Waseda Weekly早稲田ウィークリー

特集

コンサルによるサポートも万全 起業一歩目はインキュベーション部門で

皆さんは起業支援を行う早稲田大学の組織、「リサーチイノベーションセンター インキュベーション部門」を知っていますか? こちらは新目白通り沿い、都電早稲田駅や甘泉園公園近くに位置し、早稲田大学の学生・教職員・卒業生に対して、さまざまな分野のコンサルタントによる起業相談や経営支援・助言を行っています。東証1部上場企業の史上最年少経営者である村上太一さん(2009年政治経済学部卒)率いる株式会社リブセンスや、ビッグデータの解析とAIによる情報提供を行う東証マザーズ上場の株式会社ユーザーローカルなどもこの施設の出身企業です。では実際どういうところなのか、現在の利用者であるPestalozzi Technology株式会社の共同創業者の井上友綱さん(2009年スポーツ科学部卒)、木村隆さん(2015年教育学部卒)と、中小企業診断士の資格を有し、シニアコンサルタントとして利用者をサポートしている工藤元さん(2008年大学院アジア太平洋研究科修了)にお話を聞きました。起業に興味がある人は訪れてみてはいかがでしょうか。

早稲田キャンパス19-3号館インキュベーションセンターにて(左から)工藤さん、井上さん、木村さん。Pestalozzi Technology(ペスタロッチ テクノロジー)株式会社は、「体育/部活動にInnovationを起こし 人間の可能性を拡げる」をビジョンに、「AIを活用することで体育/部活動におけるエコシステムを作り 運動の楽しさを知ってもらう」ことをミッションに掲げ、2019年7月1日に共に早稲田大学米式蹴球部出身の井上友綱さん、木村隆さんが設立。インキュベーション部門の利用は今年9月から

――お二人がインキュベーション部門を利用するに至ったきっかけを教えてください。

井上

大学卒業後、アメリカでアメフトをしていたのですが、そのときに知り合った元陸上競技選手の為末大さんと共に帰国後の2014年に起業しました。その後、会社がヘルスケア会社と合併したことや、ずっとスポーツに携わってきたこともあり、スポーツや体育分野でイノベーションできないかと考えるようになりました。そこで小中学校で行う体力測定に着目し、そのデジタル化やオンラインコーチング事業を展開すべく、大手企業で営業経験のある木村とエンジニア担当のもう一人の3人で新たに起業しました。

Pestalozzi Technology株式会社のWebサイトトップページより

木村

当初は一般的なシェアオフィスに入居したものの、利用者がすごく多くて…。どういう人がいるか分からない環境で、今後の事業計画など大事な話をするのはためらいがありました。

井上

そんなとき、以前勤めていた企業の代表が早稲田の客員教授をしていて、インキュベーション部門の存在を教えてくれました。3人とも早稲田出身でなじみもあり、周囲の飲食店は安くておいしいところが多い(笑)。利用料の費用対効果などトータルバランスで検討し、もう入るしかない! と決めました。

――利用するには「早稲田大学インキュベーションコミュニティ」会員になる必要があるようですが、審査基準を教えてください。

工藤

早稲田の教職員や現役学生、卒業生といった早稲田関係者であることが大前提です。他にはビジネスモデル全体や実現可能性、成長性などいくつかあります。また大学の施設ですので、コンプライアンスを含めた事業の社会性といった観点からも判断します。あと人間性も大きいですね。お二人の面談を担当しましたが、起業経験もあり、事業内容が教育に関連しているので大学との親和性も高い印象を受けました。実際に利用してみてどうですか?

井上

平日はほぼ毎日来ていますが、ここはオープンスペースでも静かに仕事ができますし、利用者が早稲田に何かしら関係がある人に限られているのは安心感・信頼感がありますね。

工藤

2人のようなヘビーユーザーもいれば、別の場所にオフィスを構えている企業の方もいるので、使い方は各企業で異なります。さらに、ここは大学施設で唯一法人登記が許されている場所。ここを登記先にすることをメリットと考える企業もいるようです。

木村

確かに、私たちは教育系の会社ということもあり、登記先が早稲田大学の施設だと先方の印象も良いようです。あとは取引先の人が早稲田出身で、そこから話題が広がって一気に距離が縮まったこともあります(笑)。

井上さん、木村さんはオープンスペースの角のデスクをよく利用している

――工藤さんをはじめとするコンサルタントの方々は、どういった役割を担っていますか?

