Waseda Weekly早稲田ウィークリー

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早大研究拠点121号館はどんなところ? 研究者たちに聞く期待と実感

2020年3月に竣工した早稲田大学の新たな研究拠点・121号館。最新の建物の内部には、さまざまな分野の研究室やベンチャー企業のオフィスが設置されています。 しかし、121号館は何が優れていて、どのような研究がされているのか、なかなかイメージが湧きづらいところ。そこで今回は、実際に121号館を利用している教員や学生、企業に話を聞きました。

インタビューはオンラインで行いました。

良好なネットワーク環境と大きなカンファレンスルームが魅力

理工学術院教授 森島 繁生(もりしま・しげお)

1959年和歌山県串本町生まれ。1987年東大・工・大学院電子工学専門課程博士修了、工学博士。同年成蹊大学工・電気工学科専任講師、2001年同大教授、2004年より現職。2020年CG Japan Award他受賞多数。情報処理学会、画像電子学会フェロー。

――研究内容について教えてください。

私の研究室では情報系の研究を行っており、主に三つのテーマを扱っています。一つ目の「コンピュータビジョン」は機械に画像を入力して情報を抽出するもので、例えば1枚の写真から被写体の3D形状を予測することができます。二つ目の「コンピュータグラフィックス(CG)」では、自然界で起こる現象をリアルに表現することを追究しています。三つ目の「ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)」は、人間とコンピュータの関係性を調べるもので、9月から121号館での実験を始めました。

――実際にどのようなHCIの実験を行っているのでしょうか。

視覚障がいを持つ方が人の列の最後尾を把握し、列に追従していくためのシステムを構築しようとしています。目が不自由な方は列が把握しづらい上に、今はコロナ禍でおよそ1.5メートル間隔で並ぶ必要があるため、追従が難しい。そこで、例えばスマートフォンをかざすことで、並び方の指示が出るようなシステムを作るべく、121号館の1階に被験者を招き、実験をしています。

感染対策をしながら被験者の協力を得て、121号館で実験をしている

――121号館を利用した感想を教えてください。

121号館はネットワークの環境や空調などの環境が非常に良いですね。また、以前いた西早稲田キャンパスの研究室では二部屋に分かれて研究をしていましたが、部屋が広くなったので、学生全員が一部屋に集まることもできるようになりました。ただコロナ禍で学生全員で集まったことはまだ無く、学生がこの環境を十分に享受できていません。
また建物内には大きなカンファレンスルームがあるので、将来的にシンポジウムなども開きたいですね。あとは1階にタリーズもありますし、周囲にはランチタイムに利用できる店も多く、楽しみも増えました(笑)。

広くなった研究室で研究中の学生たち

――オンラインでの活動が続いている早大生に向けて、メッセージをお願いします。

私の研究室にはこの状況下でも頑張っている学生がたくさんいます。本年度は学会へ直接出向くことはできませんが、その分オンラインでのミーティングの機会は増え、むしろ議論は活発になっていますし、論文投稿数・採択率も上がっています。そういう場所もあることを認識してもらって、今やれる最大限のことを続けてもらえば、ピンチはそのうちチャンスにつながっていくと思います。努力を受け止めてくれるところはいっぱいありますよ。

森島研究室Webサイト:http://www.mlab.phys.waseda.ac.jp/

 

測定機械の充実でクロスカップリング反応の研究がスムーズに

大学院先進理工学研究科 博士後期課程 1年 淺原 光太郎(あさはら・こうたろう) 

山口潤一郎教授(右)と淺原さん(左)

東京都出身。穎明館高等学校卒業。2020年3月早稲田大学大学院先進理工学研究科応用化学専攻修士課程修了。同年4月より同博士課程進学、現在に至る。2020年4月より日本学術振興会特別研究員DC1。専門は有機化学、有機合成化学、有機金属化学。

 

 

