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特集

村上春樹ライブラリー大公開! 世界で唯一の文学空間を楽しもう

2021年10月1日、早稲田大学国際文学館(以下、国際文学館)が早稲田キャンパスに開館します。「村上春樹ライブラリー」という通称名が示すように、国際文学館では、小説家で翻訳家の村上春樹さん(1975年第一文学部卒)から寄贈・寄託された資料やレコードなどを収蔵し、村上文学の研究を行うとともに、国際文学、翻訳文学に関する世界の交流拠点となることを目指しています。

それでは、国際文学館は具体的にどのような施設で、どう活用できるのでしょうか? 館長である十重田裕一教授(文学学術院)に、国際文学館の目指す姿を伺いました。さらに、『早稲田ウィークリー』レポーターの佐藤里咲さん(人間科学部2年)が、開館前の国際文学館を訪問。国際文学館に所属する3名の助教・助手の皆さんに案内してもらい、館内の様子を一足先にお届けします。最後に、国際文学館内のカフェ「橙子猫 – Orange Cat – 」を運営する学生の意気込みも掲載。一人一人に合った国際文学館の楽しみ方をきっと見つけられるはずです!

入館にはこちらから事前予約が必要です。なお、昼休みの時間に限り、早大生は予約不要で入館できます。三密の回避にご協力ください。

国際文学館前にて。左から栗原悠先生、佐藤さん、権慧先生、エリック・シリックス先生

▼国際文学館の目指す姿とは?
▼国際文学館の内部を大公開!
▼カフェ「橙子猫 – Orange Cat – 」運営学生の意気込み紹介
▼国際文学館の利用案内

文学研究の世界的な拠点を目指す

早稲田大学国際文学館 館長/文学学術院 教授 十重田 裕一(とえだ・ひろかず)

東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。大妻女子大学専任講師、早稲田大学助教授を経て、2003年から早稲田大学教授。早稲田文化推進部長(2010~18年)を経て、2019年から国際文学館(村上春樹ライブラリー)館長。コロンビア大学客員教授・客員研究員、カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員教授、スタンフォード大学客員教授などを歴任。自著に『横光利一と近代メディア 震災から占領まで』(2021年/岩波書店)、『岩波茂雄 低く暮らし、高く思ふ』(2013年/ミネルヴァ書房)、『「名作」はつくられる―川端康成とその作品』(2009年/NHK出版)、編著に『〈作者〉とは何か 継承・占有・共同性』(共編著/2021年/岩波書店)、『岩波茂雄文集』全3巻(共編著/2017年/岩波書店)、Literature among the Ruins, 1945-1955 Postwar Japanese Literary Criticism(共編著/2018年/Lexington Books)、Politics and Literature Debate: Postwar Japanese Criticism 1945-1952(共編著/2017年/Lexington Books)、『横断する映画と文学』(2011年/森話社)、『占領期雑誌資料大系 文学編』全5巻(共編著/2009~2010年/岩波書店)など。

この度、日本を代表する小説家・翻訳家の村上春樹さんから著書やレコード、その他ご自身に関する資料など、貴重な品々を寄託・寄贈いただくことになり、国際文学館の構想が練られました。さらに、株式会社ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長の柳井正さん(1971年政治経済学部卒)より寄付を頂き、世界的建築家で村上さんと親交のある隈研吾さん(早稲田大学特命教授)に早稲田キャンパス4号館のリノベーションを依頼。2021年10月1日に一般公開の運びとなります。

国際文学館は、日本文学の国際化、文学の翻訳研究、そして村上作品の研究という3つの柱を掲げ、文学研究の世界的な拠点となることを目指しています。これほど村上さんの資料がそろう施設は国内外で類を見ないでしょう。この国際文学館をハブとして、世界中の研究者が情報交換を行えるような計画を練っています。

曲線状の構造物が印象的な国際文学館

一方で、村上さんのご意向もあり、資料を保存するだけでなく、公開にも力を入れていく考えです。そのために、早大生の皆さんはもちろん、文学を愛する一般の方にもご利用いただけるよう、開放的な空間にしたいと思っています。村上さん寄託・寄贈のレコードを聞くことができるラウンジや、カフェ「橙子猫 – Orange Cat – 」が皆さんの憩いの場となればうれしいです。また、国際文学館のモットーは「物語を拓こう、心を語ろう」。各人が持つ人生の物語を開放的に語ることができ、それを誰もが聞くことができる環境を用意することで、そこから新たな物語や対話が生まれたらと思っています。

早大生の皆さんは、ぜひ気軽に国際文学館を利用してください。直接来ていただくことが難しい場合でも、オンラインで情報発信を行い、リアルだけでなくバーチャルでも体験いただける計画を模索しています。さらに、この場所で学生が村上さんの調査・研究を行い、優れた卒業論文や修士論文、博士論文を生み出すのなら、それはとてもうれしいことですね。

国際文学館の内部を大公開!

