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理工学術院・黒田研究室が新規金ナノ構造体の合成法を発見 金属資源の有効利用・高機能材料創製への貢献が期待されます

理工学術院・黒田研究室が新規金ナノ構造体の合成法を発見
金属資源の有効利用・高機能材料創製への貢献が期待されます

2010/11/02

早稲田大学理工学術院の黒田一幸教授と黒田義之博士課程大学院生は、二酸化ケイ素(シリカ)からなるナノ粒子の集合体を鋳型として用いた凹凸構造金ナノプレートの合成手法を発見しました。これは、ナノ粒子集合体をフレキシブルな鋳型とし、従来の鋳型の概念では不可能なナノ構造・形態制御を達成した初めての成果で、今後様々なナノ構造体の創製につながると期待されます。成果は独一流化学誌(Angewandte Chemie International Edition)に9月17日付けで公開され、英科学誌ネイチャー(Nature)に10月21日付けでNews & Viewsに紹介されましたので、お知らせ致します。

 

図1. 従来・新規手法の概念図

従来手法では鋳型のネガ構造が形成されるが、新規手法では鋳型が部分的にへき開し、板状に形態制御されたナノ構造体が形成される。

図2. 金ナノ構造体の走査電子顕微鏡像

ナノ構造体は薄い板状の形態を有し、その表面には40 nmの半球状の凹凸が規則正しく並んでいる。この凹凸にナノ粒子を配列させることもできる。

研究内容概要「ナノ粒子集合体は場面に合わせた有用な鋳型に構造変化する」

金をはじめとする無機物のナノ構造体の開発は、ナノテクノロジーの発展に欠かせません。従来、有機物のナノ集合体やシリカナノ構造体などを鋳型とし、様々な無機物のナノ構造体が合成されてきました。しかし、従来の方法では得られるナノ構造は必然的に鋳型の構造とネガポジ関係にあるネガ構造に限定され、ナノ構造の多様性や形態の制御性に課題がありました。

本研究では、粒径40 nm程のシリカナノ粒子が結晶状に規則的に配列した物質(シリカナノ粒子集合体)を鋳型として用い、集合体の構造が崩れることで金のナノ構造・形態をより効果的に制御するという、従来の概念では説明できない現象を見出しました(図1)。これまでにも鋳型を用いた金のナノ構造制御は多数試みられてきましたが、金の結晶成長が早く、鋳型の構造を壊してしまうため、制御できるナノ構造は比較的単純なものに限られていました。私たちは、逆に従来のものよりも崩れやすいと考えられるシリカナノ粒子集合体を鋳型として用いました。シリカナノ粒子集合体では、内部で金が成長することで部分的に亀裂が生じると考えられます。しかし、シリカナノ粒子が規則正しく並んでいるため、あたかも結晶がへき開する様に、亀裂の構造が良く整っていることが分かりました。金はこの亀裂の内部を平面的に成長し、板状に形態制御されたと考えられます。亀裂の内壁を構成するシリカナノ粒子は、さらにナノスケールの鋳型となり、板状の金の表面に規則的な凹凸構造を形成させました(図2)。生成物は単結晶であり、従来の方法では困難だった結晶状態の制御も容易に達成されることも分かりました。

従来の方法では、1つの鋳型から得られるナノ構造体は1通りでしたが、本研究の概念を用いるこ とで、1つの鋳型から多数のナノ構造体を作り分けられる様になり、論文中ではこの実例も示してい ます。本研究はナノ構造体創製の分野でのブレークスルー、多岐にわたる展開の可能性が話題を呼び、独一流化学誌(Angewandte Chemie International Edition)に掲載されると共に、英科学誌ネイチャー(Nature)のNews & Viewsにて紹介されました。

 

今後の展開

金は高価な金属資源ですが、近年では金にナノ構造を付与することで光学物性、触媒活性などの機能を発現することが報告され、最も注目を集めている素材の1つと言えます。本研究の様なナノ構造制御技術を発展させることで、この様な資源を少量で有効に利用する手立てが得られると考えられ、元素戦略を推進する我が国の産業に欠かせない基盤技術になると期待されます。 今回用いたシリカナノ粒子の他にも様々なナノ構造物質が類似の鋳型となると考えられ、鋳型の探索、用いる無機物の探索を進める必要があります。本研究の新規手法と従来の無機物の合成手法を組み合わせることで、合理的な物質設概念の構築、幅広いナノ構造体の創製が期待できます。これらのナノ構造体は光学・電子デバイス、センサー、触媒等の材料として、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、環境・エネルギーなどの分野への貢献が期待されます。

 

論文題目

Morphosynthesis of Nanostructured Gold Crystals by Utilizing Interstices in Periodically Arranged Silica Nanoparticles as a Flexible Reaction Field
(規則的に配列したシリカナノ粒子間隙を柔軟な反応場として用いたナノ構造金結晶の形態制御された合成)

著者:
黒田義之(早稲田大学先進理工学研究科 大学院博士課程)
黒田一幸(早稲田大学理工学術院 教授)

論文の英文抄録:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.201002430/abstract

Nature の紹介記事:http://www.nature.com/nature/journal/v467/n7318/full/467923a.htm

 

問合せ先

黒田研究室(電話:03-5286-3199、E-mail:[email protected]

 

 

以 上

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