電力系統の混雑緩和を実現するシステムのフィールド実証を開始
2050年カーボンニュートラルに向け、分散型エネルギーリソースの活用による配電用変電所の混雑緩和の実現性を検証
学校法人早稲田大学は、東京電力パワーグリッド株式会社、株式会社三菱総合研究所、関西電力送配電株式会社、京セラ株式会社、国立大学法人東京大学生産技術研究所(東京大学)、中部電力パワーグリッド株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社、東京電力ホールディングス株式会社および三菱重工業株式会社の10者からなるコンソーシアム(以下、「本コンソーシアム」)において、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)とともに「電力系統の混雑緩和※1のための分散型エネルギーリソース制御技術開発 (FLEX DERプロジェクト)」(以下、「本事業」)に取り組んでいます。
本年5月1日より、本事業において、蓄電池などの分散型エネルギーリソース(以下、「DER」)※2を活用した系統混雑緩和の実現性を確認するフィールド実証を開始したことをお知らせします。
フィールド実証では、実際の電力系統に実証用システムを構築し、配電用変電所の混雑緩和の実現性を確認するための技術的検証を行います。具体的には、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の導入拡大によって大量に連系された太陽光発電の発電電力により、将来、配電用変電所の変圧器において混雑の発生が懸念される栃木県那須塩原市内の特定エリアにて実証用のDERフレキシビリティシステム※3の検証を行います。
この検証結果を既存設備に最大限活用し、再エネ導入量を拡大させるためのシステム開発に活かすことで、2050年カーボンニュートラル実現に貢献してまいります。
- 本事業における早稲田大学の担当部門は、スマート社会技術融合研究機構(機構会長 林泰弘、機構長 田辺新一 )です。
【注釈】
※1:再エネの大量導入時に、再エネにより発電された電力が電力系統へ大量に送り込まれることにより、電力系統の送配電線の電力潮流が増加し送配電可能電力量が減少することを電力系統の混雑という。一方、この混雑を解消する取り組み(負荷の消費電力を大きくし再エネの発電電力を吸収するなど)により送配電可能量が回復することを混雑緩和という。
※2:発電設備や蓄電設備、電気自動車、ヒートポンプなどの需要設備の総称。「Distributed Energy Resources」を略して「DER」とも呼ばれる。
※3:DERフレキシビリティとは発電電力や負荷の消費電力の大きさを柔軟に変化させることが可能な能力。本事業で、DERフレキシビリティシステムは、下図に示す三つのシステム/プラットフォームにより構成されるものと定義して開発を進めている。図中の「DSO」は「Distribution System Operator」の略で、一般送配電事業者である配電系統運用者を指す。
「電力系統の混雑緩和のための分散型エネルギーリソース制御技術開発 (FLEX DERプロジェクト)」の概要
1.背景
「第6次エネルギー基本計画」で示された「再生可能エネルギーの主力電源化」に向け、系統の増強と並行しながら既存系統を最大限に活用するために必要な技術開発が求められており、その一つとして分散型エネルギーリソース(以下、「DER」)の出力を制御し、電力系統の混雑緩和を行う技術があります。
本事業※1では、再生可能エネルギー(以下、「再エネ」)の発電電力に起因して混雑が生じる配電用変電所の変圧器を対象に、その供給エリアにおいて、アグリゲーター※2などと一般送配電事業者をつなぎ、DERの電力需要パターン制御(需要シフトなど)をすることで混雑緩和を実現するDERフレキシビリティシステムの構築に向けた技術開発を行っています。
2.フィールド実証の概要
(1) 概要
本事業では、DERフレキシビリティを活用した系統混雑緩和の実現性をフィールド実証により確認するため、検討事項を「一般送配電事業者における課題検討」(WG1)、「DERフレキシビリティ活用プラットフォームにおける課題検討」(WG2)、「アグリゲーターにおける課題検討」(WG3)、「フィールド実証」(WG4)の四つの項目に分類しております。
今回の栃木県那須塩原市におけるフィールド実証に向けては、一般送配電事業者がDERフレキシビリティを調達する際の募集要件やデータ連係手順案などを反映した業務フロー案を基に、各項目(WG)間で連携しながら検証項目の抽出やユースケースの設定、シナリオ案の作成について取り組むとともに、DERの導入(系統用蓄電池システムの設置など)や各種測定器の設置などフィールド実証の環境構築を並行して進めてきました。
このたび、フィールド実証の準備が整ったため、本年5月1日より、フィールド実証を開始しました。大量に連系された太陽光発電の発電電力により、配電用変電所の変圧器で混雑が発生することを想定し、複数のユースケースに沿って、実証用のDERフレキシビリティシステムの検証を行います。

フィールド実証のイメージ
(2) 実証期間
2024年度中に複数時期にて実証を行う予定であり、第1回目は2024年5月14日までの予定で5月1日に開始しています。
(3) 実証場所
太陽光発電を主とする再エネの導入拡大により、将来、混雑の発生が懸念される栃木県那須塩原市にある配電用変電所を抽出し、選定されたエリアにてフィールド実証を行います。
3.今後の予定
NEDOと本コンソーシアム※3は、本フィールド実証での検証結果を基に、DERフレキシビリティシステムの要求仕様をまとめ、標準的な業務フローや通信仕様を確立します。
これによりDERを最大限活用できる仕組みを実現し、国内における再エネのさらなる普及拡大に貢献します。
【注釈】
※1 事業名: 電力系統の混雑緩和のための分散型エネルギーリソース制御技術開発(FLEX DERプロジェクト)
事業期間: 2022年度~2024年度
事業概要: [https://www.nedo.go.jp/activities/ZZJP_100237.html]
※2 DERなどを統合制御し、エネルギーサービスを提供する事業者。
※3 東京電力パワーグリッド株式会社、学校法人早稲田大学、株式会社三菱総合研究所、関西電力送配電株式会社、京セラ 株式会社、国立大学法人東京大学、中部電力パワーグリッド株式会社、東京電力エナジーパートナー株式会社、東京電力ホールディングス株式会社、三菱重工業株式会社の10者を指します。図2の四つの項目(WG)に分類し、各WG間で連携して検討を実施しています。

本コンソーシアムにおける各者の役割
参考
系統用蓄電池システムの概要
フィールド実証用に設置した系統用蓄電池システムを東京電力パワーグリッド:箒根蓄電所として運用開始しております。
<設備情報>
設置場所:栃木県那須塩原市関谷地区
設備面積:528㎡
設備容量:リチウムイオン電池
・出力:1,999kW
・公称電力容量:6,310kWh

<設備外観>

<PCS盤>

<蓄電池コンテナ>