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最先端の研究を発表 「次代の中核研究者2016」

2017年4月13日、早稲田大学研究力強化本部会議にて、7人の中核研究者から研究活動の発表がありました。石山敦士研究推進理事が司会を担当し、開催にあたり「早稲田大学 次代の中核研究者育成プログラム(※後述)」について説明しました。
はじめに、鎌田薫総長から「早稲田大学は教育面では確固とした内容をもち学外の評価が高い。同様に、本学が研究大学としての評価や地位を確保するために、ここにおられる素晴らしい研究者に次世代のリーダーとして頑張っていただきたい。昨年の発表も専門外の人が聞いても大変興味深い内容であった。ぜひ本学のこのような素晴らしい研究と研究者を学内外の方に発信していきたいと考え、公開することとした」と開会の挨拶がありました。

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写真:発表会の様子。開会の挨拶を述べる鎌田薫総長。左が橋本周司副総長、右が石山敦士研究推進理事


発表した研究者は以下の通りです。(発表順)

入山章栄准教授(商学学術院)2015年度採択者

tilyuukaku2入山准教授は『入山フロンティアの経営学研究』として、研究テーマ「企業の非市場戦略」と「チーム・クリエイティビティ」を発表しました。
この研究は次の三つの柱を基に、経営学研究の国際的な発展と社会への普及啓蒙を行うものです。1つめは、企業の「非市場戦略」(Non-Market Startegy)という経営学の新しい研究分野において、経営理論に基づいた理論研究と、主に統計手法を用いた実証研究です。具体的には、インドと中国における、企業の非市場戦略としての賄賂行動の分析を行います。2つめは、クリエイティブ・チームのパフォーマンスに影響を与える要因について、大規模データを用いた実証研究です。具体的には、オリコン社から入手したデータより、1970年代以降から近年までの日本の音楽産業における「ヒット曲」を生み出す要因を統計分析により検証する。3つめは、世界標準となっている経営学の知見を、一般のビジネスパーソンに普及します。特に「作曲・作曲における Intra-personal Diversity」では他の研究者と活発な議論が飛びかいました。
また、入山准教授は近年、国内の多くのビジネスメディアに露出しており、早稲田大学の経営学分野の知名度向上に一定の貢献をすべく、アウトリーチにも力を入れていると述べました。今後は、世界標準の経営学の研究成果の創出と、一般への普及といった活動を通じて、より「学問と産業界のあいだ」を繋ぐ研究者になると抱負を語りました。

片岡淳教授(理工学術院)2015年度採択者

tilyuukaku3片岡教授は『MAKING THE INVISIBLE VISIBLE 放射線イメージングの最前線』と題して、研究テーマ「次世代宇宙科学・医療・産業へむけた高精度放射線計測の開拓」の研究について発表しました。
研究はAstro-H衛星、フェルミ衛星など国際研究プロジェクトを通じて高エネルギー宇宙物理学を牽引し、同時に宇宙品質の革新的放射線イメージセンサーを開発して広く社会に還元するものです。X線CTや非破壊・手荷物検査をはじめ福島除染に至るまで、放射線イメージセンサーの需要は高まっていますが、一方で放射線は「目に見えない」ことが恐怖心を煽りその専門性やハンドリングの難しさゆえに技術が広く普及しているとは言い難い状況について言及しました。
そして片岡教授は、20年にわたり衛星搭載機器開発に携わり、世界で初めてAPD(アバランシェ・フォトダイオード)をもちいた宇宙放射線計測などの数多くのプロジェクトを牽引しています。この技術を応用し、CT画像の「色づけ(物質同定)」、ガンの早期発見に役立つPET(陽電子断層撮影)装置の高性能化、陽子線治療中の照視野リアルタイムモニタなど、今後、医療分野において全く新しい研究成果の還元が期待できると述べました。さらに、デジカメ感覚で利用可能な数百グラムの携帯型ガンマ線カメラの開発も行っており、理工医横断の立場で放射線の「見える化」を今後も推進していくことや、宇宙、環境、医療分野の研究を同時に推進し、3分野のいずれをもリードしていきたいと展望を述べました。

