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グループでの発表準備と質問を通して学びを深める、比較考古学演習

2024年度開講科目早稲田大学ティーチングアワード
総長賞受賞
対象科目:考古学演習13(比較考古学)

受賞者:山崎 世理愛

本授業は、複数の地域や時代を横断して見られる特定の事象を考古学的な視点で比較することで、その普遍性と特殊性を実践的に学ぶ演習である。シラバスでは、エジプト、メソポタミア、東地中海沿岸などの西アジアと日本をはじめとする他の地域を対象に、各グループが割り当てられたテーマを調べ、その成果をスライドを用いた発表として共有する活動が中心に据えられている。発表準備自体に重きを置き、スライド作成は必須とし、発表の3日前までにデータをMoodleに提出してクラスで共有する仕組みを設けている。聴講側は発表評価・感想・意見をフィードバックシートに記入し、発表者は後日それを受け取って振り返ることが求められる。また、質疑応答の時間も重視し、教員が「優れた質問とはなにか」を解説した上で、実際の演習で質問と回答の技術を磨く機会を設けている。さらに、発表後にはグループ内での意見交換と、クラス全体でのディスカッションを行い、発表班同士が互いのテーマを踏まえた議論を形成する。授業の最終回には、クラス全体の振り返りとともに、評価の高かった3つのグループを表彰し、学びの成果を共有する構成になっている。到達目標としては、地域比較を通じた各地の考古学の特色理解や問題意識の深化、発表・質問・議論の力の向上が掲げられている。

Moodleを活用した公開型フィードバックで支える、グループでの発表準備

山崎先生の授業実践において、特に特徴的なのが、Moodleを活用した公開型かつ学術的なフィードバックである。山崎先生は、学生時代の経験を振り返り、「結局どこが評価されていたのかがよく分からないままになっていた」という違和感を語る。さらに、「他の班がどう評価されていたのかも分からず、学生間の質疑応答だけで終わってしまう授業」に課題意識を持っていたという。

そこで演習授業では、第3回授業までを発表授業期間とし、Moodle上で進捗報告とフィードバックを重ねる設計を取り入れている。具体的には、班ごとの進捗報告に対して、まず学生同士がコメントを行い、その内容を踏まえたうえで、山崎先生が「できるだけ具体的に」コメントを返す。「方向性に合わせて参考になりそうな本とかも、できるだけ紹介するようにしています」と述べるように、学術的な水準を意識したフィードバックが行われている。

これらのコメントは公開形式とし、「他の班がどういう風に進めてるのか」「私からどういうコメントをもらってるのか」を学生全員が確認できるよう、Moodleの設定で「強制的に見てもらう」工夫も施されている。山崎先生は、「フィードバックするのに長い時で1時間ぐらいかかっちゃいますね」とその負担を率直に語りつつも、「学生がそれを見て考え直してくれている実感があった」と手応えを感じている。評価基準と改善の視点を可視化するこの仕組みは、学生にとって「何が求められているのか」を理解しながら学ぶための重要な支えとなっている。

質問の仕方を学ぶモデリングで、対話の質を高める

山崎先生は、発表後の質疑応答について、「質問する力っていうのが、考古学の中での質問って結構難しくて」と語る。実際の授業でも、「質問を学生の積極性やセンスに委ねることに限界を感じていたという。そこで、質問そのものを学習対象として位置づけ、「質問する仕方を最初にみんなで学ぶ」工夫を取り入れた。

具体的には、山崎先生自身が「質問の型」を作成し、学生に共有している。「一番最後の赤く囲っているところに質問の型っていうのを私の方で作って」「できるだけこの型にはめつつ、最初は質問してみましょうね」と説明するように、質問の流れを可視化することで、発言へのハードルを下げている。この方法について、「これは割とうまくいっていて、多くの学生がこの流れに沿って質問を作ってくれていて」と手応えを語る。

一方で、導入当初は「逆に多分ハードルを上げちゃったのかなって思う」と感じる場面もあり、挙手が減った時期もあったという。そこで、班ごとに質問を考えさせる方法を取り入れ、「班で考えた質問だっていう感じで、心理的な負担も下がった」と振り返る。こうした試行錯誤を通して、質問は単なる発言の機会ではなく、「いい質問はこれなんだっていうのを見ることができる」学びの対象として、授業の中に定着しつつある。

表彰制度を通して、学びへの動機づけを丁寧に設計する

山崎先生は、授業の中で表彰制度を取り入れているが、その運用には慎重な配慮がある。表彰については、「順位を付けてしまうとモチベーションにつながる子と、つながらない子が確かにいるなっていうのは私も痛感していて」と語り、単純な順位づけの難しさを認識している。その一方で、「頑張ってる子に寄り添いたいというか、頑張ってる子にそのままもっと頑張ろうって思ってほしい」という思いから、表彰自体は行っているという。

具体的には、「3位以内だけを発表するようにして、最下位とかは絶対言わないようにやってます」と述べ、結果の提示方法にも工夫を凝らしている。表彰の際には順位を示すだけでなく、「どういう点が優れてたのかとかを共有しています」と、評価の観点を言語化して伝えることを重視している。また、3位以内に入らなかった班についても、「このスライドいいな」といった具体的な良い点をピックアップして全体に共有している。

こうした表彰制度は、競争をあおることを目的としたものではない。山崎先生は、「表彰されることだけに目が行かないように、どうにかちょっと軌道修正しようとしました」と振り返る。学生同士の関係性や授業の雰囲気を踏まえながら、表彰を「学びの価値を共有する機会」として位置づけている点が、この実践の大きな特徴である。

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