開催報告:早稲田大学総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所 2023年度12月研究例会
▼2023年度12月研究例会(第215回オペラ研究会)
- 日 時:2023年12月2日(土)16:30 – 18:00
- 開催方式:オンライン開催(Zoom使用)
- 発 表 者:石井 道子
- 所 属:早稲田大学
- 題 名:『三つのタンホイザー像からヴァーグナー《タンホイザー》へ』
- 発表言語:日本語
- 概要: ヴァーグナーの《タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦》(1845初演)の主人公のストーリーについては、グリム『ドイツ伝説集』(1816/1818)でも知られる民間伝承が元と言われている。本発表では、まず中世恋愛詩人(ミンネジンガー)のタンホイザー(1245-1265頃)の作品をもとに、この詩人がヴィーナスに捉えられるに至った伝説化の所以を探る。キリスト教的中世に活躍した詩人が、規範的「ミンネ夫人」ではなく異教の神ヴィーナスと深く関わる理由は何だったのだろうか。また、ヴァーグナーに大きな影響を与えたハンス・ザックスの謝肉祭劇『ヴィーナスの宮廷』(1517)での登場人物タンホイザーの役割を検討する。謝肉祭劇は無視されがちであるが、ヴァーグナーにおけるタンホイザー像理解の足掛かりとして重要な位置にある。実在の詩人、謝肉祭劇登場人物、伝説の人物像の三つのタンホイザー像の変遷をたどることで、ヴァーグナーの特徴をより鮮明にとらえ、作品にこめた自己意識を明らかにしていきたい。
- 発表者プロフィール: 研究分野はドイツ語圏を中心とする中世ヨーロッパ文芸とその影響。最近はヨーロッパ文芸が近代東洋に与えた影響についての研究も手掛けている。共訳『ミンネザング』(大学書林、2001年)。論文「シュタインヘーヴェル版イソップ寓話集の利瑪竇『畸人十篇』に与えた影響」(環日本海研究年報27巻、新潟大学、2022年3月)、「グリム童話の東アジア受容 : 日本語および中国語翻訳について」(環日本海研究年報28巻、新潟大学、2023年3月)。
- 司会者 : 森本 頼子
コメント:20名の参加者があった。