工藤

メンターのような役割で相談や要望に応じます。内容は契約書や金融機関の融資を受ける際に提出する事業計画書のチェック、資金の調達方法、人を雇うときの手続きなど多岐にわたります。個室を利用している企業に対しては1人ずつ担当がついて、毎月経営状況をヒアリングしてアドバイスします。ここは「ふ化」を意味する「インキュベーション」の名の通り、独り立ちできるようになったら退会してもらう仕組みになっています。外で十分競争できるようになるまでサポートするのが私たちのミッションです。

木村

私たちのようなオープンオフィスユーザーも月に数回、コンサルタントとの面談の機会がありますよね。

工藤

事業が進むといろいろな問題が出てくると思います。弁護士、会計士・税理士、中小企業診断士などのコンサルタントの他に、社会保険労務士などの有資格者につなぐこともできるので、どんどん相談してください。

井上

税や法務、社会保障などは企業のコンプライアンスの根幹で大事なことですが、外だと相談は別料金だったりしますよね。起業したてだとお金をかけにくい部分なので有り難いです。今後、大学の研究成果の活用や先生とのコラボレーションを考えていますが、そういった相談も可能ですか?

工藤

コンサルタントは大学との橋渡し的役割も担っています。こちらで一度咀嚼(そしゃく)しますので、まだ先生につなぐ段階ではないと判断したら止めることもあります。

――どういう利用者が多いですか? また、井上さんたちが利用者としてこれから期待することはありますか。

工藤

学生と卒業生では、卒業生の方がやや多いです。教員が関わっている企業も利用していますね。留学生についてはビザの問題もあり、実際に起業に至るかは別問題ですが、相談自体は多いです。利用者には中国や韓国の方もいます。帰国して起業する人もいれば、日本人を共同創業者とするケースも見られますね。

井上

そういえば昨年、中国の北京にある精華大学の「TusStar(タススター)」という、インキュベーション部門と似た様な施設を訪れました。ワンフロアに300人ほどの学生がいて、それぞれが起業し会社を経営しているそうで、とにかく学生たちの熱量がすごくて刺激になりました。早稲田大学は世界の多くの大学と交流がありますし、グローバル・スタンダードな視点を持って成長できるよう、インキュベーション部門主導で何かできると面白いかと思います。また、利用者や学生とのマッチング、インターンといった人的交流が増えるとうれしいですね。学生にはわれわれのようなスタートアップ企業で自分のやりたいことをやって力を付けてもらいたいですし、逆に大学側にもわれわれを使ってほしいです。

工藤

学生の意欲も大学のサポートもグローバル・スタンダードに引き上げていかないといけないですね。成長意欲のある企業の存在はインキュベーション部門にとっても大きいです。学生には起業に少し興味がある、まだアイデアがぼんやりしているというレベルで構わないので、まず相談に来てほしいですね。相談者が増えることで利用者とのマッチングができるようになるかもしれません。

木村

いつものコミュニティーとは少し離れた場で違った見方や新しい発見があるかもしれないし、気軽に自分の考えをぶつけてみるのもいいですね。

――最後に、学生へメッセージをお願いします。

木村

学生生活は長いようであっという間なので有効に使ってほしいです。若いうちは失敗していいと思うので、その期間に人生の下積みができれば、就職でも起業でもうまくいくと思います。私自身、学生時代のたくさんの経験は卒業後に役立っています。そして少しでも起業に関心があったり、ビジネスアイデアがあって起業への判断力や知識を身に付けたいという人は、インターンシップの候補の一つに当社を入れていただけるとうれしいです。

井上

学生には大学のリソースを積極的に使うことをお勧めします。学外の施設だと時間もお金もとにかくコストがかかるので、まず大学の施設を試してみてください。ここは無料で相談できる機会があったり、設備も充実しているのに利用料が比較的安価で、とてもいい環境です。

工藤

早稲田大学は教育機関ですから、学生のうちに起業した場合も、やはり卒業してほしいです。

井上・木村

(笑)。

工藤

また、起業に関心が無くても、そういう選択肢があることを知ってほしいです。価値観は人それぞれでいろいろな道があり、人生がいつどう変わるか分かりませんから。そして起業の際はぜひインキュベーション部門を利用してください。

【プロフィール】

井上 友綱(いのうえ・ともつな) Pestalozzi Technology株式会社代表取締役社長、共同創業者。2009年早稲田大学スポーツ科学部卒業後、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)に挑戦するため単身渡米。帰国後の2014年THE CAMPを創業。その後メディカルフィットネスラボラトリー株式会社取締役最高執行責任者などを務めた。Pestalozzi Technology株式会社Webサイト https://www.pestalozzi-tech.com/

