Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

反転授業を軸にしたハイフレックス授業形式により、
理論を重視しながら活発な意見交換も可能に

2022年度春学期ティーチングアワード
総長賞受賞
対象科目:国際社会学(E)

ファーラー グラシア

 

大学院アジア太平洋研究科(GSAPS)の設置科目である「国際社会学(E)」は、反転授業の手法を積極的に取り入れ、学生たちのインタラクティブな参加を促した。オンライン形式に移行したことがきっかけとなり、レクチャー部分を録画しておいて学生に事前の予習を促し、授業内では議論に時間を割く方式を取り入れた。学生たちは、これらの工夫をポジティブに受け止めていた。

オンラインを効率的に利用した柔軟な教授方法で理論から身近な現象まで扱う

この科目は、2限続けての授業を8週間行うインテンシブコースで、2022年度春学期は14名の学生が履修者した。授業は英語で行われた。英語が第一言語ではない学生が10名以上だったが、英語の能力も高い生徒たちで、積極的な参加態度だったという。「私はこの授業の目的として、学際的な国際関係プログラムに所属する学生たちに、古典的な理論から現代の社会学的理論まで教えたいと考えています。多言語から英語に翻訳された古い文献も読ませるので、最初から相当の英語の能力を求めることも伝えてあります」

教授が早稲田大学で教鞭を取ってすでに10年以上になるが、教え方のスタイルは年々変わってきたという。今でも理論を教えるが、コロナ禍を経て、新しい授業運営方法を取り入れてきたそうだ。「私はアメリカの大学院で学んだのですが、そこでは議論が中心でした。ここでも社会理論を教えて、学生たちが基礎を作れるようにしたいと思いました。ですが、理論や概念の把握は難しい場合があるため、講義が必要と考えました。コロナ禍が始まって授業がみんなオンラインになったとき、ちょうど娘が高校生で、インターナショナルスクールに通っていたのですが、そこで先生たちが大変努力してくださってオンライン授業をしてくれていたのが印象的でした」。娘の授業で”flip classroom(反転授業)“を取り入れていたことが、この授業スタイルの変化のきっかけになったのだそうだ。

「当初、オンラインで3時間の授業なんて本当に考えられませんでした。固い、ドライな理論的な内容ばかりで学生たちがついて来られないと思ったのです。そこで、レクチャー部分は録画したほうがいいかもしれないと考えました。授業の前に録画で見ておいて、ディスカッションに多くの時間を割くことにしたのです」。オンライン授業に移行したおかげでこのスタイルが可能になったと言える。

事前にレクチャーを配信、授業では議論を行う反転授業が学生から好評を得た

今回の授業では、数人が海外に滞在していたため、オンラインのみの参加となった学生が一定数いた。そのため、今回教授が行ったのは「ハイフレックス授業」という形式で、教授は教場から授業を行い、学生は教場に来てもよいしオンラインでの参加もできるという柔軟な形である。最初の60分はパワーポイントに音声を入れたレクチャー動画をオンデマンドとして配信しておいて、学生たちは事前に見ておき、それについての意見をMoodle上にコメントしておく。このコメントは授業参加として採点の対象になる。教授はコメントに目を通したうえで授業に臨み、ディスカッションを2時間行う、という形式の授業だった。「最初は特に準備に時間がかかりました。60分のレクチャー準備に2~3日かかったこともあります。マイクの性能やPC設定にも気を使いました。でも幸いなことに、反転授業は学生に受けてくれました。理論的なことを学生はより良く理解していました」。

事前にコメントを読んでおくことで、学生がどんな意見を持っているかを知ることができたのも教授にとってよかった点だという。「授業の成功には学生の参加が必要だと考えています。なぜなら、固いドライな授業は、現実的な生活の中の現実的な観察に繋がらないと、理論の勉強の意味がないと思っているからです。例えば120年前のウェーバーの理論と今の時代になんの関係があるのか?と思っても、自分の理解で議論することは印象に残ります」。

情熱的な教授の姿勢と学生の熱意がシナジーを生んだ

学生授業アンケートの回答では「総合的にみてこの授業は有意義だった」の評価点が6点満点中5.9点と非常に高い評価を得た。学生の自由回答でも「オンラインと対面両方の授業を行うのは簡単なことではない。ファーラー教授は学生みんなが確実に議論に参加できるように気をつけてくれた」というコメントが寄せられ、インタラクティブな授業進行が学生の評価を得たことが伺える。「私自身はこの科目が受賞したことはびっくりしています。難しい理論を扱うつまらない授業だと思っていたからです。いい授業には学生の参加が絶対に必要です。学生は、自分が努力して参加したら楽しくなるのです」。

学生の参加を促すため、古典的な理論を扱いつつ、学生たちの生活に身近な話題も扱うといった工夫もしている。例えばコロナ禍におけるマスクや追跡アプリに関するデータなど、時事的なテーマでの議論も取り入れたそうだ。「同じ授業準備をしても同じ授業内容になるわけではなく、学生の参加が絶対に必要なのですが、今回は意欲的な学生たちのおかげでよいシナジー効果が生まれたと思っています」。

ファーラー教授は、最近「情熱的な先生」と学生から評されることがあると語る。「学問を学生に伝えることが好きなのだと思います。年を取ってきて真面目に取り組もうという気持ちが高くなりました。人は自分が力を入れて努力したものは、よい結果を出したいと願うものです」。

また、「常識を捨てる」ということを学生たちに呼びかけている。「同じ授業にいろいろな国からの学生がいる。それぞれの国のプロパガンダなどがある。それに懐疑的になる、”Be skeptical.”ということを常に学生たちに伝えている」。

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