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「世界で輝くWASEDA」を目指して 121号館から始まる産官学連携

早稲田大学は産官学連携研究を推進する研究環境・研究支援機能などを整備するために、早稲田キャンパスに新研究開発棟・121号館を2020年3月に竣工しました。

通り沿いの建物の1階に、コーヒーチェーン店「タリーズ・コーヒー」がある121号館。オンライン授業の影響もあり、この建物の存在を知らなかった早大生も多いのでは? 実はこの建物、早稲田の未来を担うことを期待されています。ここを拠点に早稲田はどう発展していくのでしょうか。今回は、早稲田の研究推進部門を総括する笠原博徳副総長に、121号館における新たな産学連携体制などについて伺いました。

※インタビューはオンラインで行いました。

旧早稲田実業高校の建物を改修・利用していた研究施設(120-2、3、4号館)の跡地に作られた121号館

121号館で新しいアイデアを創出し、世界との競争に挑む

早稲田大学副総長 笠原 博徳 (かさはら・ひろのり)

1976年早稲田大学高等学院卒、1980年早稲田大学電気工学科卒、1982年同修士了。1985年早稲田大学大学院博士課程修了、博士(工学)。同年、カリフォルニア大学バークレー客員研究員。1986年早稲田大学理工学部専任講師、1988年助教授。1997年現在の理工学術院情報理工学科教授、1989~1990年イリノイ大学Center for Supercomputing R&D客員研究員、2004年アドバンストマルチコア研究所所長、2017年日本工学アカデミー会員(2020年より理事)、日本学術会議連携会員。2018年にIEEE Computer Society(168カ国からの会員を持つ世界最高峰のコンピュータ学会)President 、2018年11月より早稲田大学副総長を務める。

121号館は「産官学連携」を進めるための象徴的施設

早稲田大学が今、テーマとして掲げるのは「世界で輝くWASEDA」の実現です。そのための取り組みとして、2019年6月に研究戦略立案、産官学連携、知的財産管理、インキュベーションの4つの機能を統合し、全学的な研究支援組織「リサーチイノベーションセンター」を発足させました。

その中で、今後本学にとり重要課題となるのが「産学連携」です。われわれ大学と産業界とがこれまで以上に連携して新たな技術開発や製品開発を進め、世界中の人に向けて生活に役立つ製品やサービスを打ち出していく。さらには、大学、学生、教職員などアイデアを持つ人たちがベンチャー企業を作り、世界とタイムリーに競争する道も支援していく。そんな「産学連携」を進めるための象徴的施設としてこの度竣工したのが121号館です。

吹き抜けに面したラウンジ(左)と開放感あふれる廊下(右)

もちろん、建物ができたから全て変わるという単純な話ではありません。この建物をイノベーションの象徴としてうまく使いこなし、新しいアイデアを生み出していく必要があります。

そのアイデアの一つが「早稲田オープン・イノベーション・エコシステム」です。エコシステム(Ecosystem)とは本来「生態系」の意味ですが、互いに連鎖し成長し、生き延びていくさまを指します。

ではオープンイノベーションとは何か。子どもの数が減り、技術者や研究者も減少していくこれからの時代、従来のように一つの企業だけで世界と競争できる製品を作ることは難しくなっています。そんな時代において、新しいアイデアはどこにあるのか。それは大学にあるのです。大学は常に誰も解いたことのない問題を解き続け、新しい技術を打ち出しています。そういった「大学の知恵」と産業界のニーズと技術をうまく組み合わせることで、世界の人に喜んでもらえるような付加価値の高い製品を作ろう! というのが、オープンイノベーションの考え方です。

オープンイノベーションの実現のため、近年さまざまな建物が竣工している(クリックして拡大)

一方、大学側には、「こんな優れた技術を作りました」といくらアピールしても産業界が使ってくれない、という問題点がありました。しかし産業界の皆さんは、世界の市場が必要とするものを作っている。つまり「社会のニーズ」を持っているのです。そのニーズを大学も共有して、「一緒に問題の求解法を考えて世界唯一の製品を作りましょう」という観点も、121号館を旗艦として目指していきたいと考えています。

121号館を中心として世界のベンチャーにつなげられる未来を目指す

研究開発や技術開発と聞くと、人文社会系の方々には関係のないもの、と捉えてしまうかもしれませんが、そこには大きな誤解があります。例えば、早稲田大学の校友(卒業生)が起業したベンチャーから始まり世界トップ企業に育っているといえば、衣料品ブランドの「ユニクロ」、フリマアプリの「メルカリ」などがあります。人文社会系出身の方々が新しいビジネスの仕組みを考え、最先端のICT技術も駆使して世界に広げていったのです。

