2023年度開講科目早稲田大学ティーチングアワード
総長賞受賞
対象科目:生命科学B(2)
受賞者:水内 良
水内先生の「生命科学B」の授業は、電気・情報生命工学科の1年生を対象とする基礎科目であり、2023年度秋学期には72名が履修した。高校で生物を履修していない学生でも学びやすいように設計されているだけでなく、生命科学の面白さを伝えることに重点を置いている。
授業の目的は、細胞生物学の基礎的な概念をしっかりと定着させることにある。「生命科学は非常に多様な分野だが、この細胞生物学を理解すれば、どの分野にも応用できます」と水内先生は言う。履修生の多くが高校で生物を学んでいないため、基本的な内容から始めることで、全員が無理なく理解できるようになる。水内先生自身も高校では生物を履修しておらず、「高校の生物を取っていなかったからこそ、初学者の視点を持ち、学生がつまずくポイントが分かります」と語る。
授業の進め方としては、100分の講義をいくつかのブロックに分け、講義、質問タイム、ワークブックの解説を繰り返す形式をとっている。授業では学生にたびたび質問を尋ねるほか、Moodleのチャット機能を使って随時受け付けている。このようなリアルタイムでの質問対応に加え、理解を深めることを意図した小テストと中間・期末試験の工夫によって、学生の学びを支えている。
高校で生物を選択しなかった学生も楽しめる授業に
この授業の特徴の一つは、高校で生物を学んでいない学生でも楽しめるように工夫されている点だ。「授業を通して生命科学に興味を持ってもらうことが大切です」と水内先生は強調する。そのため、単なる知識の詰め込みではなく、生命科学の「面白さ」を伝えることに重点を置いている。
たとえば、光合成について説明する際には、「地球上の水と太陽のエネルギーを利用して栄養を作り出す仕組みを、生命が進化の過程で発明したのはすごいことだ」と伝える。単なる科学的なプロセスとして教えるのではなく、「なぜこの仕組みがすごいのか」「これがあることで地球全体にどんな影響があるのか」といった視点を提示することで、学生の興味を引き出す。
また、授業では「自分がどこに感動するかを率直に伝える」ことを重視している。水内先生自身が生命科学の魅力を感じ、熱意をもって伝えることで、学生も「生命科学って面白いかもしれない」と思えるようになる。「先生の目が輝いていないと、決して学生の目は輝かない」のだそうだ。
学生からの質問には丁寧な即レスで応える
この授業では、学生との対話を重視し、リアルタイムで質問を受け付けている。Moodleのチャット機能を使い、授業中に随時質問を受け付けるほか、講義の合間に「質問タイム」も設けている。質問タイムには、学生から質問することもあれば、水内先生から学生に問いかけることもある。もちろん何も質問が出ない場合もあるが、その時は一番難しかった箇所を聞き出し、その部分を復習する時間を設けるなどの工夫を図っている。
水内先生は「授業中にリアルタイムで質問が来たら、すぐにその場で答える」ことを心がけ、質問への「即レス」を大切にしている。「学生が質問したときにすぐ答えることが、学習意欲を高める」からだ。また、「学生が相手だからといって雑な対応をせず、研究者と対話するように丁寧に返す」ように心掛けているという。答えに確信を持てない場合は自身の宿題とし、次の授業開始時に全員に改めて回答を共有するようにしているそうだ。
小テストと中間・期末試験の工夫
評価は、小テストと中間・期末試験で行う。小テストの方が難易度を高く設定し、中間・期末試験の方が易しめに作られているという。これは、学習のプロセスを考慮した工夫の一つでもある。「小テストはMoodleで実施し、時間をかけてじっくり考えることができます。一方、中間・期末試験は教室で制限時間内に解かなければなりません。そのため、小テストの方を難しくして、しっかりと考える機会を与えています」。
小テストで深く考える機会を与えることで、学生は中間・期末試験に向けてしっかり準備をするようになる。その上で「中間・期末試験は、基本的な問題を多めにして、きちんと勉強した学生が確実に得点できるようにしています」という。これにより、試験のための詰め込みではなく、本質的な理解を促すようになっている。また、試験問題の構成についても、知識ベースの問題と、理解が必要な問題をバランスよく組み合わせているそうだ。「知識だけでは解けないが、講義をしっかり聞き、考えれば答えられる問題を出すことで、学生が表面的な暗記ではなく、理解を深められるようにしています」と水内先生は語る。