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集中講義「アカデミック・ライティングII」で研究に磨きをかける

2024年度開講科目早稲田大学ティーチングアワード
総長賞受賞
対象科目:日本語教育学特殊研究(2)(アカデミック・ライティングII)(秋集中)

受賞者:田中 啓行

 

本科目は、日本語教育研究科の大学院生を対象とした集中科目である。「修士論文を書く」という修士課程における最終目標を見据え、「論文執筆の各段階で求められることを、実際の論文作成の過程に沿って学んでもらう」ことを目的としている。田中先生は、学術的文章の抽象的な説明にとどまらず、日本語教育分野の学会誌に掲載された実際の論文をモデルとして提示し、具体的な論文のイメージを学生に持たせることを重視している。「最終的には受講生の皆さんが学位論文を書くところが目標になるので、実践につながることを意識している」という言葉のとおり、授業は常に修士論文執筆を見据えて設計されている。4日間の集中講義という形式を生かし、講義とグループワークを組み合わせながら、学生自身の研究を素材に学びを深めていく。

研究テーマを学術的にブラッシュアップするプロセス

この授業の核となっているのが、学生自身の研究テーマを学術的にブラッシュアップしていくプロセスである。授業開始前、学生には事前課題として「研究室のホームページに掲載することを想定した研究紹介文」を400字程度で提出してもらう。これは必ずしも学術論文の文体ではなく、比較的自由な形で書かれた文章である。しかし授業では、この文章を出発点に、最終的に800~1000字程度の「論文要旨に近い文章」へと発展させていく。

1日目は、学術的文章とは何かを理解し、自身の研究における問いと答えを明確にすることに力点が置かれる。日本語教師を目指す留学生や現職の教師など、多様な背景を持つ学生が集まる中で、個々の関心を「学術的な論文につながる問い」にまで具体化する作業が行われる。2日目には、その問いに対する答えをどう導くのかという研究方法の検討や、先行研究の探し方、引用の仕方が扱われる。ここでは、文章を書く前段階としての「研究デザイン」を考えることが重視されている。

3日目には、研究内容を客観的かつ分かりやすく表現する文章表現に焦点が移り、4日目にはタイトルの付け方や要旨のまとめ方といった最終調整が行われる。田中先生は「自分の研究に基づいて授業内の課題や作業をしているので、知識としてアカデミック・ライティングを学ぶのではなく、修士論文執筆につながる実践になっている」と語る。このように、本授業は学生一人ひとりの研究を軸に、段階的かつ体系的に学術的文章へと鍛え上げていく場となっている。

互いに学び合う環境が生み出す力

本授業のもう一つの大きな特徴は、グループワークを中心とした「互いに学び合う環境」である。4日間を通して、授業全体の6~7割はグループディスカッションに充てられており、学生同士が自分の研究について意見を交わす時間が豊富に確保されている。集中講義であるため、「議論がもう少し深まりそうだと感じたときには時間を延ばすこともできる」という柔軟な運営が可能になっている。

グループ編成は固定ではなく、授業の進行に応じて何度も組み替えられる。研究の進み具合やテーマの定まり具合が異なる学生同士を組み合わせることで、互いに補い合える関係を意図的に作っているという。「自分の研究テーマが定まらない院生は、アドバイスができそうな院生と組んでもらう」といった配慮もなされている。こうした環境の中で、学生は自分の研究を言語化し、他者の視点から問い直す経験を重ねていく。

ゼミを超えて多様な研究テーマに触れられる点も、学生にとって大きな意味がある。日本語教育という共通基盤はありつつも、言語そのものに焦点を当てる研究、学習者を対象とした研究、教師養成に関する研究など、学生が関心を持つテーマは多岐にわたる。他者の研究を読み、議論することで、「自分だけが悩んでいるわけではない」と感じられる安心感も生まれる。田中先生は「論文を書くということに対して、いろんな面から意見がもらえることは学生にとって大きい」と語る。

この授業は、単に文章技術を教える場ではない。問いを立て、方法を考え、言葉にするまでの過程を、他者との対話の中で共有する場である。だからこそ、学生にとって「自分の研究を前に進める」実感が得られる授業となり、高い評価につながっているのである。

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