早稲田大学リサーチアワード
WASEDA RESEARCH AWARD
本学では、独創的研究の推進と国際的な情報発信力の強化を目的として、2014年に早稲田大学リサーチアワードを設け、大規模な研究を主導的に推進している研究者および国際発信力の高い研究業績をあげている若手研究者を表彰しています。
本アワードには、大型研究プロジェクト推進(Large Research Project)と国際研究発信力(High-Impact Publication)があり、それぞれ正賞(賞状)ならびに副賞(大型研究プロジェクト推進は賞金50万円、国際研究発信力は賞金10万円)が授与されます。
早稲田大学リサーチアワード(大型研究プロジェクト推進)受賞者
WASEDA RESEARCH AWARD(Large Research Project)
(50音順)
年度 | 氏名 | 研究課題名 |
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2015年度 | 大木 義路 | 電気・計装設備の長期健全性評価技術調査研究 |
大聖 泰弘 | 燃料改質システムを利用したハイブリッド燃焼による熱効率向上 | |
巽 宏平 | ハイブリッド自動車向けSiC耐熱モジュール実装技術の研究開発 | |
西出 宏之 | 光電荷分離ゲルによる屋内用有機太陽電池の研究開発 | |
林 泰弘 | エネルギーマネジメントシステム標準化における接続・制御技術研究事業 デマンドレスポンス実現に向けた国際標準化に係る先端研究 |
早稲田大学リサーチアワード(国際研究発信力)受賞者
WASEDA RESEARCH AWARD(High-Impact Publication)
(50音順)
年度 | 氏名 | 受賞理由 |
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2015年度 | 大須賀 沙織 | 大須賀氏はこれまでフランス語による著書と学術論文の発表に意欲的に取り組んできた。その数多くの業績の中でも、博士論文をもとに2012年にパリで刊行したSéraphîta et la Bible : Sources scripturaires du mysticisme balzacienは、これまでの世俗的小説家としてのバルザックのイメージを大きく塗り替えることに成功し、フランス人にも知り得ないその魅力を明らかにしたと高く評価されている。その影響はバルザック研究者ばかりではなく、世界の神秘思想愛好家まで及ぶ。同氏の神秘主義的傾向を跡づける作業は、バルザックにとどまらず、この大作家を通してゴーティエやボードレール等の以後の世代へとつながることを証明し、フランス19世紀文学において正確には知られてこなかった側面を明確にすることにも成功している。当該著書をはじめとする同氏の積極的で優れた国際発信力に鑑みると、今後さらなる活躍が期待される。 |
黒田 義之 | 黒田氏の研究は、コロイド結晶を型材に用いた新規な無機多孔体の構造設計にもとづくものであり、他の研究者とは異なる高い独創性が認められる。同氏はこれまでに粒子配列を精密に反映させた階層的構造制御を行うことで、コロイド結晶の本質を活かした構造設計法を確立している。また、目的物質が生成する際の型材の構造変化を巧みに利用し、新たな構造設計を提案している。さらには、マクロ多孔体という新たな物質系の研究を進めており、国内外でその研究活動が注目されている。 同氏の展開してきたナノ材料の作製技術は将来のコア技術であり、応用技術開発の基礎をなすものである。研究が単に目新しいだけでなく、同氏の手法や開発した材料には学術的観点から幅広い応用と社会的波及効果が期待されており、その研究成果は化学分野の最高峰の論文誌に多数掲載され、高い国際発信力を示してきた。内外の研究機関との連携を通して広い視野を養ってきたことも高く評価されており、今後益々の活躍が期待される。 |
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竹内 規彦 | 竹内氏は、日本の大学に勤務する当該分野の研究者としては、最も国際発進力の高い研究者である。経営学は、マルチディシプリンの学問であり、研究者が依拠するディシプリンや得意とする方法によっては国際的な発信が難しい場合もある。同氏は、社会心理学というディシプリンに依拠して巧みにテーマ設定することで、国際学会やパブリケーションの面で十分に競争力が保てるような研究を蓄積してきた。日本でしか探求できない独特の人的資源管理をテーマ設定に結びつける研究戦略も評価に値する。 キャリアのスタートから国際志向が高く、英文書籍(分担執筆)、英語論文の点数は、経営学という分野においては圧倒的とさえいえる。Financial Timesがトップジャーナルと評価するThe International Journal of Human Resource Managementにも複数回掲載されている(※)。査読付きのProceedingsにおいても、トップクラスの学会(ex. Academy of Management)での発表や、それに準ずるクラスの学会でのBest Paper Awardが数多くリストされている。海外の研究者との幅広いネットワークも構築されており、将来的にも国際発信力のある質の高い業績を期待できる。※ Financial Times 40 Journals (2006年版) に基づく。 |
