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完全ワイヤレス人工心臓の実用化に向けてNEDO「NEP躍進コース」に新規採択

2025年度 NEDO「NEP躍進コース」に採択
国立循環器病研究センター×早稲田大学×Helioverseで「世界初」電源ケーブルの無い人工心臓の開発へ!!

~「日本発」技術で世界の心不全患者に「普通の生活」を~

発表のポイント

  • 世界初電源ケーブルの無い人工心臓開発、国立循環器病研究センター×早稲田大学×HelioverseがNEDO採択で加速
  • 2030年治験開始予定、世界約5.5万人の心不全患者に「普通の生活を取り戻す」革命

Helioverse Innovations Japan株式会社が事業代表者となり、学校法人早稲田大学と国立循環器病研究センターの3者は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施する2025年度「研究開発型スタートアップの起業・経営人材確保等支援事業/ディープテック分野での人材発掘・起業家育成事業(NEP)/躍進コース」に採択されました。

世界最長の人工心臓開発の歴史を誇る米国Cleveland Clinicからのメンバー、生体医工学の世界的権威である早稲田大学岩﨑清隆研究室、循環器医療のトップクラスの研究機関である国立循環器病研究センター、そして電源ケーブルの無い人工心臓実現を目指すHelioverse Innovations Japan株式会社の日米間トップ機関の最強タッグにより、「電源ケーブルレス低侵襲補助人工心臓と生体ワイヤレス電源の研究開発」を推進しています。世界初の完全ワイヤレス人工心臓の実用化を通じて、「体内エレクトロニクスの新時代」を切り開き、末期重症心不全患者様に「普通の生活を取り戻す」ことを目指します。

※本事業の早稲田大学代表研究者は理工学術院の岩崎清隆教授です。

深刻化する「心不全パンデミック」を、日本発の革新技術で解決する

日本の心不全患者は現在約120万人を超え、2030年には約130万人に達すると予測されています。高齢化の進展により「心不全パンデミック」と呼ばれる社会課題が深刻化しており、革新的な治療法の開発が急務となっています。

現在、人工心臓治療により末期心不全患者さんの5年生存率は約70%を超え、心臓移植に並ぶ主要な治療選択肢として確立されています。しかし、既存の植込み型補助人工心臓には、皮膚を貫通する太い電源ケーブル(ドライブライン)が必要であり、患者さんの約22%がデバイス感染を発症し、深刻なケースでは生命に関わるという課題が残されています。この電源ケーブルは、入浴、旅行、就労など日常生活に大きな制約をもたらし、患者さんのQOL(生活の質)を著しく損なう原因となっています。

世界初の生体内ワイヤレス電源システムが、すべてを変える

Helioverse Innovations Japan株式会社が開発する世界初の完全ワイヤレス人工心臓システムは、この感染リスクを根本的に解決します。

高効率ワイヤレス給電技術により、体外から体内へケーブルなしで安全に電力を供給し、超小型磁気浮上式血液ポンプとの統合により、低侵襲なカテーテル手術での植込みを実現します。これにより、デバイス感染リスクを現在の約22%から劇的に低減することが可能となります。

本技術は、単なる医療機器の改良ではありません。ペースメーカの約1,000倍の電力を必要とするインプラント医療機器を安全かつ確実に稼働させるワイヤレス電源システム技術は、人工心臓のみならず、人工腎臓 (透析市場約14.6兆円)、人工肺(市場規模約6,000億円)、神経刺激装置など、様々な開発中の植込み型医療機器への応用展開が可能な「体内エレクトロニクスの新時代」を切り開く基盤技術です。

 なぜ今、この技術が求められるのか ── 3つの社会的背景

  1. 深刻化する「心不全パンデミック」

日本の心不全患者は120万人を超え、「心不全パンデミック」と呼ばれる社会課題に直面しています。2030年には130万人に達すると予測され、低侵襲で長期使用可能な革新的治療法の開発が喫緊の課題です。世界では年間約5.5万人が重症心不全により人工心臓を必要としており、グローバルな医療ニーズが急拡大しています。

  1. 医療機器産業の構造転換 ── 「医療機器輸出大国」実現の試金石

2021年、日本の医療機器市場において輸入額は約2.8兆円、市場の66.5%以上を輸入が占めています。政府の「医療機器産業ビジョン」において、革新的医療機器の国産化は国家戦略として位置づけられています。

本プロジェクトは、日本が誇る精密工業技術・エレクトロニクス技術・材料技術を結集し、「医療機器輸出大国」実現の試金石となる象徴的プロジェクトです。約1兆円の輸入超過にある日本の医療機器産業の構造転換に貢献し、世界市場で戦える日本発の革新的医療技術を確立します。

  1. 「体内エレクトロニクスの新時代」への期待

世界のヘルステック投資は年間30兆円超に達し、ESG投資の観点からも、患者QOL向上と医療費削減を両立する革新的技術への注目が集まっています。本技術は、人工心臓に留まらず、人工臓器、体内センサー、神経刺激デバイスなど、将来的に市場規模200億ドル超の新産業基盤を創出する「体内エレクトロニクスの新時代」の扉を開く基盤技術です。

