Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

レスポンスノートを効率的に活用した反転授業により、
すべての学生が積極的に参加できる授業を実現

2021年度秋学期ティーチングアワード
総長賞受賞

対象科目:Europe and Asia(E)

受賞者:ベーコン ポール・マルティン

 

大学院アジア太平洋研究科(GSAPS)の設置科目である「ヨーロッパとアジア(E)」では、反転授業の手法を積極的に取り入れ、学生たちのインタラクティブな参加を促している。教授が特に重視しているのがレスポンスノートの活用である。これは学生たちが事前に授業の準備をするためのものであり、同時に、教授にとっても質の高い議論を保つことができ、すべての学生の参加を促すための有効な手法である。

伝統的な授業スタイルをベースに、後半は学生によるプレゼンテーションに移行

この科目は2021年度秋学期には16~17名が履修し、オンライン形式で行われた。すべて英語で授業が行われ、海外出身の履修生が多く、海外在住のまま授業を受けている学生も数名いた。時差がある学生もいたが、後述する反転授業を中心とした授業構成のため、時差はあまり問題にならなかった。

この科目の特徴は、伝統的な授業スタイルを取りつつ、学生の批判的思考と積極的参加を促す授業構成である。15回の講義のうち、前半は教授が講義を行う形で始める。第6回から第14回の授業は、学生主導のクラスに移行し、各授業は学生によるプレゼンテーションから始まることになる。学生の人数によるが、毎回1~2名の学生が発表する。担当になった学生は事前にMoodleでプレゼンテーションスライドをアップロードしておく。他の学生はそれを読み、要点の要約や質問に関するレスポンスノートを用意する。これは500~600ワードの長さのもので、学生はこれを前日の夜までにMoodleにアップロードする。このようにプレゼンテーションやレスポンスノートを事前に学生に用意させる教授法は「反転授業」の一例である。教授はすべてのプレゼンテーションとレスポンスノートに目を通しておく。このため、教授は学生たちが注目している点、課題の解釈の仕方、解釈の理解における間違いを授業の前に特定しておくことができ、授業に反映させることができた。そして授業の時間にはZoomでのリアルタイムオンライン授業を行った。

「最初の2、3回の学生の発表の質がその後の重要な前例となるので、しっかりとした発表をしてもらいます。発表は成績評価にも大きく影響しますので、学生には真剣に取り組んでもらいます。また、締め切りや遅刻者、欠席が多い学生には厳しくすることが重要です」。

最後の第15回の授業はまとめの時間としてオープンにしておき、学生たちの興味や世の中で話されていることを取り上げる時間として柔軟に対応した。学生たちは期末には4000字程度の論文の提出が求められる。評価は期末の論文が35%、平常点評価35%、その他30%という割合で行った。

学生授業アンケートでは「総合的にみてこの授業は有意義だった」の評価点の平均が、6点満点中5.91と非常に高かった。学生からの自由回答では「ディスカッションに積極的に参加できるため、クラスの教材に対する理解を深めることができました」「クラスの全員がインタラクティブであることが気に入っています」といったコメントが寄せられた。活発な議論がされるように工夫され、インタラクティブな授業進行であったことが学生からの高評価につながったことがうかがえる。

レスポンスノートを活用し、授業の質を保つとともに批判的な議論の仕方を見せる

ベーコン教授は、反転授業の手法を用いたこれらの授業デザインは、オンラインであっても対面であっても効果的なものであると考えている。教授は次の三点を特に重要なポイントとして挙げる。一つ目は質の良い教材、二つ目は批判的思考、三つ目は授業前コンテンツである。「若い世代の学生たちは話したがっており、相互にコミュニケーションを取ることを望んでいます。そのため、学生たちが話しやすい環境を作ることは、それほど難しくありません。しかし、同時に質の良い文献を用いることも非常に重要です。また、議論の質を保つために、レスポンスノートを活用しています。違う意見に敬意を払い、個人的ではない方法で誰かに反対する方法を学ぶ必要があります。これは対人スキルであり、国際的な仕事に就く学生たちにとって、非常に重要です」。

英語を母国語とする学生、英語が流暢な学生もしくは強い性格の学生が議論を独占してしまうことがしばしば起こる。教授はこれもレスポンスノートを書くことによって避けられると考えている。「事前に私がレスポンスノートを読んでいるので、だれがどのような意見を持っているかが分かります。例えばある学生がコメントした場合、そのコメントに反対の意見を持っている学生に発言を促すことができます。この問題はネイティブスピーカー同士であってもしばしば起こりますが、そのようなケースにでもレスポンスノートを効率的に活用することができます。賢いけれどもさまざまな理由で沈黙しがちな早稲田の日本人学生のためには、とてもよい方法だと思います」。

研究者としての情熱が教えることへの熱意につながっている

ベーコン教授は自身を教育者というより研究者と考えているという。「教えることに関する私の情熱は研究に対するものから来ています。個人的に、新しい考え方にどう向き合っていくかというようなことに非常に興味を持っているのです。今回の授業が評価されたとしたら、私が授業の構成をしっかりと考えたからだと思います。私は日本の教育に対してなにか申し上げる立場ではありませんが、一つ言えるとしたら、早稲田大学の大学院の中でもGSAPSは非常に質の高い教育を提供しているという点を挙げたいです。学生の評価にも厳格であり、また同時に教授評価も公開しています。これは教育機関としてたいへん健全なことだと思っています」。

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