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立和名 博昭 | 理学的な生命科学の研究は世界中で競争が激しいが、そのような中でも、若手でありながら立和名氏の業績は同年代の研究者たちと比して特筆すべきものがある。同氏は世界的に著名な一般科学誌への論文発表が多く、このことは広い分野の研究者にインパクトをアピールできるものであることを示している。特に、世界中で激しく議論が展開されてきた、染色体セントロメア領域のクロマチン基盤構造の解明を世界で唯一原子分解能で成し遂げ、この議論に重要な結論を与えた。この業績は、先進性、独創性、独自性のすべての面で世界トップレベルである。同氏は、共著者としての論文も多数発表しており、このことは内外の多くの研究者と連携して研究を進められる共同研究能力の高さを示している。学外の財団や学会での賞も受賞しており、早稲田大学の研究力を学外へアピールする良い例となっている。 | |
蓮池 隆 | 蓮池氏はオペレーションズ・リサーチの分野において、不確実性状況下における意思決定を主たる研究テーマとし、独創的かつ先進的な研究内容が高く評価されている。同氏の独創性は代表的な研究である資産配分に対する新しい評価・最適化手法の考案にあり、将来収益に限らず不確実性をパラメータにもつ様々な実問題に適用している。同氏の研究業績は、Information Science, Fuzzy Optimization and Decision Making等の高いレベルの国際学術誌で公表されており、氏の研究が学界で注目を浴びていることは明らかである。 さらに、FUZZ-IEEE、IEEE-SMCの国際会議においても研究成果を公表し、IEEE-IEEMにおいてプログラムメンバーを務めるなど国際的に高い発信力を発揮している。これとは別に、同氏の研究姿勢は理論研究だけでなく、開発した数理モデルを現実社会の問題に応用するという観点に貫かれており、金融、観光、農業などの広範な分野において、実例を用いた数値研究を実施している。以上から、同氏は独創的な数理モデルの開発と、社会的波及効果の双方を高いレベルで実現している研究者である。 |
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原口 省吾 | ステロイドホルモンは古くから研究され、一般にも知られている重要な生体の調節物質である。原口氏は、脳神経系で合成されて機能する「新規のニューロステロイド」の存在を明らかにした。加えて、他の研究者とは一線を画する独自研究を展開し、中枢神経系近傍の松果体でニューロステロイドが多く合成されることを発見した。これらの成果は動物の行動や記憶、情動に関する種々の謎を紐解く可能性があり、将来の発展性を含めて極めて注目すべき研究である。研究成果は、一流国際誌上において多く発表されており、世界な認知度も高いと考えられる。 さらに、同氏の研究成果は、現代社会が抱える人々の精神健康における問題点、特に攻撃性、うつ、睡眠リズムなどに重要な知見を与えており、社会全体に与えるインパクトは大きい。また人間の精神世界理解の新視点をもたらす可能性がある。 |
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日野 愛郎 | 日野氏は、比較政治学の専門家として、国際的に注目を集める研究者である。とりわけ同氏の主著New Challenger Parties in Western Europe: A Comparative Analysis(London and New York: Routledge, 2012)は、新興政党の出現と台頭という普遍的な重要性をもつ問いに対し、西欧15ヵ国における1950年から2004年までの選挙をもとに、「二重ハードルモデル」という独創的な手法で接近することにより、比較政治学の国際的な発展に寄与したきわめてオリジナリティのある実証研究である。本書は、EUROPEAN POLITICAL SCIENCE誌をはじめ、すでにヨーロッパの政治学会で高い評価を獲得しており、今後も、世界の政党研究に大きな影響を与えることが期待される。また同氏は、本書の出版以前にも、アメリカ政治学のトップジャーナルに複数論文を発表しており、その活躍の範囲は、ヨーロッパに限定されない広がりを有している。こうした日野氏の活躍は、日本を研究拠点としながら、ヨーロッパ諸国を対象とする研究により、高い国際的な評価を勝ち得たという点において、国際研究発進力の重要なロールモデルとして評価されるべきものである。 | |
渡邊 克巳 | 渡邊氏は、人間がどのように心を巡らせて知覚や認識を行うのかという主観的事象を、外部からの計測によって客観的に解明するための多様な実験法を編み出しており、認知科学、心理学、脳神経科学に関する優れた業績を挙げている。同氏の研究で目立つ点は、「主観的認識内容は提示された事象の直後の出来事により再編集される」ということの検証を追っていることである。同氏の実験は、行動実験、動作解析、機能的脳イメージング法などの複数の方法を、従来にはなかった形で組み合わせており、その成果は国際誌を主体とする多数の学術論文となって現れている。このことは、複数の国際誌での編集者としての活動、海外の大学・研究所との共同研究、そして多額な研究費の獲得としても現れている。 また、同氏の研究は、人間の心の科学的解明に加え、発達障害者への療法と教育、スポーツコーチング、販売戦略等の実社会の波及性を有しており、今後のさらなる発展を期待できるものとなっている。 |