早稲田大学高等研究所・品田賢宏准教授と理工学術院・堀匡寛博士課程大学院生らのグループは、信頼性の高い単一原子ドーピング法を開発し、半導体集積回路に用いられるトランジスタの閾値電圧(オン/オフ電圧)が個々のドーパント位置の影響を与えることを明らかにし、その抑制方法を提案しました。2010年12月6日から米国サンフランシスコで開催される International Electron Devices Meeting (IEDM)において研究成果を発表しました(講演番号26.5)。
1947年にトランジスタが発明されてから、徹底した微細化によって集積回路の高性能化が実現され、過去50年以上に渡り半導体産業は急速な成長を遂げてきました。今日、トランジスタの最小寸法は30nm程度、10億個に及ぶ素子が集積され、エレクトロニクス製品に使われています。通常、トランジスタの閾値電圧を設定するためにドーパントが添加されます。これまでドーパントは均一に分布すると仮定されてきましたが、極度に微細化したトランジスタではドーパントの離散性が顕在化し、ランダムな分布故に閾値電圧のばらつきが問題となり、ドーパントを使わないデバイス開発も進められている状況です。
研究グループは、単一原子ドーピング法におけるドーパント個数制御性を高め、トランジスタ中にドーパントの規則的な構造を作り込むことでばらつきを抑制すると共に、駆動電流が増加することを見出しました。シミュレーションでは予想されていましたが、今回初めて実証に成功しました。これまで不可能と考えられていたドーパント1個が制御されたトランジスタ研究に道を拓く成果です。より低コストで単一ドーパントが精密に制御されれば、既存の半導体集積回路技術は少なくとも10年延命する道筋を示しました。
本研究は、主に米国Semiconductor Research Corporation(課題番号1676.001)および文部科学省科学研究費若手研究A(課題番号22681020)の助成を受けて遂行されました。
以 上