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『トットてれび』を液晶とブラウン管で見比べると…エンパク「テレビドラマ博」で歴史体感

「エンパク」の呼び名で親しまれている坪内博士記念演劇博物館は、アジア唯一の演劇・映像に関する専門博物館です。その「エンパク」で現在開催されているのが、「テレビの見る夢‐大テレビドラマ博覧会」と「山田太一展」。テレビドラマ創成期の作品から、今年の春に放映された『カルテット』(TBS、2017年)まで、名作の数々が一堂に会します。国内でテレビ局の垣根を越えて開催される、テレビドラマ史をテーマにした本格的な展覧会は今回がほぼ初めて。展示を企画した趣旨やテレビドラマの魅力について、演劇博物館館長の岡室美奈子さん(文学学術院教授)と、木原圭翔さん(演劇博物館 助手)にお話を伺いました。

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岡室 美奈子(おかむろ・みなこ)。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館館長。文学学術院教授。博士(芸術学、国立アイルランド大学ダブリン校)。早稲田大学大学院文学研究科芸術学(演劇)専攻博士課程単位取得退学。専門分野は、サミュエル・ベケットを中心とする現代演劇、演劇史、テレビ文化論、テレビ批評。共編著に『サミュエル・ベケット!―これからの批評』、『60年代演劇再考』など。日本演劇学会理事、フジテレビ番組審議会委員、ギャラクシー賞テレビ部門選考委員、コンフィデンスアワード・ドラマ賞選考委員など。

――「テレビの見る夢‐大テレビドラマ博覧会」の企画は、どのように生まれたのでしょうか。
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2階の第1展示室は、テレビドラマ創成期から1970~80年代のドラマの黄金時代、等身大の恋愛ドラマが大流行した1990年代、ごく普通の日常を描いたドラマが数多く登場する2000年代のドラマを紹介

これまで、テレビドラマの変遷をたどるような展覧会が催されたことはほとんどありませんでした。というのも、日本でテレビの本放送が始まったのが1953年と歴史が浅く、また、芸術作品とされる映画と異なり、消耗品として捉えられてきたからだと思います。また、初期のドラマは生放送で放映されていたことや、その後導入されたVTR(ビデオテープレコーダー)が高価で、長い間上書きして使用された結果、当時の映像が残っていないということもあります。

テレビドラマの記憶はきっと皆さんの中にあるはずで、日常生活に溶け込んだ重要な文化です。携帯電話でドラマを視聴し、ネットドラマが人気となってきた今の時代に、あらためてテレビドラマの歴史を見つめ直し、テレビドラマ文化を盛り上げたいと思いました。

――見どころはどんなところですか。
2階の第二展示室には、『逃げ恥』(TBS、2016)と『カルテット』(TBS、2017)のコーナーが。映像やスチール写真など、ドラマの感動を味あうことができる

2階の第2展示室には、記憶に新しい2010年代のドラマを紹介。恋ダンスなどで話題を呼んだ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS、2016年)や『カルテット』(TBS、2017年)のコーナーも

『円盤来たる』(NHK、1959)和田勉スクラップブック、表紙デザイン ワダエミ 個人蔵 図録

『円盤来たる』(NHK、1959年)和田勉スクラップブック、表紙デザイン ワダエミ 個人蔵

大きな見どころの一つは、今はほとんど姿を見ないブラウン管テレビの数々です。ブラウン管を通して、古いドラマを当時の映像感で視聴していただけるよう工夫しました。また、所蔵資料に加え、テレビ局や脚本家、演出家などの協力を得て集めた約300点の大変貴重な資料を展示しています。

和田勉さん(1953年文学部卒)コーナーでは、演出家として携わった『円盤来たる-膝ゆすりの英雄たち」(NHK、1959年)にまつわる新聞記事や出演者からの手紙の他、撮影風景写真、舞台装置図などがまとめられたスクラップブックなどを展示。「ガハハおじさん」の愛称で親しまれた和田さんの、几帳面な一面が伝わります。スクラップブックの表紙は、妻でアカデミー衣装デザイン賞を受賞した衣装デザイナーのワダエミさんがデザインしたもの。今回特別にお借りしました。

『七人の刑事』「ふたりだけの銀座」台本(改訂稿)個人蔵

『七人の刑事』「ふたりだけの銀座」台本(改訂稿)(TBS、1967年)個人蔵

同会場では、『七人の刑事』(TBS、1961~69年)という刑事ドラマの草分けとして知られる作品も上映しています。これは、1960年代から膨大なドラマを手掛けた演出家・今野勉さんの作品なんですが、ストーリーも今の時代に十分通用する名作で、映像もかっこいいです。残念ながら、現存する映像は2話のみ。展示室では、そのうちの「ふたりだけの銀座」(1967年)を流していますので、ぜひ見ていただきたいです。

ホームドラマにも焦点を当てました。特に”伝説の実験ドラマ”といわれた『お荷物小荷物』(朝日放送、1970~71年)は、女優・中山千夏さんが、役名と本名の両方で出演するなど、虚実を超える演出がなされています。唯一現存する最終回の映像は必見です。お茶の間を再現した空間で当時の気分を味わいながら楽しんでください。

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3階の展示室は巨大なアートでお茶の間を再現。当時にタイムスリップした感覚で『お荷物小荷物』を鑑賞できる