戸堂康之教授(政治経済学術院)2014年度採択者

tilyuukaku4戸堂教授は、『ネットワークと経済成長プロジェクト』と題し、様々な状況における実証的研究を行い経済学とネットワーク科学の発展に貢献する研究について発表しました。
「どのような社会・経済ネットワークが経済成長・発展に有効か?」という問題意識を述べた後、社会・経済ネットワークがどのように構築され、それを通して技術、情報、資金、感情がどのように伝播し、さらにそれによって経済がどのように発展し、成長するのかを、先進国、新興国、開発途上国における様々なデータを利用して行っていると述べました。発表の中では「世界の主要企業57,000社のサプライチェーン」「日本企業間および日本企業と外国の取引先とのサプライチェーン」「世界企業の資本所有ネットワーク」「特許の共同出願ネットワーク」等、理系的な手法をとりいれた様々な指標図を用いて述べ、会場からは活発に質問がなされました。そして学術的成果の要約として、これらの結果は、ネットワークが様々な形で企業や個人の行動に影響していることを示しているが、特に多様なつながりがパフォーマンスを向上させる一方で、閉鎖的で強いつながりはむしろ社会に対してマイナスの影響がありうることもあることが見出されていると言及しました。そして、さらなる多様なつながりを構築しようとするメカニズムが人間に内在している可能性も示しているが、そのようなメカニズムが市場均衡において最適解を導くかどうかは明らかではなく今後の研究課題としたいとあらたな研究活動への姿勢を表明しました。

岩田浩康教授(理工学術院)2015年度採択者

tilyuukaku5岩田教授は、『人の技能や心身機能を拡張する人間支援ロボットテクノロジー(RT)の新展開』と題し、低侵襲な運動・知覚支援に基づく人間支援ロボットテクノロジーについて発表しました。はじめにロボットが対面から人間を抱きかかえる写真を見せ、支援することで人間がロボット依存しはじめる可能性も出てくるという仮説を述べ、人を退化させてしまわないようにロボットは活用されるべきものであり、人の技能や心身機能を拡張する、覚醒させるためのロボットテクノロジーの重要性を強調しました。
そして、その研究分野は多彩に広がり、現在、技能・心身機能を拡張するRT(知覚支援、運動補助)、実学としてのメディカル・ロボティクス、RTを手足のように扱うための直感的なヒューマン・インタフェース、生体計測デバイス開発に向けたバイオ・ナノ・エレクトロニクス等、健康大国である我が国の基盤をRTで形成する方法論を導出すべく精力的に活動していると述べました。
発表は、さまざまなRTの動画を用い具体的になされました。下垂足により段差で躓きやすい高齢者や半側空間無視を呈して左側を向けない脳卒中患者等に対し、上述の三機能の組み合わせ方を最適化したRTや運動学習法を提供することで、症状改善ならびに大幅なQOL向上を図る実用技術の研究などを説明すると、会場からは様々な質疑応答がありました。
最後に岩田教授はリハビリの本質は再学習にある、自身の不適切な身体状態に気づかせた上で、良好な姿勢・運動状態に誘わせ、その状態を繰り返し学習させることで、身体感覚を鍛えることが可能な心身覚醒ロボットテクノロジーの基盤技術を社会にむけて確立したいと力強く宣言しました。