ビジネスモデルや商売の仕組みを作り、情報系の技術やデザインを駆使して、いかにコストを抑えつつ、ユーザーがうれしい付加価値を生み出していくか。この部分では、技術系の知識だけではなく、これまで以上に人文社会系のアイデアも統合したベンチャー企業を立ち上げられるかが重要です。

実は、早稲田キャンパスの周辺には、たくさんのベンチャー企業があります。ただ、残念なことにこれまではうまくネットワーク化できていませんでした。121号館を中心に理工系と人文社会系を融合させ、経験豊富な卒業生の皆さまのご支援も頂きながら、世界のベンチャー企業につなげられる未来を目指す。それこそ、早稲田ならではの強みにもなるはずです。

121号館を中心として、産官学連携強化や世界と競合するベンチャー育成を目指す(クリックして拡大)

121号館の地下には、国際会議なども開くことができる最新のIT機器を完備したカンファレンスルームや会議室があり、1階には展示スペースやラウンジ、サロンとして利用できるギャラリーを設置していますので、最先端研究のショーケース的なイベント利用も可能です。

1階ギャラリーでは、新しいベンチャー起業を考えている学生・教職員や、すでに事業で成功している校友の皆さんが垣根を越え、「こんな新しいアイデアがあるんだ」「そのアイデアだったら出資するよ」といった具合に、人とアイデアが集まる場所として機能させていきます。「早稲田に行けば新しいビジネスの種があるから行ってみよう」と思える場所にしていきたいと考えています。

1階ギャラリーのイメージ(左)と約200名収容可能な地下1階カンファレンスルーム(右)

ギャラリー以外にも、121号館には「ワンストップ窓口」を設け、産業界や校友の皆さんからの問い合わせを集約していくとともに、学内の連携もこれまで以上に有機的に図っていくことを目指しています。

また、科学技術振興機構(JST)の「社会還元加速プログラム(SCORE)大学推進型」の採択機関に選ばれるなど、早稲田は成長ポテンシャルの高い大学発ベンチャー企業を創出していくことに大きな期待を寄せられています。こういった国の支援も活用し、ワンストップ窓口を通じて、幅広くさまざまな提案ができるかと思います。

このように少しずつ、IT企業やスタートアップの聖地である米国のシリコンバレーのように、121号館を中心とした早稲田一帯が産学連携の場、新しい技術を創造する場、すなわち早稲田イノベーションバレーに育つことが理想です。

こうした取り組みは、英国のオックスフォード大学やケンブリッジ大学を筆頭に、世界中の大学でも動き始めていることです。実際、オックスフォードのRichardson学長と意気投合して、2020年4月に情報・数学・物理分野の大学間協定を締結しました。この協定により、早稲田大学とオックスフォード大学間での研究・教育面の組織的な交流の活性化が実現します。

オックスフォード大学は、世界大学ランキングにおいて2017年から5年連続世界1位と評価されている、世界が注目する大学です。つまりは、世界トップからも注目されることを早稲田は始めている、と捉えていただいていいと思います。

オックスフォード大学Richardson学長(左)と笠原副総長(右)

まさにこれこそが「世界で輝くWASEDA」の始まりです。もっとも、米国の大学が欧州の大学に追いつくまでには、40年かかったと言われています。それでも諦めずに努力し続けることでこそ、追いつき、肩を並べることができる。早稲田大学でも同じことを目指していきたいということです。

早稲田の素晴らしさは、校友の方々がベンチャー企業も含め、各業界でさまざまな経験をされていることです。今後はそんな校友の方々にも121号館に集まっていただき、早稲田のエネルギーを増大させて世界に広めてもらいたい。121号館は研究のことや起業のことなど、誰でも相談できる場所です。早大生、教職員の皆さんには、世界で活躍される校友の方々の知見や産業界のニーズを理解し、世界の生活を豊かに、かつ安心安全で持続可能とする新しいアイデアを創出していただきたいと考えています。

新研究開発棟・121号館とは?

121号館外観

旧早稲田実業高校の建物を改修・利用していた研究施設(120-2、3、4号館)の跡地に、2020年3月に竣工した新研究開発棟・121号館。

地下2階、地上6階、延べ床面積約18536.98㎡の建物は、フロアごとにゾーニングされており、研究室は主に2~6 階に設置。地上1階・地下1階は、エントランスホールを中心にセキュリティー区画外のエリアとして設定。学外からも多様な人が足を運べるよう、ギャラリー、 会議室、カンファレンスルーム、事務窓口などが配置されています。

【問い合わせ先】
早稲田キャンパス 121号館
住所:東京都新宿区早稲田鶴巻町513 研究推進ワンストップ窓口
https://waseda-research-portal.jp/inquiry/

取材・文:オグマナオト(2002年、第二文学部卒業)
Twitter:@oguman1977

【次回フォーカス予告】10月12日(月)公開「どらま館特集」

早大研究拠点121号館はどんなところ? 研究者たちに聞く期待と実感

 

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