「能登半島地震・心理的支援活動」
北國FHD×早稲田大学 by ハイブリッド
能登半島地震に関するニーズとシーズ ~今私たちにできること~
2024年8月7日(水)から9日(金)の3日間で人間科学学術院の熊野宏昭教授と人間科学研究科の大学院生9名、人間科学部の大学生1名がリアルおよびリモートにて、石川県に本店のある北國フィナンシャルホールディングス(以下、北國FHD)の社員の皆様と一緒に、能登半島地震で被災した労働者やその支援者に対する心理的支援の必要性(ニーズ)と今私たちにできること(シーズ)を考える活動に参加しました。
言葉にできない思いにも耳を傾ける
初日の8月7日(水)は、北國FHD人材開発部の寺岡徹氏と本多雄輔氏の運転する車で、金沢市から2時間半かけて奥能登地区へ移動しました。奥能登へ近づくにつれて、道路はひび割れ、倒壊した家屋は増え、地震の爪痕が未だはっきりと残っていることを実感しました。この日は輪島市を視察して、輪島市ふれあい健康センター、北國銀行奥能登営業部(輪島支店)、震災後、能登空港内に事務所を構える能登産業復興相談センターの職員の皆様と交流しました。
![]() |
2024年8月7日(水)金沢市から奥能登地区へと向かう道中にて |
2日目の8月8日(木)は、壊滅的な影響を受けた珠洲市へ移動し、珠洲市役所、北國銀行奥能登営業部(珠洲支店)、企業研修にも使用されるホースパーク「みんなの馬」を訪問し、職員の皆様とお話する機会をいただきました。
奥能登地区での2日間を通して、参加した学生一同は、想像を絶する自然の猛威を目の当たりにしました。水道の使用すらままならない過酷な生活の中で、地震による様々な喪失体験から、心引き裂かれる思いで毎日を過ごしている皆様の言葉と、言葉にすらできないその思いを感じ取りました。「まがりなりにも心理的支援について学んできた自分たちに、一体何ができるのだろうか。」無力感を感じるとともに、復興に困難を強いられながらも奮闘する現地の皆さんから逆に勇気づけられる思いで、学生一同奥能登地区を後にしました。
![]() |
2024年8月8日(木)泉谷満寿裕市長(前列左から3番目)との懇談にて(前列左から柳田綾香さん、畑山美帆さん、泉谷市長の右から熊野宏昭教授、七森真央さん、日本EAP協会会長で株式会社ロブ社長の前田一寿氏、後列左から2番目は北國FHD社員組合の本多雄輔氏、福留尚典さん、安川徹さん、北國FHDの寺岡徹氏) |
![]() |
2024年8月7日(水)熊野教授(左から2番目)と同行した学生5名(左から3番目から7番目)が北國銀行珠洲支店の社員さんたちと交流する一コマ |
![]() |
2024年8月8日(木)みんなの馬のCOOで元JRA調教師の角居勝彦氏から震災時の状況や馬の習性について説明を受ける様子 |
傷ついた「こころ」との向き合い方
8月8日(木)には、珠洲市から再び金沢市へ戻り、北國FHD本店にて、社員の皆様に向けた熊野宏昭教授の講演会(タイトル:「震災後の心のケア―マインドフルネスの実践―」)が行われ、学生一同も参加しました。奥能登地区で交流させていただいた北國銀行輪島支店および珠洲支店、輪島市ふれあい健康センター、珠洲市役所の職員、みんなの馬の皆様もリモートで参加されました。
参加した学生からは、「被災した人がマインドフルネスを実践するのに適したタイミングは」という質問があり、熊野教授からは「生活の基盤が整わず、水も出ないという状況では、心を閉じていなければならない時、避けざるを得ない時もある。常識的に考えて今できないと思ったら、無理にやらないことが大事」という回答があり、職員の皆様はうなずきながら聞いていました。
![]() |
2024年8月8日(木)北國フィナンシャルホールディングス本店で行われた講演会での一コマ(スクリーン右の講師は熊野宏昭教授、最前列の5名は参加した学生)。 |
最終日となった8月9日(金)は、北國FHDの産業保健担当の皆様と3日間の活動について振り返りました。能登半島地震で被災した労働者における心理的支援のニーズは何か、心理学を学ぶ学生として、私たちにできることは何かを各々に考え、今後の活動に向けて意見交換を行いました。
参加した学生からは、「震災直後、誰もが死を間近に感じ、周囲の疲弊が深刻化していく中、珠洲市長や北國銀行の奥能登営業部の各営業部長、奥能登地区の各行政の職員の皆様のお話から『自分がやらなければ誰がやる』という強い使命感がとても印象に残った」という意見がありました。復興の遅延が叫ばれる中、悪戦苦闘しながらも力強く復興を進める現地の人たちの存在に気づき、学生一同も気が引き締まる思いでした。
今回の活動を企画してくださった北國FHDの寺岡徹氏と本多雄輔氏には、この場をお借りして深く感謝申し上げます。そして、自らも被災して困難な状況にあるにもかかわらず、周囲の人たちの支援に当たって来られた輪島市、珠洲市の職員の皆様には心より敬意を表します。
![]() |
震災後の珠洲市 見附島(通称:軍艦島)の様子 |