今回、国際文学館を訪れた『早稲田ウィークリー』レポーターの佐藤さんを案内してくれたのは、権慧先生(国際文学館助教)、エリック・シリックス先生(国際文学館助手)、栗原悠先生(国際文学館助教)の3名。早大生や一般の方が訪れることのできる1階、2階、地下1階について、たくさんの魅力を紹介してもらいました。

1階
村上作品が並んだ「ギャラリーラウンジ」、村上さん寄託・寄贈のレコードが聞ける「オーディオルーム」

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権先生:1階のメインエントランスを入って左手に見えるのが、ギャラリーラウンジです。ここは来館者が読書や勉強ができるスペース。壁に並ぶのは村上さんの著作と、それらの翻訳本です。50以上もの言語に翻訳された村上作品の多くがこちらに集められているんですよ。これらの作品を楽しむことはもちろん、日本語の原著と翻訳を読み比べることで外国語の勉強をしたり、翻訳を学んだりといった使い方もできます。

ギャラリーラウンジ。壁には国際文学館のモットー「物語を拓こう、心を語ろう」が刻まれている

向かいの本棚にはデビュー作の『風の歌を聴け』(1979年/講談社)から、『古くて素敵なクラシック・レコードたち』(2021年/文藝春秋)まで、村上作品が年代順に並んでいます。表紙が見えるように置かれた本棚をずらっと見渡すと、それまで知らなかった村上作品に出合えるかもしれません。例えば、『波の絵、波の話』(1984年/文藝春秋)は、写真家の稲越功一さんが撮影した写真に対し、村上さんがエッセイなどを寄せた貴重な写真集です。一部の本には、カバーデザインや英語版の題名、受賞情報などがキャプションで解説されているので、ぜひチェックしてみてください。

この部屋のアクセントになっているのは、壁にプリントされた「羊男」の絵です。「羊男」は村上さんの初期三部作の一つ『羊をめぐる冒険』(1982年/講談社)に登場するキャラクターで、ご自身がデザインされたもの。村上作品には多くの画家が携わってきましたが、村上さんご自身も絵を描くことが好きだそうです。「羊男」の手前には、村上さんが実際に使われていた3脚の貴重な椅子を配置しています。座り心地がいいので、ぜひ座ってみてくださいね。

写真左:年代順に並んだ村上作品。奥の壁には「羊男」が描かれている
写真右:村上さんから寄託・寄贈された椅子に座り、村上作品を楽しむこともできる

1階には村上さんお勧めの音楽を楽しめるオーディオルームもあります。こだわりは、村上さんが普段使われているものと同機種のレコードプレーヤーなどのオーディオ機器。音質がとても良いんです。また、展示されているレコードの中には猫のスタンプが押されているものもあります。これは、村上さんが経営されていたジャズ喫茶「ピーター・キャット」に実際に置かれていたレコード。ジャズ好きとして知られる村上さんには、長年収集されていたレコードを今後も寄託・寄贈いただけることになっています。

村上さんのコレクションが並ぶオーディオルーム。2021年11月20日には開館記念イベントをライブ中継にて開催予定

2階
さまざまな企画を実施予定の「展示室」、学生が活用できる「ラボ」「スタジオ」

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シリックス先生:2階には、年2回の企画展示を行う展示室と、学生が研究やサークル活動、イベントなどで使える予約制のラボ、そして本格機材を完備したスタジオがあります。現在、展示室では2021年10月1日から開催予定の「建築のなかの文学、文学のなかの建築」展の準備をしています。この展示では、国際文学館が完成するまでの過程を追いながら、建築・設計に携わった人々の存在や、一人一人の作業の痕について紹介します。建物の模型も展示するので、この機会にぜひ見てもらいたいですね! また、国際文学館を設計した隈研吾さんのほか、創造理工学部建築学科に所属する12人の先生方がお勧めする、文学と建築のつながりを感じられる文学作品も展示予定です。

「建築のなかの文学、文学のなかの建築」展。先生方が推薦した作品(左)や国際文学館の模型(右)が展示されている

ラボとスタジオはガラスで仕切られていて、スタジオの音声をラボのスピーカーから流すことができます。例えば、スタジオ内で録音しながらラボで放送するといった公開収録のような使い方も想定しています。さらに、スタジオの機材は一般のラジオ番組を制作できるほど本格的。将来的には学生も利用でき、ポッドキャストやラジオドラマの制作などに活用してもらえたらと思っています。

ガラス越しにはラボが見える。高校時代放送部に所属していた佐藤さんも「いつか使ってみたいです」と話すような、防音機能も完璧なスタジオ

地下1階
誰にでも開かれた「ラウンジ」「橙子猫 – Orange Cat – 」、文学館のシンボル「階段本棚」

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栗原先生:地下1階は飲食ができるラウンジとなっています。一角には学生が運営するカフェ「橙子猫 – Orange Cat – 」が、その向かいには村上さんの書斎を再現した部屋があります。存在感のあるグランドピアノは、ジャズ喫茶「ピーター・キャット」で使われていたもの。今も現役で、演奏会などのイベントを開催するときには、その音色を聞くことができます。この階はメインエントランスがある1階よりも低い位置にあるため、「地下」となっていますが、2つの出入り口が屋外とつながっています。人々が自由に行き来し、各々が好きなように過ごせる開かれた空間です。

