいとは思うのですが、たとえば新司法試験の受験を考えても、頼れるのは自分1人しかいないわけです。受かった後も、法律家として事件に立ち向かって、最後は自分で決断をしなければなりません。そういう意味でも、AA依存になってしまっては元も子もないな、と意識しています。
渥美:いきなり知らない人に悪いところ、苦手としているところを指摘をされても、素直に受け止めてくれない人もいると思います。だから、私はまず、学生の方に信頼してもらえるよう、人間関係作りを心がけていますね。
受け継がれていく想い
光石:これまで総勢60名以上の方々がAAとしてサポートしており、その教え子たちが弁護士になって、またAAになっていく。この流れが非常に重要だと思うんです。AAは強い同窓会組織のようになって、代々受け継がれていく。その根底には、とにかく熱いものが流れていて、「後輩のために」という想いが強い人ばかり集まっている。「実力を養うためには何が必要か」を常に考えている。これこそが、早稲田ロースクールの総合力なのかな、と思っています。私は今後、ロースクールに入る人たちが「どの程度自分がついていけるか」という不安を克服できることも必要なのかな、と感じていますが、在学生のみなさんはこの先、AAにどんなことを求めていますか?
内田:未修の人や法律の知識が足りない人、あるいは勉強が進んでいない人などへのサポートは充実しているので、ある程度勉強が進んだ人へのサポートがさらに充実するといいです。あと、択一試験のように詳かな基礎的知識に関して不安を持っている方が多いので、フォローする機会を作ってもらえると嬉しいです。
小野山:1年次は知識があれば解ける問題が多いのですが、2年次の期末試験になると、時間を上手く使えないと解けない問題も出るようになってきています。大量の情報を短時間でまとめるという練習を、AAさんにサポートしていただけたら、と思います。
水島:既修者はどうしても書いて勉強することが多くなりがちです。議論しないと理解が深まりませんので、書くことに加えて議論するゼミがあるといいです。
光石:学生の体質改善を図るゼミも必要だということでしょうか。つまり、純粋に知識のない人をフォローしていくというのではなくて、知識は充分にあるのだけれど、ちょっと方向性を変えてあげるようなものも考えていきたいと思います。
渥美:AA制度はあくまでもサポートでしかないので、まずみなさんが大学の勉強、予復習を一生懸命頑張ってください。そこで不安なことが生じたときには、私たちが喜んでサポートします。
光石:ロースクールの勉強は辛くて苦しいこともありますが、ここには充実した教授陣や指導してくれる先輩がいたり、切磋琢磨できる学生がいたり、明るい部分も感じてもらえると思います。早稲田のロースクールは、「黙っていれば何とかしてくれる」というところではありません。でも、その分積極的に動き回れば、得られるものがたくさんありますし、2年もしくは3年間、勉強に集中するいい機会だと思います。それで足りないところは私たちAAがしっかりフォローしていくので、安心して飛び込んで来てほしいですね。
AA 光石 春平(弁護士)
- 2005年
- 東京大学教養学部総合社会科卒業
- 同年
- 早稲田大学大学院法務研究科入学[3年標準課程]
- 2008年
- 早稲田大学大学院法務研究科修了
- 同年
- 新司法試験合格、新62期司法修習生
- 2009年
- 弁護士登録、光石法律特許事務所に勤務
- 法務研究科アカデミックアドバイザー
AA 渥美 優子(弁護士)
- 1994年
- 慶應義塾大学法学部卒業
- 同年
- UBS証券会社
- 1998年
- ドレスナー証券会社
- 2004年
- 早稲田大学大学院法務研究科入学[3年標準課程]
- 2007年
- 早稲田大学大学院法務研究科修了
新司法試験合格、新61期司法修習生 - 2008年
- 弁護士登録、東京青山・青木・柏法律事務所 ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事務所(外国法共同事業)に勤務
- 2009年
- 法務研究科アカデミックアドバイザー
内田 いさか(3年生)
- 2008年
- 早稲田大学法学部卒業
- 同年
- 早稲田大学大学院法務研究科入学[3年標準課程]
小野山 静(2年生)
- 2005年
- 国際基督教大学教養学部社会学科卒業
- 同年
- 株式会社セブンイレブン・ジャパンにて店舗運営を担当
- 2006年
- 東京大学大学院総合文化研究科超域文化専攻
- 2009年
- 早稲田大学大学院法務研究科入学[3年標準課程]
水島 昴(2年生)
- 2010年
- 早稲田大学法学部卒業
- 同年
- 早稲田大学大学院法務研究科入学[2年短縮課程]
長谷 健太郎(1年生)
- 2006年
- 慶應義塾大学環境情報学部卒業
- 同年
- 株式会社リクルートコスモス(現コスモスイニシア)にて総務人事、不動産仲介を担当
- 2010年
- 早稲田大学大学院法務研究科入学[3年標準課程]