木村 隆(きむら・たかし) Pestalozzi Technolog株式会社取締役、共同創業者。2015年早稲田大学教育学部卒業後、証券会社へ入社しリテール(個人向け)営業を担当。その後大手日系IT企業に転職し、大手広告代理店を対象とした営業を経験。

工藤 元(くどう・げん) 中小企業診断士・早稲田大学 グローバルエデュケーションセンター(GEC)非常勤講師・経営管理修士(MBA)。1997年早稲田大学商学部卒業、2008年早稲田大学大学院アジア太平洋研究科(MBA)修了。大手アパレルメーカーにて商品企画・マーケティング・原材料調達・生産管理・新規事業開発などに従事した後、独立。2008年より早稲田大学インキュベーション推進室(現・リサーチイノベーションセンターインキュベーション部門)シニアコンサルタントとして、産学連携支援・大学発ベンチャー企業支援に従事。

インキュベーション部門で起業の第一歩を踏み出しませんか?

リサーチイノベーションセンター
知財・研究連携担当課長 喜久里 要(きくさと・かなめ)

早稲田大学は先行して新しいことに取り組んだり、最初の一歩を踏み出せる環境が整っていることがブランドだと思います。そしてインキュベーション部門は、何かを始めたいと考えていたり、気持ちはあるけど躊躇(ちゅうちょ)しているような学生の一歩目を後押しする場であり、その後の二歩目三歩目をもっと広いところで踏みしめて行けるよう、一緒になってチャレンジできる場でありたいと考えています。今後は利用者同士の交流ができるイベントも定期的に開催していきます。コンサルタントや以前の利用者をゲストに招いての講演会などを通して、ネットワークの連鎖が起きればと考えており、利用者の方がここを巣立って活躍できるようサポートしていきます。

起業を少しでも考えている場合は、入会前でも最初はコンサルタントが無料で相談に応じますので、事前連絡の上、ぜひお越しください。

11月19日に開催されたセミナー「新規上場(IPO)のアレコレ」(左)と、セミナー後に行った情報交換会の様子(右)

◆次回12月10日(火)開催セミナー「音楽サービスの変遷からみるエンターテック起業の可能性」の詳細はこちら

取材:小堀 芙由子(2009年、政治経済学部卒)
撮影:石垣 星児

インキュベーション部門概要

早稲田キャンパス19-3号館 インキュベーションセンター外観

早稲田大学では、2001年に「早稲田大学インキュべーション推進プロジェクト(後のインキュベーション推進室)」を開設し、アントレプレヌールシップ(起業家精神)を涵養(かんよう)し、イノベーションを生み出す人材を輩出する教育や、学生・教職員が発明した特許技術、研究成果、学習成果を活用したベンチャー企業の育成を通じ、イノベーションの創出を支援してきました。2019年6月の組織再編により、インキュベーション推進室が研究戦略センターや産学官研究推進センターなどと合併し、「リサーチイノベーションセンター」が新設されたことを受け、センターに所属する部門として新たに活動を開始しています。

インキュベーション部門が提供しているサービスを受けるためには、「早稲田大学インキュベーションコミュニティ」の会員になる必要があります(会費:月額税抜き10,000円、入会審査有り)。会員は下記の3区分がありますが、共通サービスとして、法人登記の使用やメールボックス(郵便受け)・無線LAN・オープンスペースの利用、コンサルタントによる支援があります。利用の詳細や相談は、インキュベーション部門オフィスへお問い合わせください。

◆オープンオフィスユーザー
起業準備を行っている学生や立ち上げ間もないベンチャー企業を主に想定した会員資格で、上述の共通サービスの利用が可能
◆シェアードオフィスユーザー
複数企業が共同利用するシェアードオフィスにて専用ビジネスデスクの利用が可能(共益費:月額税抜き12,000円~/台)
◆個室ユーザー
入居契約を交わした上で、施設内の個室を事業拠点として利用が可能(共益費:月額税抜き28,710円~240,000円)

全会員が利用できるオープンスペース(左)とメールボックス(右)

シェアードオフィスユーザーが利用できる専用ビジネスデスク(左)、個室ユーザーが利用できる個室エリアの様子(右)

【連絡先】
早稲田大学 リサーチイノベーションセンター インキュベーション部門
住所:〒169-0051 東京都新宿区西早稲田1-22-3
早稲田大学19-3号館インキュベーションセンター 01室
Tel:03-5286-9868
Fax:03-5286-9885
E-mail:[email protected]
Webサイト:https://www.waseda.jp/inst/inc/

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