Center for Higher Education Studies早稲田大学 大学総合研究センター

青木 則幸 教授 WasedaX講座 公開記念
~須賀副総長×青木教授による対談~

WasedaX対談
須賀副総長×青木教授
<新規講座>Property Law in a Globalizing Economy: Diversity or Integration?

早稲田大学では2015年9月より、大規模公開オンライン講座(MOOC:Massive Open Online Course)の提供機関であるedX(米国ハーバード大学とMITが創設)を利用し、さまざまな講座を世界に向けて配信しています。

今回は、2022年3月に「Property Law in a Globalizing Economy: Diversity or Integration?」を開講された法学学術院 法学部の青木則幸教授と、須賀 晃一副総長との対談をお届けします。

歴史や理論を踏まえた議論がしたくて、民法の比較の道へ

須賀:民法、特に財産法についてのアメリカ法との比較というご専門に進まれたきっかけを教えてください。

青木:私は早稲田大学の商学部出身なんですが、学部で学ぶ過程で、統計などの数字で裏付ける議論よりも歴史や理論を踏まえた言葉での議論がしたいと感じるようになり、大学院は法学研究科に進みました。民法を専門に選んだのは、産業や市場、取引の構造などを、その歴史を踏まえつつも法的視点から分析したいと考えたからです。日本の民法はフランス法を母体にドイツ法風に改めて作った経緯があり、歴史・理論的アプローチとして盛んに議論されてきたのは当初はドイツ法が主流で、その後フランス法の研究も進められていますが、依然としてドイツ法の影響は大きいといえます。一方で、アメリカ法については、我が国の取引に大きな影響を与えているにも関わらず、あまり研究されずに残っている状況もあり、関心を持ちました。この講座もまさにその歴史・理論的アプローチで、独米日を比較して具体的なルールを検討するという内容になっています。

須賀:独米日の法律を比較するにあたって、特にどんな点に注目してほしいと思われますか?

青木:法律は言葉の世界なので、各国の法制度はその国の言葉と密接に結びついています。同じ民法に係るルールでも、英語と結びついている英米法でつかわれているものは、日本が継受した大陸法とそのコンセプト自体が違うという場合が多いので、英語で議論をする場合には概念の違いから検討する必要があります。その違いにも注目してほしいですが、それだけではない。具体的な取引現象ベースで見ると、ルールの運用は、同じ方向に向いている場合が多い点に注目してほしいと思います。民法のルールは、古代ローマ法を継承しながらも、中世以降、西欧社会の中でいくつかにわかれる経緯を辿ってそれぞれのコンセプトを作り上げてきたんですが、取引が国際化していく中でそれぞれに再調整が入って、結局は同じようなコンセプトを持つに至った。それでも歴史的な経緯から違いは残っていて、その違いを排除するところまではいかないという微妙な緊張関係にあります。講座では多様性の前提としての歴史的背景も取り入れていますので、そんな大きな構造を見ていただけると、楽しいと思います。

自国の考え方をベースに日独米の違いを学び、専門的な話を楽しめるレベルへ

須賀:今回の講座でアピールされたいのは、どんなところでしょうか。

青木:この講座は、法律の物権法の話を一度ぐらいは聞いたことがあるけれども、そういう比較を大学レベルではやったことがないという学生を対象にした中級講座です。比較のおもしろさに気づいてもらえることを目的に、いろいろある物権変動の議論のうち不動産と動産についての売買と担保の設定に絞って、いわばモデル化した検討をしています。

先ほども申し上げたように法律用語はその国の法体系との結びつきが強いので、1つの言語、ここでは英語で、英米法系以外のルールの運用を説明するのは本来難しいのです。しかし、モデル化した取引現象に注目すると、比較のベースとなる共通点が見えてきます。たとえば、不動産の売買だと、どの法域でも、売買契約と、所有権の移転の意思表示、登記という3つのコンセプトを使ってルールを運用している。それらのうちどこまでのことがなされた時点で所有権が移転するのかというルールの内容は、法域によって異なるのだけれども、共通の基盤はあるのです。この講座では、このような共通の基盤を意識したモデル事例に選択肢のあるQ&A形式の設問をつけた問題を、コア・クエスチョンとして、いくつか出題していきます。同じコア・クエスチョンについて、アメリカ、ドイツ、日本それぞれの民法を使って答えるとどう違うのかという点を具体的に知ってもらい、その理論的、歴史的背景を考えてもらいます。

4つあるセッションのそれぞれ最後のチャプターでは、理論的、歴史的背景について、各国の法律家の実際の考え方を、臨場感をもって、聴いていただくために、この分野でアメリカ、ドイツを代表する専門家のインタビューを収録しています。こちらはプロでも聞き応えがあるような応用的な内容ですが、それを楽しんで聞ける力を、コースの前半部分で身につけられる設計になっています。試験で単位の対象となるのはインタビューに入る前のところまでですので、このインタビューでは、プラスアルファのお楽しみとして比較法の醍醐味を感じていただきたいですね。

客観的分析ができる日本の強みを活かして、国際的議論の足がかりにしたい

須賀:edXを通して世界に発信することには、どんな意義を感じていらっしゃいますか?

青木:通常、研究者は英語で論文を書いて世界に発信するのが一般的だと思いますが、法律の世界はまったく違っていて、母国語で論文を書いて国内の学会に向けて発信するのがどこの国でも基本スタンスです。そんな非常にドメスティックな状況で国際的な議論ができるのかと考えたとき、比較法はひとつの可能性だと思っています。

この講座は英語で行われますが、法律が言語と密接であるという特性上、比較法を英語で語るならば英米法を熟知している必要があります。そういう意味で、英米法をベースに持つ研究者として挑戦しがいのある試みです。歴史的経緯から比較法が盛んで、各国の法制度をそのバックグラウンドまで見据え客観的に分析する冷静な議論ができるのは日本の民法学の強みでもあります。そういう意味でも日本から発信できることはとても価値のあることですし、これが国際的な議論への足がかりになればと願っています。

須賀:単に英語で発信するだけではなく、国によって異なる文化の違いをより深く理解できる、そんな日本という場所で学ぶことの意義を発信することにも、大きな意義があるのですね。

青木:そうですね。早稲田大学の法学研究科では、LL.M. in Asian Economic Integration and Lawという英語プログラムを開講しています。グローバルとローカルの間で一進一退をくりかえしているようにみえる「市場」の国際的な統合の動きを踏まえた、比較法を学ぶ、1年間の修士課程プログラムです。東アジアだけじゃなく、ヨーロッパ、南北アメリカ、東南アジア、アフリカなど、文字通り世界中から学生を受け入れています。そちらも、まさにそういう狙いです。

 

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Property Law in a Globalizing Economy: Diversity or Integration? | edX

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