Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

祝! 開設5年 GSセンタースタッフが感じる「早稲田の変化」とは?

2015年開催のWaseda Vision 150 Student Competition(※)にて、「日本初! LGBT学生センターを早稲田に!」と題した企画が総長賞を受賞したことを契機に、2017年4月に設置されたGSセンター(Gender and Sexuality Center)。国内大学初のジェンダーやセクシュアリティに関するリソースセンターとして、相談支援や居場所提供、啓発活動などを実施し、今年で開設5年目を迎えました。今回は、創設時からのメンバーにインタビューを実施。これまでの歩みを振り返りながら、これからのGSセンターに期待する役割について話を聞きました。

(※)2032年に創立150周年を迎える早稲田大学が2012年に策定した、中長期計画「Waseda Vision 150」の実現に向け、さまざまな施策を学生が提案するコンペのこと。

GSセンター専門嘱託職員 渡邉 歩(わたなべ・あゆむ)
GSセンター専門嘱託職員 大賀 一樹(たいが・かずき)
大学院法学研究科 修士課程 2年 GSセンター学生スタッフ しゅんD

――そもそもGSセンターとは、どんな組織なのでしょうか。

渡邉

学生部内の、ジェンダーとセクシュアリティに関するリソースセンターとして開設され、4つの機能を軸に運用しています。1つ目は「うけとめる」で、相談支援と居場所の提供を行っています。例えば、個別相談(対面・オンライン)を実施したり、感染対策をしながらコミュニティスペースを開放したりしています。

GSセンター(早稲田キャンパス10号館213教室)の内部。感染対策が万全なコミュニティスペース(左)と本やDVDなどのリソースがある書籍・休憩スペース(右)

渡邉

2つ目は「つなげる」。さまざまな部署と連携しながら、学内の実態把握と課題解決に取り組んでいます。3つ目は「つたえる」。学内外での研修や啓発を通して、LGBTQへの理解促進や支援者の養成を図っています。そして最後は「ひろげる」。ジェンダーやセクシュアリティに関するイベントを開催したり、SNSでの発信や他団体とのコラボにより広報活動を進めたりしています。

GSセンターのミッション。4つの機能が全てつながることで、より良いセンターを目指している

――どのような経緯で開設されたのでしょうか?

しゅんD

留学やスタディーツアーに参加した先輩たちが、海外の大学にあるLGBTセンターから着想を得て、Waseda Vision 150 Student Competitionで提案したのが始まりです。その「日本初! LGBT学生センターを早稲田に!」という企画が総長賞を受賞し、企画を提案した団体がサークルとなり、また大学内でもセンター設置に向けた議論が進められた結果、2017年4月のGSセンター開設につながりました。開設の1年前に入学した私も、学生スタッフとして活動に参加した1人です。いきなり社会全体を変えるのは難しいかもしれないけれど、自分が4年間を過ごす大学であれば、もしかしたら変えられるかもしれないと思ったんです。

大賀

私は、もともと大学生のときからLGBTQ関連のサークルに参加していて、いろいろな団体の交流会を開いたりしていたんです。その後、臨床心理士の資格をとり、まだ“LGBT”という言葉すら認知されていないころから、NPO法人やボランティアなどで相談支援をしていました。そうした中で、専門職として働ける採用枠があるとお声掛けいただいたのがきっかけです。当事者である学生が、潜在的に抱える悩みを少しでも話せる場をつくるために、必要があれば大学に物申すぞ! というくらい覚悟を持って入職しました。

渡邉

私は大学院で教育心理学を学んで、さらにLGBTQ支援に力を入れていきたいと思っていた矢先にお誘いいただきました。勉強と両立できるか、すごく悩んだのですが、今後こんなに素晴らしいセンターで働けるチャンスは無いかもしれないし、むしろ自分が本当にやりたかった仕事だと思って職員になることを決めました。

しゅんD

私自身は全ての会議に出席できなかったのですが、サークルのメンバーで、開設前に行われたヒアリングに参加し、GSセンター実現に向けてさまざまなことを聞いてもらいました。その中で、「本当にLGBTQなんているの?」とか「君は“普通”なの?」などと質問されることもあったようで…。そんな質問にも根気強く答えながら、より良い場所をつくれるよう、とにかく対話を重ねました。

渡邉

その後、学内での手続きを経て開設されましたが、その初日も結構衝撃でした。事前に私たち専門職が頼んでいたソファやレインボーフラッグなどが部屋に置かれているだけで、「あとはヨロシク」と任されてしまって(笑)。

大賀

本当に何も決まっていなくて、当日勤務だったしゅんDと「まずは看板でも作ろうか」ってなったよね。

しゅんD

生協に色鉛筆と紙を買いに行って、手書きで看板を描きました。それが初日です(笑)。

――開設から5年。印象に残っている出来事はありますか?

