Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

実務経験で得たリアルな視点で、今日的課題への議論を促す

2021年度秋学期ティーチングアワード
総長賞受賞

対象科目:総合経営(夜間主)

受賞者:杉田 浩章


ビジネスとファイナンスの教育を融合させたビジネススクールである
大学院経営管理研究科(通称WBS)には、第一線での実務経験が豊富な教員も多い。世界をリードする経営戦略コンサルティングファームで要職を経験してきた杉田教授もそのひとりだ。現場のリアリティを伝えたいとの思いで臨んだディスカッション中心の授業は、社会人学生からも「有意義だった」と高い評価を受けている。

事前にポイントをまとめてきた上で、授業冒頭から議論に入る

「総合経営」は同学科の必修コア科目として位置付けられており、経営者として企業をトランスフォームしていくために必要なスキルを学び理解することで、経営レベルでのアジェンダや課題設定ができるようになることを目指す。杉田教授は2019年度よりこの科目を担当しており、今回は2021年度秋学期に新たに担当した夜間主プログラムの授業に対しての受賞となった。

授業のスタイルは全日制でも夜間主でも変わらず、オリジナルのケーススタディを題材に議論を行う。15回のうち最初の方の授業ではコンセプトの説明など基本的な講義も行うが、以後は授業冒頭から議論をスタート。その準備として、授業当日の議論に参加する前の事前タスクを用意しているのが特徴だ。「議論したいテーマと考えてきてもらいたい論点、さらに参考になりそうな文献や記事も提示しておき、それらを読み込んだ上で、各自A4レポート1枚ぐらいにまとめてから議論に臨んでもらいます」。

授業は基本的には対面で行い、コロナ禍でキャンパスに来られない学生のみ事前連絡の上ZOOMでの参加も可としたが、9割ほどは教室で参加した。

授業全体のテーマとしては、長期の時間軸で企業をトランスフォームしていくための戦略を考える。そこで重要となる論点を3つほど設定し事前に各人でその論点についての考えをまとめてもらう。当日はそれについて5、6人ずつのグループで議論することで、他者からの気づきを得て自身の考察をブラッシュアップし、それをもとにクラス全体でのディスカッションを行う流れとなる。「全体の議論では、その点についてもう少しこういう観点があるねとか、そこはなんでそうなるんだろう?など、私からの問いかけも入れながら議論を促していく感じですね」。最後は教員からのまとめとしての解説とQ&Aを行う。

「今企業では実際に何が起きているのか」のリアリティに触れてもらう

全体で話し合う前にグループ単位でのディスカッションを入れたのは、学生からの要望を反映した結果だ。「学生にとっては、一度少人数でディスカッションすることで、他の人はどう考えているかを聞いて自分の考えを見つめ直すことができ、その結果より有意義な議論ができる効果があるようです。以前はよく考えてきた人とそうでない人の差が大きかったのが、グループディスカッションを挟むようにしてからは、クラス全体の平均値が上がった感じで、議論へのエンゲージメントレベルが高まりました」。

全体ディスカッションで活発に意見が交わされる要因は、授業前の準備やグループディスカッションの追加効果に加えて、扱うテーマが今日的であることもポイントだ。「ケースで扱う事例は今まさに現在進行形のものが多いので、学生たちはリアルタイムな課題意識を感じ取るようです。古いケースから普遍的なことを学ぶのも重要ですが、時代性を考慮して新しいケースを扱うことは関心のレベルを高めるのに有効です」。

杉田教授はこれまでの豊富な経験に加え、現在も経営者へのアドバイザー役を兼務しており、実際の企業で今起きていることを自分の言葉で語れるのが強みでもある。「経営者は本質的にどんなところで悩むのかなどの話を聞くと、現場のリアリティを感じる学生は多いようです。私が教員として教えるからには、他の研究者の方にはないエッジを効かせて、そういう具体的な手触り感のようなものを伝える役割もあるのだろうと感じています」。

学生との授業を通して、自分自身にも新たな気づきを得た

授業で学んだことを、自分が所属する企業など身近な事例と結びつけると、どんな課題があるのか。授業を通して学生はそんな視点を深めていくようになる。それらの発言を積極的に取り込んでいったことも、プラスに作用したと感じている。「さらに、彼らの発言や質問に対して、私自身はどう考えるかをきちんと伝えてあげることも大事だと思っています。それによって、そこからまた議論が広がっていきます」。

授業を受け持った当初は、学生の理解度をどのぐらいに想定すべきか戸惑う部分もあったが、授業を通じて自分自身にとっても新たな気づきがあったと語る。「履修生は企業のミドルクラスかそれより若い世代です。普段の企業へのアドバイスでは経営層と話すことが多いので、若い世代が企業や経営陣をどう見ているか知ることは新鮮でしたし、両者のギャップをどう埋めていくかを考えていく必要があるとの視点を今まで以上に持つようにもなりました」。

授業を通して学生に伝えたい思いを尋ねた。「企業は変革を続けていかないと衰退が始まるとの前提に立つこと。そして、変革を促し続けるチャレンジをしない経営者はこれからの時代は価値がなくなると理解し、自分の頭で変革のシナリオを作って挑戦できるリーダーになってほしいですね」。

その思いは学生たちにも届いたようで、授業を通して火がついた学生も多いと感じている。「自分自身を変えていくという意味で、良い形でモチベートされている人、あるいはそのモチベーションをもう一段高めたい意欲に満ちている若者たちと出会えたのは、とてもうれしいですね」。

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