開催報告:総合研究機構 オペラ/音楽劇研究所 2022年4月研究例会
▼2022年4月研究例会(第201回オペラ研究会)
- 日 時:2022年4月9日(土)16:30-18:35
- 開催方式:オンライン開催(Zoom使用)
- 発 表 者:加藤 恵哉
- 所属・資格:東海大学非常勤講師
- 題 名 :『ワーグナー『恋愛禁制』におけるイザベラと「ピューリタン的偽善」への反抗』
- 発表言語 :日本語
- 概 要 :
リヒャルト・ワーグナーの第2作『恋愛禁制、あるいはパレルモの修道女』における女性主人公イザベラは、作品の中心人物でありながら死の、あるいはそれに準ずる結末を迎えることがない点、彼女が異性に対して向ける愛というものが作中にて重視されない点において、他のワーグナー作品における女性とは一線を画している。ルーツィオという男性から結婚の申し出まで受けているのだが、彼女は結末部までルーツィオをほとんど気にかけることなく、シチリアを治める代官フリードリヒの欺瞞と愚かさを暴き立てるために行動する。このイザベラはウィリアム・シェイクスピアの戯曲『尺には尺を』の同名の人物がモチーフとなっているとされているが、『恋愛禁制』のイザベラの、自ら率先して権力者の腐敗を暴くため行動する姿勢は『尺には尺を』の同名の人物ともまた異なっている。イザベラのこうした人物像はどのように形成されたのか、『尺には尺を』のイザベラから人物像を変化させた理由は何であるか、そこにワーグナーのどのようなねらいがあるかについて考察を試みる。 - 発表者プロフィール:
1988年静岡県生まれ。上智大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、2021年3月に博士(文学)学位取得。現在、東海大学ほか非常勤講師。リヒャルト・ワーグナーが19世紀の諸思想を広範に受容し作品の表現に反映させていることに着目し、その受容の方法と作品における表現を研究テーマとしている。主な論文に、「ワーグナー『恋愛禁制』における社会批判」(『上智ヨーロッパ研究所』第9号)、「ワーグナー『ニーベルングの指環』初期構想と作中の為政者像の変遷」(『上智ヨーロッパ研究』第11号)などがある。 - 司会者 : 柳下 惠美
*コメント:19名の参加者があった。