Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

ハイブリッド形式を採用し、学生の興味を引く話題なども取り入れ、「学生を一人も取り残さない」授業を展開

2022年度秋学期早稲田ティーチングアワード
総長賞受賞
対象科目:生命科学B(1)

受賞者:坂内 博子

 

 

電気・情報生命工学科の1年生を対象にした必修科目「生命科学B(1)」を、2019年度秋学期から担当している坂内博子教授。2022年度秋学期の授業は、対面とZoomによるリアルタイム配信というハイブリッド形式で実施した。「学生を一人も取り残さない」という強い思いのもと、授業では生命科学の面白さを伝えるためにさまざまな方向から検討したコンテンツを提供。そうした取り組みは、学生授業アンケートでも高く評価されている。

学生が自分に合った方法で学べるよう、ハイブリッド形式+Moodleでの視聴も可能に

「生命科学B(1)」は、細胞の中や細胞間の分子の働きや、細胞の組織などについて学ぶ科目だ。2022年度秋学期は、教場での対面とZoomでリアルタイム配信というハイブリッド形式で授業が行われ、毎回、教場は20名程度、オンラインは30名程度が出席した。2022年度秋学期はコロナ禍もやや収まってきていたが、それでもハイブリッド形式を採用したのには理由がある。

「一つは沈静化したとは言え、まだコロナ禍で大学に来れない学生がいたためですが、それだけではありません。何らかの事情で教場に来れない日があっても、諦めないでほしいと思ったからです。対面だけだと、1、2度来られないだけで『もう今年はいいや』と思ってしまう可能性もあります。しかし、オンライン形式もあれば続けやすくなります」。Zoomで配信した授業データは、一定期間Waseda Moodleにも残して、リアルタイムで授業を受けられなかった学生が後から学んだり、出席した学生が復習したりできるようにしている。

背景にあるのは、「学生を一人も取り残さない」という坂内教授の信念だ。一方で、「大学生として、自分で優先順位を決めて自分に合ったやり方で学んでもらえればよい」という思いもある。実は「生命科学B(1)」では、出席を取っていない。「一応、授業後にMoodle上で行う小テストが出席確認の代わりになっています。仮に、授業に出席できなくてもMoodleの授業データを後から視聴したり、小テストを受けたりして、自分で勉強してもらえればよいと思っています」。学生一人ひとりが自分に合った方法で学べるように、今後もハイブリッド形式は継続していく予定だ。

コロナウイルスやノーベル賞、クイズに「総選挙」で学生の関心を引く授業を工夫

授業の中でも、「一人も取り残さない」ためにさまざまな工夫を施している。「生命科学B」は春学期の「生命科学A」で学んだ内容がベースになるが、すべての学生が「生命科学A」を理解しているかどうかはわからない。そこで、「夏休みも挟むので、忘れている学生はいるという前提で、特に大事なところは『生命科学Aでも学びましたがもう一度説明しますね』と繰り返し伝えるようにしました。覚えているかどうかを確認するよりは、何度も言うことで自然に身につけてほしいと考えています」。

また、学生が「生命科学」に関心を持ち、生きた知識を身につけられるように、授業で取り上げる話題にも工夫を凝らした。例えば、新型コロナウイルスやワクチンの仕組みを「生命科学」の知識を使って説明したり、ノーベル生理学・医学賞や化学賞と「生命科学」の授業内容との関わりを話したりした。さらに、「生命科学」を「自分ごと」ととらえてもらうために、「細胞内小器官の総選挙」というユニークな取り組みも実施したという。「ミトコンドリアや小胞体など小器官の中で好きなものに投票してもらいました。1位はミトコンドリアでしたね。これまで、小器官を『好き』かどうかの観点で考えることは多分なかったと思うので、面白いと感じた学生はいたと思います」。

参加型という意味では、クイズや「これについてはどう思いますか?」といった問いかけをする機会も毎回設けた。問いかけの際、Zoomで参加している学生にはチャットに書き込んでもらう。坂内教授は、その意見を紹介しながら「Zoomの人はこんな考えだけど、教室のみんなはどうですか?」というように、教場とオンラインの一体感を生み出す配慮もしたという。

授業の進め方の工夫としては、2022年度から「ノート整理」の名目で10分間程度の休憩を入れたそうだ。「2022年度までは90分授業だったので、40分経ったところで入れました。休憩を挟むことで、最後まで集中力が続くようになりました。友人同士で授業のわからないところを話し合ったり、私に質問に来る学生もいます。休憩を入れて授業時間は10分短くなりましたが、それ以上の効果があったと思っています」。

1年生にはやや難しかったグループ学習は、サポート体制を整えるなど改善方法を検討

多様な取り組みを実践している坂内教授だが、すべてが最初から100%うまくいっているわけではないという。2022年度秋学期の最後に実施した2回の「グループ学習」については、より改善が必要だと考えている。いくつかのテーマを与えて、選んだテーマについては教科書の範囲にとどまらず原著論文にあたって調べる、という内容だったが、1年生がグループ学習で取り組むにはなかなか難しかったと振り返る。

「1年生ということを踏まえて、もっと教員がサポートするべきでした。たとえば、事前に調べ方を教えたり、ある程度こちらで資料を作って出しておいたりなどですね。もちろん個人の能力差もあって、中には非常に深く調べられた学生もいたのですが……」。また、Zoom参加の場合、グループでの話し合い自体もハードルだったという。「対面では自分たちでグループを組ませましたが、Zoomではランダムに分けました。それもあって、なかなか話し合いが盛り上がりませんでした」。TA(ティーチング・アシスタント)をファシリテーターとして入れたというが、それでも難しかったそうだ。

「コロナ禍でオンライン授業の経験が豊富な3年生だと、同じようにZoomでグループ学習をやっても盛り上がります。しかし、大学に入って間もない1年生の場合は、グループ学習だけは必ず対面にしたほうがよいのではないかと考えています。また、対面だからこその学生同士の交流もあるので、ハイブリッド形式は継続しつつも今後はできるだけ対面にシフトしていきたいですね」

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