ここ最近のものとしては、『あまちゃん』(NHK、2013年)の脚本家・宮藤官九郎さんや、今年放送された『カルテット』(TBS、2017年)の脚本家・坂元裕二さんらの資料や映像も展示しています。宮藤さんは、『池袋ウエストゲートパーク』(TBS、2000年)で一躍有名になりましたが、今回は、初めて単独で脚本を手掛けた『コワイ童話 親ゆび姫』(TBS、1999年)の映像を紹介しています。そこにはまだ10代であった俳優・高橋一生さんも出演していて、見つけた学生が驚いていました。そういった貴重な映像に出合えるのも楽しみの一つだと思います。

―― 作品はどのように選んだのでしょうか。

展示している作品は、テレビドラマ史研究を視野に入れながら、人の心のひだを丁寧に、細やかに描いた作品を中心に集めました。日本のドラマの良いところは、アメリカのドラマのように派手なストーリー展開ではなく、日常会話の中からストーリーが立ち上がっていくところです。

――早大生に特に見てほしいところはどこですか。
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2階第1展示室の『トットてれび』のコーナー。映像をブラウン管と液晶の両方のテレビで楽しむことができる

やはり、テレビドラマの歴史です。若い世代は、古いドラマにはあまり興味がないかもしれませんが、日本には初期のころから、面白いドラマが本当にたくさんありました。今回、メーン展示として、女優・満島ひかりさんが黒柳徹子さんの半生を演じた『トットてれび』(NHK、2016年)の映像を、ブラウン管と液晶の両テレビで流しています。テレビドラマの創成期から現代までをつなぐ作品を新旧のテレビ画面で見てもらうことで、テレビドラマの歴史を感じてもらえたら幸いです。

――関連イベントも好評ですね。これから参加できますか。
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2階第2展示室。朝ドラの最高峰といわれる『カーネーション』(NHK、2011~12年)の衣裳(レプリカ)、大きな映像、スチールが目に飛び込む

『カーネーション』台本 NHK、2011-12 個人蔵

『カーネーション』台本 NHK、2011~12年 個人蔵

旬な女優の一人である尾野真千子さんを招き、「尾野真千子が語るテレビドラマ 『カーネーション』を中心に」を7月21日(金)に大隈記念講堂大講堂で開催します。尾野真千子さんは、昨年NHKで放送された『夏目漱石の妻』でも素晴らしい演技を披露され、たくさんの賞を受賞されました。募集は6月19日(月)10:00から始まっています。(申込先着順)

心を揺さぶる名ぜりふの数々 早稲田大学芸術功労者 脚本家・山田太一

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木原 圭翔(きはら・けいしょう)。早稲田大学坪内博士記念演劇博物館助手。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。専門は映画理論、ハリウッド映画論、テレビ論など。

テレビドラマ史に名作を数多く発表してきた山田太一さん(1958年教育学部卒)が、2016年に「早稲田大学芸術功労者」として顕彰されたことを記念した特別展です。脚本に加え、小説や戯曲の執筆など、多彩な創作活動の歩みを紹介しています。

中でも『岸辺のアルバム』(TBS、1977年)は、テレビドラマ史の金字塔として語り継がれており、そのセットスケッチ・図面からは、作品細部へのこだわりが伝わってきます。唯一の映画監督作品『ベンチ・リョード』(1968年)は、現存フィルムが確認されていませんが、ご本人からお借りした撮影風景写真や台本から、幻の作品の内容を伺い知ることができます。2016年末から刊行された脚本シリーズ『山田太一セレクション』(里山社)に寄せた直筆原稿も展示しています。

学生にとっては、知らない作品ばかりかもしれません。しかし、例えば『ふぞろいの林檎たち』(TBS、1983年)は、大学生が主人公の群像劇であり、描かれた姿は現代にも通じ、身近に感じることができるのではないでしょうか。

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山田太一作品をまとめた書籍の数々

 

関連イベントとして、記念座談会「堀川とんこう×中村克史×長谷正人/山田太一ドラマの演出」を、7月12日(水)に小野記念講堂で開催します。堀川とんこうさんと中村克史さんは演出家。長谷正人先生(文学学術院教授)は、山田太一研究の第一人者です。座談会では、山田作品を具体的にどのように演出したのか、その技法について掘り下げたお話が聞けるのではないかと思います。募集は現在受付中です(申込先着順)。ぜひご参加ください。

週末はガイドツアーが楽しい!

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演劇博物館(通称:エンパク)では、館内のガイドツアーを行っています。エンパクのサポーターズクラブ「双柿会(そうしかい)」のボランティアガイドが、展示をはじめ、エンパクの創立者・坪内逍遙や歴史ある建物についてなど、エンパクの魅力をまるごと解説します。

一人で見るだけではわからない演劇の世界を、こぼれ話を交えて知ることができ、楽しみながら館内を回ることができます。

「テレビの見る夢‐大テレビドラマ博覧会」「山田太一展」が終わると、「エンパク」は2018年の博物館創立90周年記念事業の準備のため、2017年8月7日(月)~2018年3月22日(木)の間休館します。現在の展示室の様子や資料を見学できるのは、8月6日(日)までです。ガイドツアーに参加して、貴重な展示品を見ておきましょう。ご希望の方は、開館日の金・土・日曜日13:00~16:30の間に「エンパク」1階廊下にてお申し付けください。随時ご案内します。なお、「エンパク」休館日はガイドツアーもお休み。開館日は事前にWebサイトにてご確認ください。

【次回特集予告】6月26日(月)公開「障がい学生支援特集」

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