川上泰雄教授(スポーツ科学学術院)2014年度採択者

tilyuukaku6川上教授は、『人間の筋腱特性とその可塑性に関する包括的研究:身体運動能力との関連性からみた効果的なトレーニング方策の確立に向けて』と題し、「骨格筋の機能的・形態的・材質的特性の徹底解析」、「筋腱複合体の損傷・治癒の機序解明」、「人間の運動能力の向上・サポート」、「高齢者を元気にするプロジェクト」の4研究について発表しました。
超高齢化社会が進む日本において、川上教授の研究は健康寿命延伸や高齢者の体力的・社会的自立、介助人口の減少といった観点から極めて重要な課題の解決につながるものです。また、子どもから大人にわたる幅広い身体運動能力レベルの人間を対象に、実行可能かつ効果的な運動プログラムの作成に寄与します。さらに、一流アスリートに代表される身体能力レベルが極めて高い人間の身体的特徴や動きの「コツ」を筋・腱特性の観点から明確化させ、身体運動能力を向上させる手がかりを明示しました。これらの成果は、スポーツ科学や健康科学に関連する研究分野のみならず、人間工学分野やスポーツ用具の開発を飛躍的に発展させ、競技スポーツ現場や学校教育現場における指導法の改善、ロコモティブシンドロームの進行に悩む高齢者や運動指導者への有用なアドバイスの提供などにもその応用が期待できると述べました。
最後に、国内はもちろん、わが国と同様超高齢化社会を迎えつつある世界各国においても国民の健康的な生活を営む可能性に寄与すると、研究の貢献について強調しました。

胡桃坂仁志教授(理工学術院)2014年度採択者

tilyuukaku7胡桃坂教授は、『胡桃坂エピジェネティクス構造基盤プロジェクト』について発表しました。この研究は、クロマチン研究を立体構造に立脚した構造生物学、生化学、および細胞生物学的解析を基盤として推進するものです。
発表のはじめには自身のエピジェネティクス研究における先人たちの功績が系統的に説明され、この分野が歴史的な発見の積み重ねによって進められてきたと述べました。その上で胡桃坂教授は、がん細胞でみられるヒストン変異体の解析や薬剤の標的となる可能性がある特殊なヌクレオソーム構造に関する研究を精力的に進めており、再生医療や抗がん剤などの創薬の発展に重要な基盤情報を与えると考えられ、この研究の医療分野や産業分野への社会的波及効果の可能性について説明しました。
さらに、米国科学誌Science掲載の論文『Crystal structure of the overlapping dinucleosome composed of hexasome and octasome』(研究News「世界初・染色体の新しい構造ユニットの特殊な立体構造を解明」)を発表会前日に文部科学省で記者会見し、メディアからの大きな反響があったことを述べました。この論文は、遺伝子の読み取り過程で形成されるオーバーラッピングダイヌクレオソームの立体構造を解明するために、試験管内でヒトのオーバーラッピングダイヌクレオソームを再構成して、スプリング8放射光施設を用いたX線結晶構造解析によって原子分解能でその立体構造を世界で初めて明らかにしました。
最後に、次代の研究者として今後も研究を加速化し継続的な論文掲載を目指すことや、この分野を牽引するリーダーとなることについて熱く語りました。
その他、次代の中核研究者は以下のようです。2016年度の3人の研究者も自身の研究について精力的に取り組み、本学の研究力のプレゼンスを高める決意を述べました。

関根泰教授(理工学術院)2016年度採択者

『関根イオニクス触媒プロジェクト』
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戸川望教授(理工学術院)2016年度採択者

『戸川IoT集積システムプロジェクト』
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ファーラー・グラシア教授(国際学術院)2016年度採択者

『ファーラー国際労働移動プロジェクト』
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閉会の挨拶では、橋本周司副総長が「素晴らしい研究を聞いて、今日は大学にいるという感慨があった。これからもぜひ早稲田大学のプレゼンスをあげていっていただきたい」と述べました。
会場からはすべての研究者の発表に対し、大きな拍手が贈られました。各研究者への質疑応答や今後のプログラム内容についての議論も闊達に行われ、会は和やかに閉幕しました。

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写真:研究者に笑顔で質問をする石山敦士研究推進理事

  • 次代の中核研究者育成プログラム:Waseda Vision 150 核心戦略7「独創的研究の推進と国際発信力強化」のもと、ベテランと若手研究者が連携したチーム型研究の推進と若手研究者への組織的なサポートにより、国際研究大学としての地位確立の担い手となる若手研究者を育成するための制度。次代の本学の中核となる研究者に対し集中的な研究支援・環境整備を行う。詳しくは「次代の中核研究者 Waseda Vision 150 特設サイト
  • 十重田裕一  教授(文学学術院)2014年度採択者:長期海外出張中のため会は欠席、会場では研究資料が配布された。
  • 2016年度に行われた「次代の中核研究者育成プログラム」発表会はこちら
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