写真左:大きな窓も特徴のラウンジ。開館に備え、グランドピアノは調律済み
写真右:舞台『海辺のカフカ』で使用されたネオン管、通称「土星」などの舞台装置が常設展示される

最後の紹介となりますが、1階へとつながる階段本棚は、国際文学館の象徴となる場所です。地下から見て右手の本棚には「村上作品とその結び目」というテーマのもと、作品のキーワードである「映画館」や「水の中の生き物」「人とAI」などから連想される、さまざまなジャンルの本が並びます。また、反対側の本棚のテーマは「現在から未来に繋ぎたい世界文学作品」。小説家や翻訳家、村上作品を映画化した監督などに、ご自身が考える「世界文学」を選んでいただいています。こちらの本は手に取って、ラウンジや階段本棚などで自由に読んでいただけます。さまざまな楽しみ方ができる国際文学館にぜひお越しください!

取材・文:萩原あとり
撮影:髙橋 榮

『早稲田ウィークリー』レポーター・佐藤さん

国際文学館を訪れて、村上作品や海外文学を身近に感じました。国際文学館の中に入ると、歴代の村上作品や、いろいろな国の文学作品が並んでいて、普段読書をしない人でも読んでみたいと思う本を簡単に探すことができるのではないかと思います。実際に開館したときには、本の世界に没頭して読書の秋を楽しんだり、読んだ本についてカフェ「橙子猫 – Orange Cat – 」で友人と語り合ったりと、さまざまな過ごし方をして国際文学館を満喫したいです。

著名な作家を招待した朗読会を実施予定!
株式会社エフエム東京(TOKYO FM)協力の下、国際文学館で10月から朗読会を実施します。出演は、村上春樹さん、ロバート・キャンベルさん(早稲田大学特命教授)、小川洋子さん(1984年第一文学部卒)、川上弘美さん、伊藤比呂美さんを予定。なお、村上さんには3回分をご担当いただきます。申し込み方法などの詳細は国際文学館のWebサイトを確認してください。朗読会の模様はダイジェスト版に編集され、後日TOKYO FMにて放送します。

人々のつながりも大切にするカフェを作りたい

カフェ「橙子猫 – Orange Cat – 」運営学生
教育学部 3年 市原 健(いちはら・けん)

カフェ運営に携わる早大生3人。左から、林楽騏さん(政治経済学部1年)、市原さん、石丸紗羽さん(文化構想学部4年)

このカフェのオープン自体は村上春樹さんから発案いただき、私を含めた学生3人で運営します。さかのぼること今年の3月、運営メンバーの選考を通過し、われわれは初めて顔合わせをしました。学年も、これまでの経験も異なる3人でしたが、これから新しいことに挑戦するエネルギーをお互いに感じました。

私がこの運営に携わりたいと思ったきっかけは、早稲田という大学・街・文化が大好きだったこと。大好きな早稲田大学で人と人とをつなぐことができる機会に引かれたんです。もう一つは、自分が以前アルバイトをしていたカフェでの経験を生かして、何か大きなことをやり遂げたいという思いがあったことでした。いざ運営を始めてみると、メニュー開発のような、自分の理想のカフェを作るための仕事に着手する前に、行政機関への手続きや大学内での調整など、行うべき業務の多さに驚きました。しかし、オープンまでに作り上げた土台は、この後大事になるのだという気持ちで駆け抜けました。

カフェは、ただ飲み物や食べ物を出すだけの場所ではなく、その空間自体や、そこで生まれる人々のつながりこそが大切だと思っています。この秋に「橙子猫 – Orange Cat – 」がオープンし、1年後、自分の卒業後、さらにその先…と、どんな仲間たちがどんなカフェとしてつないでくれるのか。その歴史が素晴らしいものになることを今から楽しみにしています。

アイスコーヒーと季節のスムージー(写真左)と看板メニューである、季節野菜のドライカレー(写真右)。カレーのレシピ作成には、人気料理研究家・栗原はるみさんにご協力いただきました

国際文学館の利用案内
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、利用時間帯と利用人数に制限を設ける予定です。入館にはこちらから事前予約が必要です。なお、昼休みの時間に限り、早大生は予約不要で入館できます。三密の回避にご協力ください。
【場所】早稲田キャンパス 4号館
【開室時間】10:00~17:00
【E-mail】[email protected]
※掲載情報は、2021年9月27日現在のものです。開館日や最新情報は、国際文学館Webサイトなどでご確認ください。
※国際文学館の本は閲覧のみ可能です。

<橙子猫 – Orange Cat – >※予約不要
【営業時間】月曜~金曜 10:00〜17:00/土日 10:00〜15:00
※定休日は国際文学館の休館日に準じます。また、大学歴に従い、営業時間が変更する可能性があります。詳しくは当店のSNSをご確認ください。
【Webサイト】http://orangecat-wihl.com/
【Instagram】@wihl_cafe
【Twitter】@wihl_cafe

【次回予告】10月4日(月)公開「Special Issue 海外文学レビュー特集」

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