人間と共創するロボット技術
分野:科学
人間と共創するロボット技術
分野:科学
本研究所はこれまでと同様に「(1)人間共存(2)医療福祉(3)災害対応」をテーマ対象とし、研究開発を推進していく。
1)人間共存
ヒューマノイドをスポーツ分野で利用するため、多くのスポーツの基礎運動と言われる特定の運動動作(跳躍・走行、投擲、重量物持ち上げ)の達成を目指す。さらに、ヒューマノイドを用いて動きの大きさやスピードを変化させたスポーツ動作実験を行い、ヒューマノイドを用いて人間の運動動作戦略を導く手法を開発する。また、スポーツ科学部の研究者とも連携して、日本のスーパーアスリート養成など、社会実装へ向けた活動も行っていきたい。
(2)医療福祉
臨床手技の実習における、訓練者・熟練者の間のインタフェースとしての患者ロボットシステムを開発する。患者ロボットによる症例再現・手技評価技術の実用化を進めるとともに、熟練者の動作・意図・知覚を訓練者にフィードバックする手法を確立する。これらのシステム開発を通じて、将来的な遠隔医療教育や他分野での技能伝承への応用可能性を検証する。また、ロボット分野では人工ニューラルネット、遺伝的アルゴリズム、インターネットによる複数ロボット・操縦者の遠隔相互接続など、現在のAIやIoTに繋がるシステム統合は30年近く前から導入・実施しており、これらの経験も本分野に活かしていきたい。
(3)災害対応
災害対応ロボットの本格的な実運用において、現段階でのロボットでの達成点,不足点で評価した上でハードウェア・ソフトウェアおよび制御システムの改良を行う。最終的にはロボット移動(速度、安定性と自律性等を含む)・作業(速度、操作性、対象への汎用性等)及び現場での環境適応性の向上を計らい、災害現場もしくは現場の再現性の高い模擬環境で運用可能であるロボットシステムを開発する。特に近年の地球温暖化に伴う台風・豪雨などの自然災害は従来の常識を覆す規模で発生しており、ロボットのみならずスマートフォンなどのパーソナル情報機器とも連携して、風水害の予知・周知をしつつ個人個人の被害の最小化を図る技術を模索していきたい。
【2018年度】
ヒューマノイド研究所は「(1)人間共存(2)医療福祉(3)災害対応」をテーマ対象とし、研究開発を推進している。それぞれのテーマに関して,2018年度は以下のような活動を行った。
(1)幼児・児童とのインタラクションに向けて、注意を引き寄せプレイセラピーにおいて幼児・児童の自己表現を促進することを目的とする球体ロボットを設計・製作した。モータと内部機構でロボット内のばねの圧縮と解放を行い、ロボットを跳躍させる。製作した球型ロボットは無線通信での制御が可能で高さ300㎜、水平距離250㎜の斜め跳躍を実現した。
(2)触診訓練システムの実現に向けて、MR流体を用いた弾性可変機構を有する触診シミュレータを開発した。無水ジェルとセプトンの2種類の溶媒でそれぞれ鉄粉と混合したMR流体を用いて乳房の腫瘤を模擬し、臨床医には「臓器モデルの柔らかさ」、「模擬腫瘍の硬さ」と「腫瘍の弾性可変」の3点で評価された。
(3)内閣府主催プロジェクト「ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジ」の脚型ロボットプラットフォーム「WAREC-1」の更なる改良を行い、遠隔操作と環境認識を用いて(i)平地での車輪駆動による高速移動;(ii)腹ばいによる瓦礫上移動;(iii)ドアの前の障害物(重量40㎏)除去;(iv)ドアの通過;(v)異音検知と(vi)バルブ開閉の一連動作を2018年11月の「ImPACT-TRC第7回フィールド評価会」で実現し、Youtubeで公開された。
【2017年度】
ヒューマノイド研究所は「(1)人間共存、(2)医療福祉、(3)災害対応」をテーマ対象とし、研究開発を推進している。それぞれのテーマに関して、017年度は以下のような活動を行った。
(1)笑いを通じた人間とロボットのインタラクションの実現に向け、ロボットの表情と胸部ディスプレイの表現の矛盾による人間の笑い誘発に取り組んだ。ロボットの胸部に取り付けられたディスプレイで感情を映像で抽象化し表示させ、ボットの顔の表情との矛盾で人間の予想を裏切る「表情と異なる本心」の表現を提案した。評価実験により実験参加者に有意に新鮮な印象を与えることが確認された。
(2)新生児蘇生法のトレーニングシステムの実現に向け、新生児に近い外見を有する気道管理シミュレータを開発した。シミュレータ頭部・胴部の姿勢センサ、口腔のカメラ、喉頭と上顎の圧力センサや肺と胃に装着された換気圧センサなど各種センサを用いて訓練者の気管挿管手技の正誤を判定可能とした。
(3)内閣府主催プロジェクト「ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジ」の脚型ロボットのプラットフォームとなる4肢ロボットWAREC-1を開発・改良し、2足立ち、4足立ちと腹ばいの姿勢遷移及び3肢腹ばいでの移動と残りの1肢に装着されたロボットハンドで工具を用いて重作業(開口トルク90N·mのバルブ開閉)を実現した。
【2016年度】
ヒューマノイド研究所は「(1)人間共存、(2)医療福祉、(3)災害対応」をテーマ対象とし、研究開発を推進している。それぞれのテーマに関して、2016年度は以下のような活動を行った。
(1)笑いを通じた人間とロボットのインタラクションの実現に向け、人間からの刺激の入力に対する面白いリアクションによる人間の笑い誘発に取り組んだ。ロボットのエンドエフェクタの軌跡に一度始点から終点と逆方向に戻る「予備動作」および終点を通り過ぎて戻る「行き過ぎ」を加えることで、エンドエフェクタの軌跡を延長して誇張するアルゴリズムを構築した。評価実験を通じ、実験参加者に有意に面白い印象を与えることが確認された。
(2)静脈注射手技の指導と評価が可能な訓練システムの実現に向け、医師の注射手技状態を認識するシステムを開発した。採血手技を構成する各要素動作を状態とする有限オートマトンによって手技の流れをモデル化、訓練者の手技に対し、画像処理にもとづいた状態遷移を実行することで、注射手技の正誤を判定可能とした。
(3)ImPACTタフ・ロボティクス・チャレンジの脚型ロボットのプラットフォームとなる4肢ロボットWAREC-1を開発し、2点支持でのはしご昇降やがれき路面での腹ばい移動を実現した。これらの研究成果に対して、2016年4月と11月にプレスリリースを実施した。
高西 淳夫[たかにし あつお]( 理工学術院)
【顧問】
福田 敏男(名城大学教授)
【研究所員】
高西 淳夫(理工学術院教授)
岩田 浩康(理工学術院教授)
上杉 繁(理工学術院教授)
大谷 淳(理工学術院教授)
澤田 秀之(理工学術院教授)
菅野 重樹(理工学術院教授)
藤本 浩志(人間科学学術院教授)
石井 裕之(理工学術院准教授)
コセンティノ サラ(国際理工学センター(理工学術院)准教授(任期付))
大谷 拓也(理工学術院次席研究員(研究院講師))
【招聘研究員】
DESTEPHE Matthieu(株式会社メルカリ)
西川 員史(パナソニック株式会社)
橋本 健二(明治大学機械情報工学科准教授)
三輪 洋靖(国立研究開発法人産業技術総合研究所主任研究員)