――研究内容について教えてください。

山口潤一郎教授(理工学術院)の研究室でクロスカップリングに関する研究をしています。クロスカップリングは2010年にノーベル化学賞に選ばれた化学反応で、金属触媒を使って+(プラス)寄りの分子と-(マイナス)寄りの分子を合わせて、新しい分子を作る反応です。これは、医薬品や農薬、有機材料の合成に使われますが、従来の方法では、+寄りの分子を作るのに多くの段階を要するという課題がありました。そこで、私の研究では、この分子を1段階で作れるものに置き換えて、クロスカップリング反応ができないかを検討しています。1段階にすることで反応時間やコストを抑えることができ、工業的にも優れたものになると考えています。これまでに新しい反応を二つ開発し、それぞれ論文を発表しています。

――研究室は3月に121号館に引っ越したそうですが、外出自粛期間中はどう過ごしていましたか。

研究室での活動が再開した6月29日までは在宅で研究していました。その間、手を動かして実験することはできませんでしたが、調べものをできたという意味では充実した自粛期間だったと思います。同じ研究室の先輩は、この期間中にカップリング反応に関する総説を投稿していましたね。

――活動再開後、121号館を利用した感想を教えてください。

設備が充実していると感じています。特に核磁気共鳴装置(NMR)(※1)が2台あることがすごいですね。西早稲田キャンパスにいたころは、他の研究室と共同で1台のNMRを利用していたのですが、予約がすぐに埋まってしまい、気兼ねなく使えませんでした。NMRは1日4、5回使いますし、場合によっては長時間利用する必要があるので、今の状況はとても良いです。研究環境が良くなったことで、よりスムーズに自分の研究を進められると感じています。

(※1)分子を構成している原子の位置関係や、それぞれの原子が置かれた環境を明らかにできる測定機械。化学合成の分野では必要不可欠な装置。

 多様な実験機器が並ぶ研究室(左)、121号館内のミーティングスペース(右)

山口研究室Webサイト:http://www.jyamaguchi-lab.com/

 

自社実験室の活用で、ゲノム解読技術の開発が効率化

bitBiome株式会社 取締役CSO 細川 正人(ほそかわ・まさひと)

東京農工大学工学府博士後期課程修了、博士(工学)。2008年日本学術振興会特別研究員DC2、2010年同特別研究員PD、2015年JSTさきがけ研究者を務める。2013年より早稲田大学にて研究に従事。同研究成果をもとに、2018年にbitBiome株式会社を創業、現職。

――事業内容について教えてください。

当社は、ライフサイエンス分野の研究を推進するための技術を提供しています。具体的には、細胞の遺伝情報(ゲノム)を解読する技術を開発しました。従来ゲノムを解読するためには大量の細胞が必要でしたが、われわれの技術では1個の細胞だけでもゲノムを解読できます。この技術を利用することで、腸内環境を詳細に把握したり、新しい薬の候補を探索したり、病気を早期発見するための診断マーカーを作ることが期待できます。

――121号館に本社機能を移された背景と、今後のビジョンなどを教えてください。

数年前から早稲田大学と共同研究をしているため、121号館に実験室を構えました。研究開発をするベンチャー企業にとって、自社の実験室を持てることは大きなメリットです。121号館のように、大学がベンチャー企業へ施設提供する動きがあるのは非常にありがたいと思っています。おかげで業務は効率化し、研究スピードは大幅にアップしました。早稲田にいる利点を生かして、共同研究をより強力に推進し、包括的な協力や密接な連携ができれば、今後はもっと多くの先生方と一緒に仕事ができるチャンスがあると考えています。

――最後に、研究に関わる早大生に向けてメッセージをお願いします。

121号館の研究室での実験風景

学生にとって先生や仲間と研究に打ち込める時期は非常に重要です。大変な状況だと思いますが、一つでも前に進むような努力を積み重ねることによって、それが将来の糧になると思います。また私たちのようなベンチャー企業は、博士号を取っている学生を積極的に採用しています。研究を推進する力は、世の中でどんどん求められるようになっていきます。「早稲田の学生はさすがだ」と思われるように頑張ってほしいです。

bitBiome株式会社Webサイト:https://www.bitbiome.co.jp/

【次回フォーカス予告】10月12日(月)公開「どらま館特集」

「世界で輝くWASEDA」を目指して 121号館から始まる産官学連携

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