現職:早稲田大学日本語教育研究センター インストラクター(非常勤)
専門である「年少者日本語教育」との出会いは、日研入学のおよそ1年前に遡る。当時、幼稚園年少の長女、生後間もない長男との生活を楽しみつつも育児に忙殺される日々を送っていた。生来、一つのことで満足できない性格なので育児のみならず、それまでの経験や能力が生かせしかも生涯に渡るやりがいのある職業を模索していた。そして辿り着いたのが日本語教師であった。早速、週末に集中講義コースを有する日本語教師養成講座に通い始め、そこで愛知県に住む外国籍あるいは日本にルーツを持つ子ども達に関する講義を受けたときに、その子ども達の現状を目の当たりにし、二児の母である私が進むべき日本語教育に遭遇したのである。時を同じくし、早稲田大学大学院で日本語教育研究科が開設され、さらに年少者日本語教育の第一人者である川上郁雄教授が着任されたことが、日本語教育における研究分野と大学院選びを決定付けたといえる。これが日研とわたしとの出会いである。
日研の講義を一言で言い表せば「実践的」である。とりわけ早稲田大学と新宿区教育委員会が協定を結んだことにより院生は、ボランティアとして新宿区内の幼稚園・小・中学校で実際に子どもたちに教える機会が与えられ、実践を通じて仮説検証できるという貴重な経験が得られた。そして子ども達や先生方と接する中から、日本語教師はどうあるべきかという私自身の信念や教師観を形成する上で大きな役割を果たしたのである。
2004年9月の日研修了以来現在に至るまで、主に大学生に日本語指導をしている。教える対象が年少者ではなく大学生になったが、指導の根底にあるものは日研時代と何ら変わりはない。つまり単に日本語で話す・聞く・読む・書くといった4技能の向上を目指すのではなく、学習者一人ひとりに必要な指導は異なっても、学習者の将来を見据えた日本語指導は共通だと考えている。今後ともこの気持ちを忘れることなく、日本語指導に当たっていく所存である。