しゅんD

2018年7月に開催したトークショー「私たちのホモネタ論〜ゲイ×レズビアン×社会学者で考える〜」に登壇された方々の言葉を今でもよく思い出します。ジェンダーやセクシュアリティに関するハラスメント、いわゆる“SOGIハラ”は今でも飛び交っています。例えば、何人かの友人と話しているときに、誰かが“ホモネタ”を言って笑いに包まれてしまったら? 発言した人に指摘したいけれど、場の空気を壊したくないときはどうすればいい? そんな状況に対して、どう考えて、どう行動すればいいのか。イベントを思い出して、SOGIハラに遭遇したときも頑張れることが多くあります。

私たちのホモネタ論〜ゲイ×レズビアン×社会学者で考える〜」のポスター。森山至貴准教授(文学学術院)らを招いたトークイベントは大きな反響を呼んだ

渡邉

ジェンダーやセクシュアリティについて深く知ることで、自分と向き合うことができるイベントがたくさんありました。同時に、しゅんDが言ったように、対話を重ねていく中で、ジェンダーやセクシュアリティに関心の低かった教職員の意識が変わっていったことが、とても印象的でした。戸籍上の性別の記載が「女性/男性」だからと、それに従い性別を単なる“記号”として扱うのではなく、学生一人一人に向き合って、その人の困りごとを解決しようと誠実に対応してくれるようになりました。

大賀

さまざまな困りごとを抱えて、これまでたくさんの学生がGSセンターに足を運んでくれたのですが、セミナーハウスの見直しにつながった相談のことは、よく覚えています。当時のセミナーハウスでは、個人風呂がなく、大浴場が男女で分かれていて、さらに時間帯をずらした使用もできませんでした。そのため、戸籍上の性別と、性自認(自認している性別)が異なる学生が入浴できないケースがあったと分かり、GSセンターのメンバーで実際にセミナーハウスの調査合宿をしたんです。トランスジェンダー学生の視点から浴室の使い勝手を検証して、入浴の時間配分やシャワーブースの改善点などを、セミナーハウスを担当する学生生活課に提案しました。最終的にそれらはほとんど改善・実現し、あらためて対話の重要性を感じました。

セミナーハウスのセクシュアリティ対応 GSセンター学生スタッフの気付き

2018年の夏季休暇中に、GSセンターの職員と学生スタッフで軽井沢セミナーハウスに宿泊。セクシュアルマイノリティの視点から、じっくりとセミナーハウスの問題点を洗い出した

――5年前と「変わった」と感じることはありますか?

しゅんD

社会全体として、LGBTQへの注目度が高まったと思います。早大生は毎年1万人入学して1万人卒業していくので、一人一人が抱く注目度の変化は分かりにくいのですが、長く在籍している教職員の方々には、社会の変化に合わせて「これは“差別”だから言っちゃいけないんだよね」という意識が芽生えたりとか、変化が見えるように思いますね。

渡邉

確かにLGBTQに対する若者の意識は高まっていると感じます。しゅんDが言ったことに付け加えると、学生を支える教職員の方は意識を持つだけでなく、自身が持つ情報をアップデートしなければいけないと思います。

大賀

例えば、LGBTQ関連のYouTubeを見ると、5年前は誹謗(ひぼう)中傷やネガティブなコメントが多数見受けられたのですが、最近では「同性婚のような社会課題について話すことは大切」とか「実は当事者で~」など、この課題に向き合おうとするコメントでいっぱいです。そんなふうに社会や世論が変わっていくように、大学内も変わっていけるはず。ただし、差別とは人格に基づくものではなく、立ち位置や環境によって生まれるものだと思うので、人を変えていくのではなく、その人がいる場所の構造やルールを見直すことが必要だと思うんです。だからこそ、『マイノリティ学生とアライのためのサポートガイド』を作成したことは、その見直しに貢献できたのかなと思っています。

サポートガイドでは、セクシュアルマイノリティ学生が学生生活を送る上での支障が少しでもなくなることを期待し、
GSセンターを中心とした早稲田大学の取り組み・対応を整理し、まとめている(詳細はこちら

――これからのGSセンターに、つなげていきたい思いをぜひ教えてください。

しゅんD

GSセンターの学生スタッフになったときから、先輩たちからのバトンを次につないでいきたいという思いがありました。コンペで優勝した先輩の前には、渡邉さんや大賀さんの世代の活動があり、それよりもっと前には、東京レインボープライドの前身である東京レズビアン&ゲイパレードを始めた人たちがいる。だからこそ、現状維持ではなく、“ごねる”こと、つまり自分たちの考えを主張し、周りと対話を重ねながら、社会を変えていこうと成長し続けることが大切だと思うんです。「みんな違って、みんないい」という言葉に隠されて、問題が見えなくならないように、常に問題を見据えて“ごねて”いきたいし、そのスタンスがこれからも残っていくといいなと思います。