期待される効果 ── 患者さんの未来と日本の医療産業を変える

<患者さんへの便益>

  • 感染リスクの劇的低減: デバイス感染発症率を現在の約22%から大幅に減少
  • 「普通の生活を取り戻す」: 電源ケーブルからの解放により、入浴・旅行・就労など日常生活の自由を実現
  • 低侵襲治療の実現: カテーテル手術による植込みで、患者さんの身体的負担を大幅に軽減
  • 適応患者さんの拡大: 長期在宅療養が可能となり、年間世界約5.5万人の重症心不全患者様に貢献

<産業・社会への貢献>

  • 日本発技術の世界標準化: 生体内ワイヤレス電源技術のデファクトスタンダード確立
  • 医療機器産業の国際競争力強化: 世界の補助人工心臓市場は、複数の市場調査によれば2035年前後に約70〜80億ドル規模に達するとの予測があり、成長シナリオ次第ではさらなる拡大余地も見込まれている中、およそ30%シェア獲得を目指す
  • 医療機器貿易赤字の解消: 約1兆円の輸入超過にある日本の医療機器産業の構造転換に貢献
  • 「体内エレクトロニクスの新時代」創出: 人工腎臓(透析市場約14.6兆円)、人工肺(市場規模約6,000億円)など他の体内医療機器への応用展開により、2035年には関連市場規模200億ドル以上の新産業基盤を創出
  • 日本のものづくり復権: 精密加工、電子部品、材料技術など日本企業の強みを活かし、「医療機器輸出大国」実現の試金石として、製造業復活の象徴的プロジェクトとして貢献

国循×早稲田×Helioverse ── 日米施設による開発体制

本事業は、各分野のトップランナーが結集した強固な産学連携体制により推進されます。

【早稲田大学 岩﨑清隆研究室】

生体内環境を模した拍動循環シミュレータ技術および血液適合性評価の世界的権威として、血液ポンプ内外の血流シミュレーション、血栓・血球損傷リスク抽出を担当します。最適な流路設計と羽根形状の開発サポートにより、長期使用における安全性を実現します。

早稲田大学 理工学術院 岩﨑 清隆教授のコメント

左心補助人工心臓は近年大きく発展し、重症心不全治療において不可欠な医療機器となっています。一方で、高い電力を必要とする人工心臓では、体内へエネルギーを供給するためのケーブルが必須であり、体内と体外を貫通するドライブラインに起因する感染が長年の課題となっています。

人工心臓の駆動に必要な電力を完全ワイヤレスで供給できる技術が確立されれば、患者さんの感染リスク低減とQuality of Lifeの向上に大きく貢献するとともに、臨床現場における負担軽減にもつながり、心不全治療に新たなパラダイムをもたらすものと期待しています。

【国立循環器病研究センター 循環動態制御部】

循環器医療における日本トップクラスの研究機関として、生体環境下での機能性・安全性評価を実施します。臨床応用に向けた科学的エビデンスの構築を推進します。

国立循環器病研究センター 循環動態制御部 室長 朔 啓太氏のコメント

ドライブライン感染は人工心臓開発における大きな課題であり続けています。黒田社長率いるHelioverse Innovationsの完全ワイヤレス技術であれば、この問題を解決し、患者さんに貢献できると考えています。

この日米トップ機関による最強タッグにより、基盤技術開発から実氏証、臨床試験、事業化まで、多段階の産学官連携体制を構築しています。

Helioverse Innovations Inc. CEO 黒田 太陽氏のコメント

この度のNEDO NEP躍進コースへの採択を、心より光栄に思います。Cleveland Clinic、早稲田大学、国立循環器病研究センターという日米トップ機関の最強タッグにより、世界初の完全ワイヤレス人工心臓の実用化を大きく加速させてまいります。

私は米国Cleveland Clinicで人工心臓の研究開発に携わり、それ以前は心臓外科医として多くの患者さんと向き合ってきました。現在の人工心臓は生命を救う一方で、電源ケーブルによる感染という深刻な課題を抱えています。患者さんの約22%が感染を経験し、入浴も旅行もできない生活を強いられています。この現実を目の当たりにし、「必ずこの課題を解決する」という強い使命感を持って起業しました。

私たちが開発するワイヤレス給電技術は、単なる医療機器の改良ではありません。『体内エレクトロニクスの新時代』を切り開く基盤技術として、将来的には人工臓器や体内センサーなど、様々な医療機器への応用が期待されます。日本が誇る精密工業技術とエレクトロニクス技術を結集し、『医療機器輸出大国』実現に向けた重要な一歩として、日本発の革新的医療技術を世界へ届けます。

深刻化する『心不全パンデミック』という社会課題に対し、産学官一体となった開発体制で挑みます。2030年の臨床治験開始に向け、一日も早く安全なデバイスを患者様にお届けし、世界中の患者様に『普通の生活を取り戻していただく』ことが私たちの使命です。この革命的技術により、日本から世界の医療を変えてまいります。

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