2018年の東京レインボーパレードの様子。GSセンター職員や学生スタッフのほか、LGBT稲門会に所属する校友(卒業生)も多く参加した

渡邉

今ある困りごとや生きづらさを、次には引き継がないぞという思いで、これまで活動してきました。早稲田大学で、痛みや傷や、やりきれない思いを抱えている人は、きっとどの世代にもいるはず。その人たちの思いを請け負って、最前線で解決していく覚悟を、GSセンターに関わる人にこれからも持ち続けてほしいと思っています。

大賀

GSセンターのような組織は、全国の全ての大学にあってほしいと思っています。なぜなら、利用できる人を限定しないことや、立場によって受けられる特権の差を無くすことが大切だからです。これからは、このGSセンターだけ、早稲田大学だけ、ではなくて、他の大学や教育機関、自治体などと連携し、全てのジェンダーやセクシュアリティに関心のある人たちを見据えて、活動の幅を広げていきたいですね。

取材・文:吉田 けい

GSセンター
【場所】早稲田キャンパス 10号館 213教室
【開室時間】月曜~金曜 10:00~16:00(土・日・祝祭日は閉室)
※2021年10月8日現在の状況。新型コロナウイルスの感染拡大の影響により開室時間変更の可能性があります。詳細はこちらから。
【E-mail】[email protected]

秋のGSセンターはイベント盛りだくさん! 気軽にオンラインで参加してみよう

GSセンターでは10月以降さまざまなオンラインイベントを実施予定! 今回は、ダイバーシティ推進室での講演会と、学外のゲストを招いた大規模なイベント2つを紹介します。「GSセンターはどういうところか体験してみたい」「セクシュアリティやジェンダーについて知識を深めたい」という方は、ぜひ参加してみましょう!

公開講演会「GSセンターを知っていますか?」

センター開設当初より、多様な価値観や生き方を尊重するキャンパスづくりを目指し、ジェンダーやセクシュアリティに関する悩みを抱えた学生に寄り添い、活動してきたGSセンタースタッフより、これまでの取り組みや活動について紹介します。詳細はこちらから。

【日時】2021年11月26日(金)16:30~18:00
【会場】オンライン
【申し込み】MyWasedaから申請
【締め切り】2021年11月24日(水)

ALL ABOUT “THEY”―「Xジェンダー/ノンバイナリー」たちと考えるアイデンティティ、ジェンダー、文化~男女二元論、性別規範、生き方~

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さまざまな世代の「Xジェンダー/ノンバイナリー(※)」を招き、どのように社会の中で生き残り、自身のアイデンティティをどう受け止めているのかを共有してもらうことで、これからの社会をどう作っていくかについて考えるためのイベント。5つの講義と3つのテーマトークから構成される予定です。Q&A機能を用いて随時質問を受け付け、双方向型のオンラインイベントになるように企画しています。詳細はこちらから。

【日時】2021年11月27日(土)13:00~16:30(12:50より開場予定)
【会場】オンライン
【申し込み】MyWasedaから申請
【締め切り】2021年11月24日(水)

(※)男性/女性いずれかのジェンダー・アイデンティティを持たない人々全てを含む。厳密には、Xジェンダー、ノンバイナリー、グレージェンダー、Aジェンダー、ジェンダークィア、Gender nonconformingなど、さまざまな形で呼ばれたり、自称している。

絶対恋愛になる世界vs絶対恋愛にならない私-AロマンティックAセクシュアル(※)-

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Aスペクトラム(※)を自認する当事者の方と、Aスペクトラムを研究対象としている研究者の方を招き、それぞれの個人的な体験とアカデミックな知識の観点を踏まえたパネルディスカッションを実施予定。 Aスペクトラムの観点から、社会における規範(恋愛至上主義や異性愛など)を考え直してみることを目的としています。詳細はこちらから。

【日時】2021年12月4日(土)14:20~16:00(14:05より開場予定)
【会場】オンライン
【申し込み】MyWasedaから申請
【締め切り】2021年12月1日(水)

(※)
Aセクシュアル:性的魅力や性的関係を持ちたいという欲求を感じない人の総称。
Aロマンティック:他者に対して恋愛的に全く、またはほとんど引かれない人の総称。
Aスペクトラム:他者に対して性的/恋愛的に引かれない、またはそれが条件つきで生じることを前提とした性的指向の総称。

【次回フォーカス予告】11月1日(月)公開「短期留学特集」

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